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灼熱の冬  作者: 紫丁香
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9/17

合宿

合宿である。


俺だけじゃなく、

何故か、

千歳と山田さんも。


有給取りました。

千歳も 長期休暇です。


そろそろ、

11月も終わりだが、

なんとも 季節はずれな、

連休である。


ドームの大仏の前で、

合宿の心得を 訓示される。


言いたくなかったのだが、


俺の修行着は、

「黒いジェダイ」である。


orz


まさか着る羽目になるとは…


黒色の柔道着風に、

幅広の革帯、

ブーツ風の靴。


靴?足袋か?

編み上げの足袋。

所謂 ブーツほど、

厚底ではない。


千歳が着ると、

厳つくなく 可愛いが、


山田さんは凶悪になる。

ダース・モール?


「では、裏庭に回ろう」


イケボが鳴り響く。


丁度 ドームの裏手になるが、

まだまだ敷地があるんだね。


庭園風になってるが、

まだ 未完成な感じ。


一角が ロープで囲われてる。


「山田は その辺りで、」

「千歳殿と組み手してくれ」


組み手ぇ?


格闘技ですか?


「身体の動きを通じて、」

「『理』を知る」

「これも修行」


そうですか…


あまり、

強くして欲しくないんですが。


「オヌシはこっちだ」


と ロープ区画を指す。


「ここは花壇にする予定でな」

「ついでだ 掘り返そう」


ああ そういうこと。


「どの程度 できる?」


一番困る質問だ。

自分の程度がわかっていない。


「今の所、球で包むのが、」

「やりやすいんだな?」


「はい そんな感じです」


「まず、包むを正確にしないと」

「テーブルのようになる」


ですね。

所長の とほほ顔が浮かぶ。


では、


と 花壇予定地の地面を、

包んでみる…

みる?


包むって どうやるの?

地面全部?


「まず、その角の辺りを、」

「そう、小さくてよい」


サッカーボールくらいかな。

シャボン玉が出た。


半分地面、

半分外に見えてる。


「効率が悪いのう、」

「沈められるか?」


球を、

沈めるイメージ…

動かねえ。


「一旦 設定すると固定か」


と、観察する 道仁さん。


ならば、と、


初めから「地面の中」に、

球を作ってみる。


見えないからわかんない。

できてるの?


「見るのだよ」


ああ、

「解像度」を上げる感じか。

「界」に頼む。


見えるというか、

感じるというか、


これで「消滅」を望む。


ボコンと地面が凹んだ。


おお できた。

人間重機だ。


相変わらず、

何かが減る感じはする。

マジックポイント?


「ちなみに、」

「消したものは戻せるのか?」


戻せるんだろうか?

…どこに行った?


「どうしたら いいやら?」


「そうか、一方通行なんだな」


「花畔」

「今回は 致し方ないが、」

「この力 自粛しろ」


後悔する前にな。


と、

噛み締めるように、

言われた。


消したものは、

戻せない。


覚えなきゃならない

ルールだ。


つか、

どこに消えるの?

物理って一体…


ちょっと、

ピンと来たものがあるので、

試してみる。


球だと なんか効率が悪い。


こう、手ですくって、

すくえたら 握りつぶす。


できた。

そのままガッツポーズ。


うん?量が少ない?


「その要領で、」

「すくう容量を上げてみよ」


手で…すくう…

この時、自分の手が、

ユンボのバケットになった、

イメージで……


完璧に…

人間重機だ…


「バケット」のサイズを、

大きくイメージしてみる。


さっきの倍になったが、

「重み」を感じる。


なんか、

キャンセルされた?


「能力限界だな」


「『意思』が弱い」

「もっと『できる』と、」

「強く思え」


サイズはそこそこで、

続けてみる。


五回。


これで疲弊した。


「視界」も、

地面を透せる設定のまま、

だった。


頭痛がする。


「驚いたぞ」

「ここまで できるとはな」


意外と褒められた。


へたり込んで、

千歳達を見る。


ああ、組み手だ。


意外にも 山田さんが、

綺麗な形を作ってる。


千歳に合わせて、

ダンスしてるみたいだ。


「オヌシもやるのだぞ?」


見てる分には、

感動もするんだけど…


「決定的に、」

「体力がない」


「『意度(イド)』が足りない」

「『意士気(イシキ)』が低い」


「予定日までに、」

「花壇の一つくらい、」

「楽勝じゃないとのう」


花壇の…

一つくらい?


周りを見る。

少し離れたところに、


ロープ区画が三箇所くらいある。


…。


パートナー交代。


道仁さんと組むと、


千歳が、

ハルクに挑んでるみたい。


こちらは山田さん。


おぉっとー?!


