町を出、初任務(その二、武器は何)(千世)
そして……ギルド入り口で、腕を組み仁王立ちするイツキの姿を確認した私……と同様に彼女も私に気付いたのか。背を向け扉を開ける。
『急がなきゃ』と彼女の前に駆けよ頭を下げ
「寝坊して、すいません」
息のあがった声で謝っやけど、返事はおろか、彼女の気配もない……その代わり。
(殺気!)
身構えようとした瞬間、首元に当てられた何か(指令書)に固まった。
(早い! いつの間に……そうか私が屋根から飛び降りると同時に飛び上がり、同じ要領で、直進する私の背後に回り込んだ)
「到着も反応も遅いぞ!」
「すみません、イツキさん」
「いいよ。ま、屋根づたいで一直線に来るとはいい判断だ……もし、道を走って来たら、そのぼけた頭を殴ってやろうと思っていたぞ」
そう笑みを浮かべ、イツキは『ポンポンと』と私の頭を軽くたたくように撫でてくれた……けれどすぐ、鼻を引くつかせ顔を近付ける。
「良い匂いがするな……遅れてるくせに、なにか食べてきたのか⁈」
「べリハ様が作ってくれたパンを食べてきました」
『怒られて当然』とダメもとで自白した瞬間『ちくり』と心が痛んだ
(言い訳じみてるし、責任をべリハ様に押し付けるような言い方)
目をつぶる私に、イツキが苦笑いしながら
「あ、あれか……味はともかく、あいつの作った料理は、下手な薬以上に効果があるから、仕事前に食ってくるのはいい判断だ……味はともかくな」
これはあとから聞いた話ですが。
あの『おにぎりの作り方』は、過去に狂子のお母さん(静江)から教わったそうで
味はともかく……アストラルの申し子でもある?べリハ
彼女が愛情をこめて作った食べ物には滋養強壮、状態回復の効果等があり……
敵意を感じて作った食べ物には、毒、呪いの効果があるとかないとか?
「え⁈ そんな効果があるなんて知りませんでした。私はただ、あのまま食べす出かけたら……悲しむんだろうな。と」
大笑いするイツキ
「ははは、それこそいい判断だ! 悲しむじゃなく、すねだしたあいつは、ほんとややこしさの塊で『あれ』には一生かてる気がしないよ。はははは」
「ふふっ」
つられて笑う私と、入れ替わるようにイツキが真剣な顔で口を開く
「仕事だ」
「はい」
「よし、昨晩だ……バキアの商業組合から、同国警備隊を通じて『影の一団アボティラン(うち)』とイージス王国のギルド『エトセトラ』に依頼が来た……お前にとっては初任務だな」
「はい頑張ります!」
「そんなに気負うな、失敗のもとだぞ……大勢で行う簡単な仕事で、表向きは『エトセトラ(むこう)』への依頼で、あたいらはその影で手助け(サポート)すれば良い」
「何をするのですか?」
「な~に。バキアから、イージス王国へ向かう街道途中の森に出る盗賊団を退治するだけだ」
「退治って、盗賊と斬り合うんですよね」
「ま、必然的にそうなるな」
「怖いです……人と殺しあうだなんて」
「おい今何とほざいた!」
イツキは怒りをあらわに声を上げ、私の襟首をもち上げ言葉をつづける
「たとえ腹を刺され殺意が爆発しても、相手に刃を向けるな!」
「では、どうすれば」
びくりと肩をすくめる私に、申し訳なさげに苦笑い
「すまん、あたいの言葉が足らなかった……みねうちで、対手を無力化させるだけで良い……何やら『盗賊団』も頭が変わってからは、ずいぶん大人しくというより、ずる賢くなってな」
「例えば」
「あたいら同様……殺さずの誓いが出来たらしく、しかも積み荷は、全部奪わないときた! ……そりゃそうだ、カモが少なくなる」
「なんだか、平和ですね」
「だろ。正直言ってひょうしぬけさ……だから今や商人達も、盗賊が奪う分の食料等をあらかじめ用意してる始末だ……笑えるだろ?」
呆れたように笑うイツキに、私もつられて笑う……とまた、真顔でイツキが言葉をつづける。
「けどな生きる為とは言え……あいつらがやってる事は、紛れもなく犯罪だ……だからつかまえて、更生させ……真っ当な人生をおくらせるんだ」
「真っ当な人生」
「そうだ、始めは炭鉱(ミドルニア火山付近)や、町の清掃、厨房の奥で、犯した罪の分タダ働きしてもらう……で、その間に腕前とかを認められたら、そのまま雇われる」
「なるほど」
「だから、相手を(真っ当な人生に戻してやりたいと)思い武器をふるえ」
「はい」
「では早速、武器を取りに行こう」
何やら二転三転するイツキの言葉に疑問を覚えながらも、火山に向かって歩いて行く彼女の後をついて行く……。
そして、町から離れ……火山を背にする私の前には、屋根や壁の崩れた廃墟が。「来い、この地下だ」
彼女の後を追って中に入ると、朽ちた椅子が並ぶ前には、首のない石像が……どうやらここはかつて、礼拝堂だったようだ。
「なにボーってしてんだ、早く来い」
石像のそばで腰に手をあてたイツキが頭をかいては『おいてくぞ』とばかり、その裏に回り、地下へ延びる階段を降りていく。
「はい」
