町を出、初任務(その一、出発の朝)前編(千世)
ここはミドルニア……昇る朝日を真似する様に、工場街の煙突からも煙が昇る。
(ちなみに製鉄場は炉の温度を下げぬよう、ほぼ二十四時間稼働)
そしてミドルニア城、ベリハの私室では
「いい加減に目覚めよ!」
とカーテンとドアを一気に開け、バルコニーに出て『うむ良い天気だ』とうなずき振り返るべリハ。
じゅうたんで寝息を立てていた千世は、全身をてらす強烈な光に驚いたのか
「ひゃう」
と声を上げ目を覚ました……と同時に視点を千世へへんこうしよう。
突然のまぶしさに目を覚まし、周囲を見ると……晴天がよほどうれしいのか、バルコニーで、べリハ様が笑いをこらえています。
「ふふ、すまぬ……というより。やっとお目覚めかね……よより後に目覚めるとは、全く困ったサーバントだ」
「ごめんなさい……マスタ」
「名前で呼べと言ったであろう」
「すみませんべリハ様。おはようございます」
「うむ、おはよう」
再び周囲を確認し……
「あの。イツキさんは?」
「は、あの仕事バカか⁈ 挨拶もそこそこに、朝食も取らず、飛び出していったわ。全く……と、お前宛に手紙を預かっておった」
『ねぼすけ!』と殴り書かれた手紙を開くと
『ギルドの扉の前で待つ……追伸、これからは早寝早起きに努めよ』
「すいませんべリハ様……私も仕事の様です、行ってまいります」
手紙をポケットに入れて、頭を下げる
「おいおい、お前も朝食を食わぬのか⁈ せめて一口だけでも(朝食はべリハが用意していた)」
(急がないとイツキさんの怒りが増すばかり……でも私の背中に、すがるようなべリハ様の声……このまま出ていったらひとり泣いちゃうんだろうな……なんて考えながら仕事したくないな……ああ朝日が目にしみる)
べリハ様を背に、バルコニーの入り口で立ち止まり、熟考した結果
「……たしかに『腹が減っては戦も出来ぬ』と言いますからね……ではパンを一つだけいただきます」
愛想笑いで振り返る私の手に、満面の笑みを返しながら彼女は
「ではこれを食べるがよい」
少しいびつな形をしたパンをわたし(押し付ける)
「……なにをかくそう、これは『おいしくな~れ』とよが握ったパンなのだ」
なんて、どう見ても『おにぎりを握るゼスチャー』を自慢気に披露する。
(悩んでる暇はない、とにかく食べなきゃ……案外美味しいかもしれない)
口に入れた……結果、味を感じる前に口中の水分が奪われた私は、急いでテーブルにある紅茶を飲みほし、パン(それ)を胃へと流し込み……一息つく。
「どうだ?」
かんぱつ入れず目を輝かせ、質問してくるべリハ様……味なんて感じる余裕がなかった私は、当然返答に困っていると……案の定、落ち込み始めた
「もしかして、口にあわなかったか?」
「いいえ。よく『料理は愛情』と言い、私のために作ってくれた、その喜びで胸がいっぱいになり……ごめんなさい、味を楽しむ余裕がありませんでした」
「どうやら。よろこんでくれたようで安心した……と、これ以上イツキ(あいつ)を待たせるのは危険だ」
「行ってきます」
「うむ……気をつけてな……そして、いつでもよの下に戻って来い」
「はい」
私はバルコニーの手すりをつかみ、城下町を見渡しながら『さんだゆう』を呼び出す。
「さんだゆうさん」
『おはようさん、何でっかマスター』
「ギルドまでの最短ルートを教えて」
『お安い御用や……はい、まずはその手すりを飛び越えて、ジャンプや! なんて、ここ三階やけどな』
「はい」
『はいて、おい危ない危ないて!』
さんだゆうの静止よりも早く手すりを飛び越え………二階元老院の出っ張った屋根はしへ手を掛けると、そのまま猫の様に宙返りをしながら、城門広場へと着地。
(これも訓練のたまもの。われながらうまくいった)
振り返ると、三階バルコニーで胸をなでおろしてるベリハの姿に
(心配させてしまった)と気まずさに黙り込む私なんておかまいなしに、さんだゆうがほめる。
『やるやんけ! こんだけ動けるんなら……ちと無茶やけど、これが最短ルートや』
「屋根の上を一直線ですね」
『せや』
私は気持ちを切り替えようと、地面を強くけり城門を駆け抜けるなり、一気に民家の屋根へ上り、周囲を見渡す。
『見えるか、あの水門に向かって行きや、覚えたな、ほな目の下の地図、邪魔やろから消すで、ほなまた何かあったら呼んでな』
「あいがとう、さんだゆうさん」
そうおじぎして、さんだゆうとの通信を終えた私は、並ぶ煙突から上る煙を抜けてゆく。
(……おっと! 視界の悪さで危険は有るけど、確かにこのルートなら、人ごみの中を進むより、遥かに速く行ける)
とペースを上げていく。
あ、読んでくれて、ありがとな……どうだい
『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』
第十一部『町を出、初任務、前編(千世)』
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あたいも千世も、あ、ついでに『なんちゃって魔王』もうれしくなって、元気にがんばれるから、よろしく頼むよ。
by.イツキ




