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町を散策(前編)(狂子)

 まだ日も昇り切っていない、晴れた早朝。

気持ちよさそうに眠っている狂子の耳に、なんとも不規則な金属音や物音が入ってきた「ううん」とうなり布団をかぶり対処したが、ほとんど効果はなく。


 何度も寝返りをうち……(これは落ち着いて眠っていられない)

かんねんした狂子は、ゆっくりと上体を起こし、不機嫌に周囲を見渡しているので、狂子の視点に変更しよう。


 ……誰も居ない(はずの)部屋で、横を見たあたしは驚いた!


 あたしのすぐそばで、ビギナが、木箱の中からアームガードを取り出し装着しているのだ。


「わっ!」

「あ、おはようございます狂子さん」

「うん、おはようビギナ……て、ひとの女子の部屋に、ノックもなしに入ってくるなんていい度胸ね、殴られたいの?」


 拳を構えるあたしに、一歩下がるビギナ。

「いえ……ごめんなさい! 今日パパ、じゃなくて……今日はギルドマスターから、この町、ギルドの近くを案内するよう指示を受けたので……ちゃんとノックはまいた。が、返事が無かったので、入っちゃいました」


「無かったからってね……まあいいわ……それより朝っぱらから、そんなの着けて……もしかしてクエストにいくの?」


「クエストってなんですか?」

「あ……冒険や戦いみたいなものかな」


「なるほど狂子さんの世界の言葉なんですね」

「ええ……でも町を案内する程度に、なんで装備を整える必要があるの? この町ってそんなに治安が悪い」

「そんなぁ……これは早朝稽古の為です……狂子さんもぜひ! 皆、ウィップクイーン、静江さんの娘である、あなたの強さを知りたがっています」


「うん……朝稽古なら、元の世界、実家でもしてたし……それに、あたしも本物の戦士の強さがきになってたからね」

「ありがとうございます……防具ならここに持って来てます」


 ビギナの差し出した木箱から防具を取り出しながら

「でも、ママの、ウィップクイーン……て、どういう事」

「ううん僕の口からはちょっと……でもいずれ分かると思います……装着出来ましたね、桶に水をくんできたので、顔を洗って訓練所に行きましょう」



 そして裏口、訓練場への扉を開けると……路地に出る門の前に並ぶ二台の馬車がもうすぐ出発するのか、数人の団員が、武具や食料の入った木箱を積み作業をしている。

 少し奥の木々のそばでは、団員たちが声を上げ木刀をぶつけ合って模擬戦をしている。


「この馬車って、どこに任務でも行くの」

「はい、僕達にはまだ無理ですけど……バキアへ向かう街道途中の森に出る『盗賊団を退治する』のだそうで、その模擬戦だそうです」


「すごい、盗賊との戦いなんてまさにギルド!」


「いえそんな! 戦うのは他のギルドがします……退治と言っても『エトセトラ(ぼくたち)』はその手伝いで、主に作戦地域に向かう馬車を止めたり、ビラ配りをします」


「ビラ配りって……戦うのは他がするって、軍隊とか」

「そんな軍隊を門の外に出すなんて、物騒な事言わないで下さい! ……そんな事したら、他国から『戦争したいのか』と非難を浴びますよ」

「じゃあ誰がするの?」


「友好国ミドルニアのギルド『影の一団・アボティラン』が指揮をとり戦います……彼らが本気を出せば、その強さは軍隊に匹敵する、とも言われています」

「何かかっこいい……あたしも向こうのギルドに入りたかった」

「そんな~」

「ははっ、冗談冗談……さぁ行こう」


(戦うことのない簡単な仕事だろうけど……気を抜けば逃げてきた手負いの盗賊にやられてしまうかもと、皆しんけんに模擬戦をしているのか)


「「おはようございます」」

あたし達の声に、木刀をぶつけ合っていた男達が手を止め振り向く。


「おう、待ってたよ……早速手合わせ願えないかな」

「ぼ、僕ですか?」

「そんなわけ無いだろ、狂子くんに決まってるじゃないか」

「ですよね~」

 苦笑いしながら後ろに下がるビギナと

『くん』付されため息をもらし一歩前に出るあたし。

「お願いします」


「もうすぐ出発の時間だから……わしと一戦だけ頼めないかな」

「はいよろこんで……その、なぎなたは」


「なぎなた? ああ、静江が使っていた、あの矛か」

「うん、それ」

「無い……代わりに木矛を使いな」

「はい」


 壁にかかる木矛を取るあたしに、相手の男は木刀をかまえ口を開く。

「ルールは簡単だ。相手が降参するまか、出発の合図が出るまで、実戦形式の模擬試合。で良いかな?」

「はい」

「では……始め!」


 ちょっと待って!

試合中は忙しいから、解説(視点)は『三人称さん』に交代するわ。


 狂子は下段構え(又は八相の構え)に対し、相手は上段で始めようとしてたが、中段に構え直し、じりじりと右に回りながら慎重に間合いをつめる。


 普通なら相手に合わせて、狂子も間合いを詰めるが、駆け引きとしての王道といえる……けど(まどろっこしい)と、彼女の性格上それはない。


 膝をまげ腰を落とし、木矛を地面と平行に構える。

むろんこんな低い構え、なぎなたはおろか、道場武術には無いだろう……ルールを無視した外道な構えだろう。


(外道結構、これは殺されない為の訓練、命の取り合いにルールなんてない……さあ、どうくる)


 相手にとって、見下ろせるまでに低い狂子の構えは、ハエ叩きよろしく、木刀を振り下ろせば勝利……だが。


「うおー!」

 いくら叫ぼうがひるまない、上目づかいで睨み上げる狂子の気迫に、戸惑いふらついた、瞬間。


 狂子は、相手の股間めがけて突進!