彼女に追いつき木の扉を開けると、そこは武器庫。
しかも誰が着けたのか、部屋の中央で燃える松明が武器を照らしている。
「さあ、好きなのを選びな」
「はい」
(こんな町外れの廃墟、誰も来るはずが無い……ましてやその地下ならなおさら)
壁一面に並ぶ手入れされ、鏡の様に輝く武器を見ながら歩いていると……部屋の奥に鉄の扉を見つけた。
『何だろう』と吸い込まれるように、手が取っ手へ伸びる……
「触るな!」
イツキの声に固まり、彼女を見る。
「いいか、決して許可なくその先に入っちゃだめだ、武器職人のドワーフと、むかしは森に居たはずのダークエルフが居る……いわば聖域……たとえ、許可をもらたって、軽い気持ちで足を踏み入れちゃだめだ」
「はい、すみません」
「おう。分かればいいんだ……で、どれにするんだ、あたいは、片手剣を主に、入り組んだ所では取り回しの良い、ナイフをあてる」
片手剣を左腰に付け、手の平で回すように慣れた手つきでナイフを、後ろ腰で平行にさやへおさめ「よし」と満足でに笑みを浮かべ……
「千世、まだか」
背後からくる彼女の声と視線に、私はぐうぜん目についた双剣を手に取る
「これにします」
「双剣なんて大丈夫か? かなりの接近戦になるんだ『人を傷つけたくない』なんて言ってるお前には向いてないと思うぞ」
「いえ、これなら元の居た世界でも稽古で使って慣れてます」
「ほぅ言ったな……では、そこの隅に書かれた円の中で、軽く舞って見せろ」
「はい」
双剣を手に、数回軽く振りながら……円の中に入り片膝を降り両手(双剣)を床につけ息を整え……
「では、始めます」と回転しながら立ち上がると縦、横、斜めに不規則に振り回し円の中、ところ狭しと飛び回り……それどこか妖艶な舞にも見えるのだろう。
「いかがでしょうか?」
「なるほど、言うだけあって確かに上手いものだ……でもな念のため、仕事に慣れるまではこの、トンファーバトンにしろ……打撃武器だから、場の雰囲気に飲み込まれ混乱しても、頭を狙わない限り大丈夫(殺さない)だろう……それと今回の任務、小型で携帯しやすい手錠と、さるぐつわを用意しておけ」
と、イツキはそれら(手錠と猿ぐつわ)をテーブルに並べると、いやらしく笑い、質問する
「使い方はわかるよな? 分からないなら」
「大丈夫、使えます」
「ならば良し……さぁ早速出発だ」
「はい」
……武器庫を出て、廃墟を後に私達は、人気の無い川沿いを歩いている
「森には運搬船で行くのですか?」
「のんびり優雅な船旅というのもいいが……目的地へ明日の朝までに着かなければいかん……だからあれを使う」
イツキの指さす木製の桟橋には、ロープで繋がれた、長細く黒いボートが停泊している
「オールが見当たりませんが」
「ああ、それなら一応、側面についてるけど有るけど、単なる飾りだ」
「飾りって?」
と彼女の言うとおり、オールが釘で打ち付けられている。
「こいつには秘密があってな……ほらこっち来て、下を見てみな」
ボートの後ろで手招きするイツキが指さすさきには……
(手漕ぎボートなのに舵が付いて……その向こうに模様が彫られてる)
目を凝らす私にイツキが
「舵と模様もそうだけど……あたいが言いたいのは、それだよ」
あごで指す木箱にも同様に模様が彫られ、中心には水晶が埋め込まれていた。
「もしかして『モーターボート』」
「もた? なんだそれ……こいつはアストラルを使って飛ぶように進む、ギルド自慢の一台さ……けど今の時代、直せる奴が少ないから、壊すんじゃねえぞ! ……さあ乗った乗った」
「はい」
(壊すもなにも、使い方が分からない)
揺れるボートに乗り込みロープを解き……ある程度桟橋から離れたことを確認したイツキは、木箱の水晶に触れ、光らせると……ボートは一気に川を下ってゆく。
「流れる景色を楽しみたいのは分かるけど、急ぐんだ、頭を下げ出来る限り姿勢を低くしな」
「はい」
風の抵抗が少なくなったボートは少し浮き上がり、まるで滑るように水面を進み……ミドルニア王国を飛び出した。
そして………あまりに長時間下を向いていたためか……うかつにも眠り落ちてしまった私を、イツキが起こす
「起きろ……国境を出たから、速度を落としていく……ほら、体を起こして景気を楽しめ」
「はい……ぁ!」
寝起き直後の目めがけて強烈な日差しが! とっさに手をかざす私の顔に、今度は、乾いた少し熱い風が肌をやく。
「砂漠」
「ご名答……で向こうの砂山。洞穴が見えるか?」
「砂山は沢山見えますが……洞穴は見えません」
「ははは、だろうな(ここから十キロ)……で、言ってしまうと、そこに住まう盗賊が、今回も、相手ってわけさ」
(『アジトが分かってるなら、なぜ直接行かない』なんて聞いたら怒るんだろうな)
私は笑って聞き流すことにした……しかし熱い。
そして太陽が真上に……で丁度、頭が『ボーっ』としてきた頃。
「見えたぞ……あそこが中立国バキアだ」




