再会・後編(狂子)
昇る朝日で舞台と視点が狂子に変わり、ここはギルド『エトセトラ』厨房の流し台。
次から次に渡される皿を洗いながら『出来たよ!』完成次第に朝食を運ぶ。
いつもは『ガハハハッ』とうるさいギルドメンバー達も、今朝ばかりはみなグラウンドの門をみつめている……。
『盗賊退治から帰ってきた仲間を、一番に出迎えてやりたい、というより少しでもいい土産(あまった酒や肉)をもらいたい』
と、おっさんたちの願いが届いたのか、門がゆっくりと開くなり、彼らは我先にと飛び出した。
「一行は夕方、到着予定です。それから、豪華なディナーをを所望しています」
早馬にまやがった伝令だった。
『おお』ため息をもらすなど、明らかに落ち込んだ様子で、彼らが厨房に戻ってきた。
そして、夕日になりかける(午後五時)頃。
練習場の門がふたたび開いた。
「帰って来たぞー!」
という声を合図に、皆が集まり、一団を取り囲むといっせいに
「ご苦労さん!」
「土産は有る……て、その酒飲んでいいか⁈」
「怖かったか」
「ケガは無かったか」
等々、質問攻めにしている様子に圧倒され、あたしとビギナは、少し離れて眺めている……と、視線に気付いた数人の隊員が、近寄って来た……名前は知らないけど、一団を送り出す日にあたしと模擬戦をしたおじさんだ。
「ただいま、数日ぶりだな……稽古はしてるか」
「おかえりなさい、お疲れ様です、稽古は毎日してるので、今度は勝ちますよ」
「そいつは楽しみだ……おっとそう言えば、直接はあってないけど、向こうのギルドにも異世界から来たっていう新人の女の子が居たな……名前は確か」
「千世」
「まあ遠くてはっきりとは聞こえなかったけど、確かそんな響きだったような」
「大人しかったでしょ……水筒を渡したり、汗拭きに来たり……挙句の果てには、退治するはずの盗賊のけが治してたりとか」
「ははは、なら彼女は違うな。たしかに顔合わせの時は大人しい子だったけど、いざ始まると氷みたいな女だ」
「え⁈」
驚きだまるあたしをおいて、話しが盛り上がる。
「彼女は狂子と同等」
「おいおい、明らかにそれ以上に強かったろ……そのおかげで、俺達はケガすることなく無事に帰ってこられたんだからな」
「全く、彼女に感謝だよ」
とようやく我にかえったあたしは質問する
「強いって、どういう風に」
「狂子ちゃんがパワータイプとしたら、彼女は圧倒的なスピードタイプだな」
「そういえば、頭に猫みたいな耳ついてたよな?」
「ケットシーか……ならあのスピードも納得できる」
「で……解散するときは、また無口だけど可愛い女の子にもどってたよな」
なんともつかみどころのない会話に、あたしは顔をしかめる
「可愛いっておさない顔してるわりに、ええ乳してたな。えへへ」
「ああ。あれならいずれ、イツキさんみたいな、色っぽい女に」
下ネタへ急変する会話に、ビギナの顔がこわばる
「イツキ」
「知り合い?」
「いや、まあ……それより今は異世界からきた千世さんだよ。でも耳がついてるって同姓同名の別人(獣人)?」
強引に会話をはぐらかそうとするビギナ……どう見ても挙動不審で、気になる。
(『イツキさんて誰?』ってききたいけど、今は千世ちゃんだ)
「おっちゃん、もっと詳しく教えてよ」
「すまんな狂子ちゃん、離れてたからはっきりと答えられない……でも、あのギルドとは結構交流があるから、いつかは……(順調にいけば)今度は連れていけっるから、会えるんじゃないかな」
「うん。忘れないでよ」
「ああ勿論、でも影の一団だけあって夜、この町の警備も(屋根の上から)協力してくれてるから、意外に早く再開できるかも」
「ビギナ、夜の警備行くんだよね。あたしも連れてって」
「……うん」
「あそれと、もし会いたいならお勧めは出来ないけど、地下墓地や、下水道に行けば」
「え……墓地」
「ああ……死体処理をしたり、トイレの糞尿処理も……普通、人がしたがらない仕事をしてくれる、良いギルドだ」
「おい、もうすぐ夕食なんだから、死体とかトイレとか話題はやめろ」
そして、あたしとビギナは、一団の持ち帰ってきた食料を、厨房の貯蔵庫に運ぶなり、夕食準備の手伝いを再開する。
余談だが今回の夕食は、一団の持ち帰ってきた肉が腐ってはいけないと、きゅうきょ変更、山盛りの肉料理と豪勢だった
(きもちわるい)となるまで食べたのは言うまでもない。
皿洗い等、後片付けを済ませたあたし達は、夕日が沈み星が出始めた町へと出かける。
「あたし、またあの串焼きが食べたい……けどまだお金がないんだよね」
「はい、おごりますよ……てまだ食べるんですか?」
「だって、あれ美味しいんだもん」
通りを歩いてると、ふいにビギナがあたしの肩を叩き、屋根を指さす。
「ほら屋根の上、見えますか? 彼らが影の一団です」
言われるまま目をやると……そこには、屋根から屋根へと飛び移る二つの影が。
「忍者?」
「彼ら(あれ)が影の一団です……ああして夜の町を一緒に守ってくれてるんです」
