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始まりはいつも急展開(後編)(千世の場合)

現在になり


 事実を知らされ……いりみだれ整理できない感情と、息苦しさに顔をふせる。


「千世……すまなかった。許してくれ」

 そんな私の気持ちなんておかまいなしに『頭をなでれば、許してもらえる』と許しをこうように伸びてきた男の手を……私は平手で払いのけ、男(自称お爺さん)をにらみ、息をはく


「やめて下さい『オトウサン』真実を教えてくれて有難う……でも私、今……少し怒っています……あなたは、母さんが愛した兄(ひと)を死に追いやった!」

「いや、あいつは」


「私には! 同じ事! ……で……血脈なんて下らない理由で、母さんは、犯かされ殺された! ……『オトウサン』今後、あなたを見る私の目の奥には、その二人がいると思ってください」

「言われなくとも、分かっておる……とはいえ実際、口にされると、こたえるな……すまない……」


 そう言って、正座しようとする男にあきれた私は……思わず鼻で笑った。

「ふっ。土下座? ……いくら謝まったって、私には……ただ、あなた自身が自己満足するための言い訳(セリフ)にしか聞こえない……だから、もういいです……二つ目の本題、教えてくれませんか?」


 たとえようの無い、怒りと恨みが渦巻く混沌(表情、瞳)を向けられ、恐怖に一瞬、意識を失いかけた男は、息荒く苦しそうに


「異世界に……行って、くれないか」

「異世界……ふふっ。もうろくされたのですか?」


「いや、詳しく説明できんが、そこには今晩、鬼道狂子も行くはずじゃ」


「……狂子……」

浮かぶ親友の顔で、我にかえることができた「だったら行ってあげる……どうしたら行けるの?」


「ありがとう……しかし先ずは風呂に入り、身なりを、忍び装束を着て、本堂に来なさい……そこで行くための道具と、お前の母親、彼女の形見を渡そう」




「はい……それでは」

 頷くなり私は、回れ右をして私室を出て……忍びしょうぞく一式を持ち、浴室へと向かった……。


(少し頭を冷やすべきだ)

 私は、少し冷たいシャワーで髪に、体についた赤いものを流し落としながら……男の昔話に、亡くなった母をおもう……。


「……母さん」(私どおしたら)

 思わずつぶやく言葉……と……背中に寄り添うよう暖かさと……流れる水音に交じり、優しくささやく女の声が……


「千世。あの人を……お爺さんを、許してあげて」


 思わずふり返っても……当然誰も居ない(お爺さんを……許すか)私はつぶやき考え、反省する。


「確かにショックだった……けど、育ててくれたのは確かだし大好きな、おじい、おとう……うん『お爺さん』……そんな彼に、私は声を上げ、あんな顔をさせてしまった……あやまろう」