『金的』『急所攻撃』はよく聞くが『股間ヘッドアタック』なんて聞いた事ない……ましてや狂子は女子である、胸が無く男勝りでも思春期の女子である。


 当然相手は驚き、後ろに引いたが、嘲笑して、タイミングを見て大きく飛び上がり……木矛の上に着地、それを真っ二つにへし折った(武器破壊)!


 バランスを崩し、倒れて手の傷をさする狂子を見下ろしながら

「捨て身の突進、その心意気は良し、しかし刃先を下にしたままの直進、となれば、対処の仕方はいくらでもある」

「くっそぉ、負けるか!」


 狂子は、相手の踏みつけている折れた木矛を両手で、強引に持ち上げ……相手がバランスを崩し、木刀を手放し(落ち)た瞬間

下腹部めがけてショルダーアタック!


 地面に押し倒された相手は、狂子を引き離そうと彼女の顔(右えら)を押し上げるが

「「この~」」

狂子はめげずに折れた木矛を(ナイフと見立て)相手の首筋を何度もたたく。

「降参して」

「まだだ」


(折れた武器だから相手は降参しないのか……そういえば相手の木刀は)

 周囲を見ると……なんとか手の届く距離に木刀が転がっている。

(これに持ち替えれば、勝てる)


 狂子は思い切り手を伸ばし……木刀に執着くするあまり腰を少し浮かしてしまった、もちろん相手は逃さず、起き上がるなり、体重差を利用し……木刀に手を伸ばした狂子を背中から押さえつけ腕をはらい、木刀を手に彼女の後頭部に突き立てた。


「勝負ありだ」

「油断した……降参です」

「なかなかだったが、俺の勝ちだ、まだ子供だな」


 悔しがる狂子に、『ニヤリ』と笑い勝ち誇る相手に、審判の男が

「いや、お前を押し倒してからの首へ十回以上の攻撃は十分有効だと審判判断し……よってこの模擬戦、引き分けとする」



 勝負あり!

と、きりの良いところで視点を再び、狂子に交代しよう。

(はぁ~)


 そしてあたしは、相手より少し早く立ちあがり『いい模擬戦でした』と握手を求めた。

「今度は、文句なしに勝からな」

「望むところです。 でもなんで、あの武器破壊をした時、そのままとどめを刺さず、身構えてたの?」


 あたしの質問を聞くなり、相手は頭を搔きながら苦笑いする。

「ははは、いやちょっと昔の事を思い出してな……実は入団した静江さんの初勝負相手も、わしだったんだ。 ……しかも彼女も木矛を使って、下段構えで、接近しての振り上げ、それを踏みつけへし折ってやった」


「ほとんど、あたしと同じ」

「そう、正に親子だ……あまりにそっくりだから驚いて身構えてしまったんだ」


「同じなら、対処できたはずでよ」

「確かに……でも静江さんの場合、ここからがわいの想像を越えていたんだ(違ったんだ)……静江さんは、男の前で迷わず自分のズボンのベルトを外していたんだ」


「えっ?」

「そう、その後は防戦一方だった」

「ママ負けたの」

「逆だ、わしが負けた……脱げかけるズボンから、何度も見える下着と腹が、集中力をそぎ……わしが降参するまでベルトを鞭の様に使い『女王様宣言』する姿がなんとも」


「鞭って、ウィップ……あ」

「そう『ウィップクイーン』わしが付けた二つ名さ」

「そのあだ名がお気に召さなかったのか、今度はベルトで首をかるく絞めてきた」

「……かるくでも、首絞めなんて反則」


「これにはまいったね、背後からの密着攻撃で、反撃不可、それに背中に押し付けられる豊かな胸に、女の汗の臭いと、耳元での荒い吐息……いやぁいろんな意味でまいったね」


 なにやら照れくさそうに、逆セクハラな自慢話をする相手をよそに……あたしは冷めた表情で指さし、審判に質問する。

「とりあえず、相手(あれ)、ひっぱたいていいですか?」

「無論、きょかする」


(審判に許可を得たんだ『後顧(こうこ)の憂(うれ)い無し』)

笑顔のあたしは、拳を鳴らしながら相手に近付き「ねえちょっと」甘い声で肩をつつき

「ん?」

「試合中何考えてんの、このエロオヤジ!」

 力の限りひっぱたくと

男はコマの様に回ってたおれ……けいれんして動かない。


「これって素手の方が強かったんじゃ?」

『倒れた男に群がる団員たちは知らない……主が実は、素手の方が戦闘力が倍違うことを……そして主も知らない……主にとって武器の装備は意味を持たず、むしろ足かせになって入りことを』


(あれナビ? さっきからなにひとりごと言ってんの?)

『いえ、何でもありません』


 そう、呟くナビに首をかしげたあたしは「ビギナ行こう」とビギナの手を強引に引っ張り、ざわめく訓練場を後にした。

忙しいなか、今日も読んでくれて、ありがとうございます。

『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』

第十部『町を散策(狂子)』

いかがでしたか?

楽しんでいただけましたか?

もし、気に入っていたたけたなら、その……是非とも

ブックマーク ・ ☆一つでもいいので、評価をいただけると……

とってもうれしく、僕もみんなも(当然作者も)励みとなります。

よろしくお願いします。


by.ビギナ・スター

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