そして……一時間ほど町を歩き回って(パトロール)から『くちなし亭』へ……
屋外テーブルで向かい合って食事をしていると……不意に何者かに肩へ腕を回され、驚くビギナ。
「よう、久しぶりだな……こんな夜に、ろくに仕事もせず女と二人連れでオレンジジュースとは、良いご身分だな、もやし眼鏡のビギナ君」
「イツキ、さん……久ぶり」
「さん付けかよ、つれないな……で、彼女か? あたいに紹介してくれよ」
あたしに向けれれる眼光。
くわえて、鍛えられ引き締まった体と大きな胸、使い込まれた装備……見るからに『ザ・女戦士』だ……で直感する。
(あ、これは逆らっちゃダメなタイプの人(怖いお姉さん)だ)
とビギナが口を開くより早く立ち上がり、大きな声で、頭を下げる
「はじめまして、鬼道狂子です……その、信じられないかもしれませんが、異世界から来ました新人です、よろしくお願いします!」
「へえ、この子が……」悟ったように笑みを浮かべつぶやくイツキ
「え?」
「いや、そんな怖がらなくていいよ『鬼道』ってことは静江さんの。むす」
「娘です」
「ははは、だよな、あたいはイツキ……で、静江さんは元気かい?」
「はい、口うるさいくらい」
「ははは。あの人らしい」(イツキも過去、悪さするたび怒られていた)
「あの……異世界から来たってことに驚かないんですね?」
「ああ、まあ静江さんで経験済みだからな」
「なるほど」
「でも奇遇だなビギナ。じつは最近あたいんとこのギルドにも、異世界から来たって新人の女の子が居るんだよ……ほら挨拶しな……て居ねえ」
と振り返ったイツキは、少し離れた物影に向かい声を上げる
「おい、なに隠れてんだ」
「え、だって」
(この声って)聞き覚えのある声に視線が誘われる
「おうじょうぎわが悪いぞ」
「せめて耳と尻尾ははずさせ、わ!」
笑顔で戻ってくるイツキ……と彼女にお姫様抱っこされ、抵抗する女の子……その正体に、あたしは目を丸くし固まった
「え」
思わず出た声に女の子も、あたしを見て固まった。
あたしの前に、女の子を立たせ(セットし)た。
予想外の展開と、はやい再開に、思考が停止……互いに動けずにいる……と、女の子がぎこちなく口を開いた。
「きょうちゃん……お久しぶりです」
「えっ、ちいちゃんだよね、何、どうしたのその猫耳としっぽ⁈ 異世界にきてはえたの?」
(だったらあたしにもはえてるか……しかしさすがは異世界。またしても予想の斜め上をいく)
猫耳としっぽをつけた親友との再会という、思わぬハプニングに、あたしは驚きながらも……その姿に興味津々と近寄る
「ここれはイツキさんに無理やり……」
恥ずかしそうに猫耳を両手で隠す
「そんな隠さなくても。可愛いし、似合ってる」
「だろ! あんたとは気が合いそうだ……で二人は知り合いかい」
「はい、元の世界で同じ学校に通っています」
千世がビギナに向かって頭を下げる
「は、はじめまして……暗木千世です」
「こちらこそ、僕は、ビギナ・スターです」
「これも何かの縁だ、あたいらもこれから夕飯なんだ、相席させてもらうよ……千世はあたいの前に座りな」
皆の返事なんて、おかまいなしに椅子に腰を掛けるイツキ。
「相変わらずだ~」
「失礼します」
「イツキさん、メニューです」
「ありがと、実はここに来るまでに街道で千世と仕事してきたから……よし、ここの勘定は全部あたいが持ってやる、狂子ちゃんも好きなの注文しな」
「ありがとう……街道って……盗賊退治」
「ああ……知ってんのかい」
「はい、でも残念ながら今回は参加できませんでした」
「そうかい。でも静江さんの娘だそのうちすぐ、あたいらと一緒に働けるさ」
「そうだ千世ちゃん、聞いたよ。別人みたいに大活躍したんだって?」
感心するあたしに、イツキが苦笑いする
「あのえと……あ、活躍したのは私じゃなくて、バキアのメイド喫茶で働いてる獣人のミケさんで……わたしは遠くで『ティッシュ配り』をしてました」
「え『ティッシュ』ってな⁈」
イツキに小突かれせきこむビギナ。
と……ところ変わってメイド喫茶
「ニャくしょん!」
「おミケ、風邪か?」
場所を戻して
「そうですか残念、でも千世がケガしなくてよかった」
「ああ」
「イツキさん。ビギナと知り合いって言ってましたよね?」
「ま、八年前からな」
「まるで水と油みたいな二人が、どうやって出会ったのかなって」
「話すと少し長いけど良いかい?」
「もちろん」
……時は過去へさか戻る……。
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『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第十三部『再会・後編(狂子)』
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by.メガネ君(作者)




