再会、前編(千世)
目を閉じてどれほど時間が経っただろう……気が付き空を見上げると、沈みゆく夕日を背にうっすらと月が見え……周囲は見覚えのない景色。
(明らかに川を下っている)
慌てイツキの顔を見ると、うっすら笑みを浮かべている
「起きたか」
「イツキさん川下ってる……もしかして『アストラル・エンジン』が壊れた⁈」
「ふ、おいつけ。初仕事がんばったからな特別だ……それにあたいも、静江さんの娘。狂子ってこに会ってみたいしね」
と言いながら、川岸で野営している『エトセトラ』に視線をやり、追い越しながら言葉をつづける
「先に着きそうだな……しかし自己紹介した後に、あいつらの前で、あれだけの大活躍は、まずいだろう……ま、出来るだけはなしは合わせてやるけどよ」
「……はい」
そして『エトセトラ』より早く、深夜にイージス王国へ入る。
と正面に大きなさびた水門と、灯りがない『関所』のような建物が見えてきた。
「関所。みたいですが、速度を落としたり、止まらなくていいのですか?」
「ああ正面開きっぱなしの水門同様、この国の警備はがばがばだ。なんせ……ほら、取り締まれない飛行船で出国するんだからな」
と空に浮かぶ飛行船を指さした。
(あれに乗って帰れるのか)
そして『アストラル・エンジン』をきり。
水門および城壁を見上ながら通過して、数分後……ボートは街灯が並ぶ『中世ヨーロッパ風』の町を城に向かっていると……大きな石橋の下。
ボートを岸につけるなり……『よし』とイツキはロープの輪をに投げ入れ、上陸。
慣れた様子でする彼女の手つきを見ながら思わず鼻をつまむ。
無理もない私の正面(彼女の後ろ)には、下水道であろう強烈な臭い漂うトンネルが見える。
(ここからでも一発で、眠気が吹き飛ぶほど強烈な臭い……もしかしてここに入れと⁈)
「千世、行くぞ」
予感的中。イツキが親指で下水道をさす
「もしかしてこの下水道に?」
「ああ。夜のパトロールもそうだけど、イージス王国じゃ、ここがメインの仕事場だ」
「下水掃除ですか?」
「ああ手伝い程度にするけど……あたいらがするのは……と」
と、口を止めては渋い顔を向けつづける
「千世……無理ならいいけど。現世じいさんは大丈夫だったんだ、お前もいけるくちかい?」
まるで酒を誘うような口ぶりに、私は慌てて首をふる(お酒は二十歳になってから)
「いいえ駄目です! 異世界じゃどうか分かりませんが、私の世界でお酒は二十歳になってからです」
「いやいや。酒じゃなくて、死体だよ……ちなみに異世界じゃ酒は十六歳から飲」
「死体!」
あっけらかんと答えるイツキのセリフを遮るように声を上げた。
「ああ、この先にある地下墓地で死体処理をするんだ……って、言葉なんかで驚いてんなら無理か……だったら」
『他に任せられる仕事は』考え出すイツキの前で私も考える
(元の世界に戻ったら、あの土倉と、血だらけの遺骨を洗わなければいけない……なら、ここでそのやり方を知るのも悪くない)
一人うなずいた私は一歩前に、やり方を学ぶことにした。
「いいえ。私にもさせてください」
「え……おお助かるよ……じゃデバイスを光らせろ、入るぞついて来い」
予想外だと一瞬驚いた顔を見せるが、笑みを浮かべ上機嫌にデバイスを光らせるなり、さきさき下水トンネルに入っていくイツキを、追いかける。
「はい」
下水道だけあって水面には汚物が(きゃ!)不意に足元をネズミが通過する。
「よしついたぞ、開けるの手伝え」
「はい」
と私達の前に『おまじないのような模様(除霊関係)』が彫られた木と鉄でできた扉が……進み扉を開けると……地下墓地は松明がたかれ薄暗いが、しっかり気密されており、悪臭はない代わりに死臭が充満していた。
ここから十数行はグロテスクな表現になります
無数に並ぶ頭蓋骨のあご下に、それが誰であるかプレートが有る
葬儀を終え、布をかぶされた死体がさいだんに放置されている。
(お爺さんの手伝い(葬儀)で遺体とたいめんするのは慣れているはず。だったけど……これは)
固まる私をよそに、イツキは何のちゅうちょもなく死体に近づき撫でまわしては布をめくる
「有った……今回の死体は……爺さんか……ておい! なにボーっと突っ立ってんだ、奥に運ぶぞ、足もて」
奥の扉に視線をとばす。
「はい」
そして解体所に運び、中央の大きなテーブルに置き……『死肉の感触が離れない』と見ている腕に、革の前掛け(スモック)が渡された
「初作業だ、汚れない様に上からかぶれ……その間にサービスだ。夢に出ないよう。先に首は落として……と」
布ごしに一発で切り落とした首を持ち
「あたいは向こうで『これ』さばいてくるから、あと(首から下)は、骨とそれ以外、適当に切り分けておけ」
「あの……」
「なんだ。おじけづいたか、お嬢ちゃん」
バカにするように鼻で笑う
「内臓や骨くらい、魚をさばく時に見てるから平気です」
「ははは。人間を魚あつかいかい……でようは?」
「その……頭蓋骨の洗い方、処理の仕方を教えて下さい」
「現世の爺さんもそうだけど、お前も変わり者だな(血はあらそえんな)頭蓋骨……好きなのか?」
「あのその」返答に困っている私を笑うイツキ
「仕事熱心。学ぶしせいは大切だぞ……後で教えてやる」
『頭蓋骨』と『それ以外』に分ける。
頭蓋骨は洗浄し、防腐処理を行い、さいだんに戻す
それ以外は種類に分け、腐敗ガスは可燃性に変化させ、街灯用のガスに変わり……腐敗し土になったものは肥料などに使う
グロテスクゾーン終了……
「とまあ、これが地下墓地での仕事だ。おぼえたか?」
「あ……はい」
「ビビッてそれどころじゃなかったみたいだな……また教えてやる」
とイツキのセリフを遮るように、ネズミの鳴き声が
「もうそんな時間か、そこのオケ持ってついて来い」
「何ですか?」
「公衆浴場から放水が始まるんだよ」
どうやらそ浴場や民家などから一気に放流される大量の水で汚物は海に流され、下水はある程度綺麗に保たれている
話しを戻し……まるで滝の様に公衆浴場からなだれ落ちる湯で、バランスを崩しながら体と装備を洗った私達は……下水を出て、夜風にあたり乾かし……そして地下墓地に戻り夜を明かした。
そして後編……昇る朝日で舞台と視点が狂子に変わり、ここはギルド『エトセトラ』厨房の流し台。
読んでいただき、ありがとうございます。
『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第十二部『町を出、初任務、後編(千世)』
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by.メガネ君(作者)