 心変わりしないように、私はすぐさま(いつもより良い物で)体を洗うなり浴室を出る。


 そして本堂。

 仏像に向かい経を唱えているお爺さんは……私が入ってきたのに気付き、向きを変え、あぐらをかき、不安そうに顔を見る。

 風呂に入り、気持ちの整理が出来た私は……微笑み返すと、お爺さんは胸をなでおろし……一呼吸置くと、手の平で座布団をさす。


「そこに座りなさい」

「はい…………さっきは、あなたの気持ちや覚悟を考えずに……ひどい事言って、ごめんなさい……またお爺さんと呼んでいいですか?」


「もちろんだ、ぜひ呼んでくれ……それにわしへの怒りや感情は否定しないでくれ……永遠に許されることのない悪行をしたのだから」



 そして『小手』と『犬の首輪そっくりのチョーカー』が置かれた経机(きょうづくえ)を挟むように座る



「この小手、どっち着ければいいの?」

「利き腕、右腕につけなさい」


 聞くなり私は、すぐさま右の小手をはずし……水晶のついた小手を装着し……拳をつくり、腕を振るなど、着け心地を確かめ。


 つづけて、チョーカーを着けようと伸ばす手をお爺さんが止めた。


「待った! 千世、それを着ける前に、春実さんの形見を渡そう……その首輪は、少々うるさいからな」

「首輪がうるさい? どういう事?」


 私の質問に、視線をそらし渋い顔をするお爺さん。

「どう説明したものか……いや、どのみち後から分かる事だ……あえて言わん……それより、ほれ……彼女の形見だ、それと結婚指輪と写真も」


 そう言うなりお爺さんは経机(きょうづくえ)に法衣で包まれたものを置き……開いた。

 彼が取り出したもの、それは形見というより、彼女そのもの……そう、頭蓋骨だ。


 私は、一瞬絶句する。

(しかし……これ以上の形見はないだろう)と、みょうに冷静になり質問を投げる。


「母さんの、首から下は……どうしたの?」


「首から下の骨は(見たいならばそこにある)……近いうちに火葬し、一部は骨壺に収め、残りは息子の死んだ崖から空に向かってまこうと思っている」


「お願いします……それ、私にさせてくれませんか?」

「いいだろう、火葬方法のメモなど、道具は用意しておくから、心を込めてしてあげなさい……ま、野獣共の骨は化けて出ない程度に、わしが、供養してやろう」


「うん……その折りたたまれてる、白い布は?」

 経机の隅に置かれている布に目をやると、お爺さんは『よくぞ言ってくれた』と言わんばかりに、それを広げ、鼻をならした。


「魔法陣? 異世界に行く時、この上に立てば良いのですか?」

「いや、特に必要ない……が、使った方が雰囲気が出て、気合が入るだろ?」

「……」


「兎に角だ……お前は大広間に転移しする……と、たぶん目の前に横柄な態度をする、年上の女が居るだろう……彼女は、異世界における、千世の上司というべきか、とにかく『マスター』とおだてて、いや、呼んでやれば大丈夫だ……まぁ……詳しいことは、その首輪が教えてくれる……さぁ、着けてみなさい」


「はい」

(お爺さん、その女性となか悪かったのかな?)

と、はんしんはんぎに、首輪のとめ具をつけた瞬間、鼓動に体が揺れ、頭痛が。


『……あぁ、よう寝たわ、っておっこのアストラル波形は、マスターはんやな……おっ、しっかし知らんうちに、えらいつるつるプルンプルンの肌になりよって、まるで少女みたいや……って誰やねん!』


「暗木千世です……あなたのお名前は?」


『千世ちゃんか……わいの名前は『さんだゆう』や。すまんな、わいの声脳に響くやろ、しかしこれにびびらんかったのは、あんさんが初めてや……千世ちゃんは、前マスター、現世はんの、孫娘さんでっか?』


「いえ、娘、ですけど」

『娘さんでっか、そりゃ失礼おば……って信じられるかい! ちょっと今から、脳の記憶にアクセスさせてもろて、ええか⁈』


 さんだゆうは、私の返事を待たず強引に、彼女の記憶にアクセスする……頭が締め付けれれるような痛みに、少し顔がゆがむ。


『えっ、ほんまや、前マスターの娘さんや……疑ってすまんかったな……これから、よろしゅうな』

「よろしくお願いします」


 私の、表情の変化に『よし、ころあいだ』と見計たのか、お爺さんがにこりと笑い口を挟む。


「どうやら一段落ついた様じゃな……わしはこれから風呂に入って寝るとする」

「はい」


「本堂の明かりさえ、消してくれれば、後の片づけは明日の朝、わしがしておく」

「ありがとうございます」


「うむ……ちなみに、異世界で何年すごそうが、デバイスがこの時間を記憶してるから、数分の誤差でこの世界に戻ってこられる」

「よかった……(時間関係)少し心配してたんです」

「だから、自室に戻り、心が決まり次第、異世界に行って来なさい」

「はい」


 私はうなづき、母さん(の頭蓋骨)を法衣で包み「行ってきます」と頭を下げ本堂を後にした。

「いってらっしゃい」


 そして、ふと思い立った私は……自室までの途中にいちする、風呂場の脱衣所にある洗面台に手をのせ、今まで恐れていた鏡に映る、母の面影のこる自分をにらむ

み、口を開く。





「聞こえていますか? 鏡に映る『げんそうさん』長話をしますが、今まで母は

私が産まれるのと入れ替わるように亡くなっり……そのショックと、彼女の命を奪い産まれた私への怒りでさくらんした父が自殺したと思っていました……そう、

まるで私が二人の命を吸い取って産まれたかの様に思えて『(おもかげのある)あなた』を見るたび『お前さえ産まれなければ』と声が聞こえ、私を恨む二人が見えるようで、鏡を見るのが怖かった……ですが真実を知り決めました」


鏡を割る(現世が気付いて駆け寄る)


「さようなら『げんそうさん(私を恨む母さん)』そして……頭蓋骨になっちゃっています、がようやく再開出来ましたね本当の母さん」


「どうしたんじゃ今のは、それに手の傷は」

「異世界へ行く前に、怖いげんそうを断ち切ってきました」



『マスターはんそのケガ治しましょうか?』

「そんな魔法みたいな事出来るの?」

『いえ、その傷が治るために使われるエネルギー(まあカロリー)をお腹の

脂肪から前借りしまして、一気に治します、ダイエット効果がありますが

……反面、一気に疲れますが』

「はい、お願いします」

『おう、まかせとき。それと異世界では魔法は『アストラルワークス』て

呼ばれてますわ』





 自室に戻り、タンスの上はぬいぐるみなどでうまってるのを見て

(とりあえず今は)

 母さん(の頭蓋骨)を机の上に置き……

「帰って来たら綺麗にしますから」

と、魔法陣を部屋の中心にしいた時……それを見計らったようにさんだゆうが(頭に)話しかけてきた。


『ほな、新マスターはん……心の準備はできたかな?』

「はい……。母さん。行ってきます」


 返事と同時に、足元から火もなく立ち昇り煙るに包まれたは私は……異世界へと旅立った。

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