頬を 山田さんの拳が、

掠める…


続いてミドルキック。

脇腹にヒット。


薙ぎ倒される…


山田さん?


「情けねぇな」

「はなちゃんは 実戦だ」


「攻撃される、」

「感覚を覚えろ」


と、言われ、

ボコボコである。


でも、

山田さんの勢いに比べて、


俺、

ダメージ負ってなくない?


「やっぱりな」


と山田さん。


「攻撃は通るけど」

「芯を食(く)えねぇ」


「暖簾に腕押しだ」


どうやら、

「界」は 「バリア」ではなく、


攻撃による「ダメージ」と、

「俺」を分けてるらしい。


だって、

クリティカルヒット

してるもん。


「拒絶はしておらんが」

「痛いのは嫌だと…」


「周らしい…」


え?

なんで 少し呆れられてるの?


「おまえの護りは、」

「鉄壁だよ」


だから、


「甘やかされ過ぎてんだ」


「それが能力ってば 、」

「そう なんだけどよ、」

「限界くるぞ?」


限界。

あると思う。

何か減るし。


この仕事だと

限界を迎えやすいかも。


「今日は無理でも」

「無意識に任せず、」

「意識的に防いでみろ」


「設定に気をつけてな…」


と 道仁さんが注釈をつける。


とりま、

腹減った….


……………………



早めにランチとなった。


能力者は、

燃費が悪いらしい。


ドーム大仏の前で、

オシャレな、

サンドイッチである。


なんかセンスが…

こう モヤモヤする。


改めて「界」について考えると、


「界」の持つ潜在的な能力に、

俺がついていってない。


頭の中の感覚として、

「命令」だろうと、

「お願い」だろうと、

「コマンド入力」なのだ。


できる、できない、も、

頭の中で教えてくれてる。

クリック音な感じ。


命令の仕方がヘタ過ぎて、

全然使えていない。


「ダメージを分ける」って、

発想すらなかった。


……………………



減ったものが、

どういう風に回復するのかも、

定かじゃないけど、


午後からは少し、

山田さんにお願いしてみた。


目で追える攻撃をもらう。


「界」が教えてくれた、

「ダメージを分ける」という、

使い方を、手動で、「面」で、

試してみる。


組み手の防御と、

動きは同じだが、


「界」で作る、

「面」の盾として、

考えてみた。


なんとなく、


常時 全身結界より

節約になるかなと。


山田さんは、

千歳との組み手のように、

規則正しく動いてくれる。


上手くいかない。


全身防御は 解除してる。

そのせいで 午前中より痛い。


打撃が当たりそうなところに、

「面」を作るつもりだが、


タイミングが合わない。


あ、

防げるのは防げる。

防御を解除してるので、

防げたら分かる。


「素人に言っても、」

「しゃーないけどよ、」


「目で追ってたらダメじゃね?」


と、

猫パンチで殴られる。


手加減はしてくれてるのだ。


「花畔よ」


遠くから、


千歳と組み手中の、

道仁さんが声をかける。


千歳も息切れしてるね。


「『意』というのは、」

「能力の ためのものじゃない」

「オヌシを高めるものだ」


「能力があるから、」

「『意』のままに、」

「なるわけではない」


わからん。


能力の訓練でしょ?


顔面ヒット。


仰向けに倒れて、

考える。


久しく、

殴り合いなんてしてない。


殴られてるだけだけど。


「俺ぁ 『異能』なんかねぇぞ」


山田さんが、

「通行手形」を弄りながら言う。


「『意』は拳に乗せるもんだ」


拳を前に出す。


わからんて。

脳筋とITかぶれ。


「『意』を、」


息切れする。


「拳に乗せると、」

「どうなるの?」


「拳が当たる」


なんてシンプルな。


「相手に攻撃が当たって、」

「大ダメージを与えると、」


「思い込むんだよ」


脳筋だ…


「それが、」

「『意』を乗せるということだ」


遠くから道仁さん。


「千歳殿?」


なんか油断した道仁さんに、

千歳が一撃入れたらしい。


え?この説明で?


エンパスは、


こういう場面でも、

役に立つのか。



今、

俺にできること。


攻撃は…使えない。

大惨事だ。


「界」に任せる。

修行にならん。


だと、「目」か。


試しに、


視界を全開放する。


世界が広がるとともに、

めまい…


それでも構える。


山田さんが応える。


見えるのとは違う。

軌道を感じる。


山田さんの拳を掴む。


そのまま、

空いた手で反撃する、


が、


山田さんに掴まれる。


「へぇ 面白いことするじゃん」


と、

投げられる


そして視界を下げる。

頭痛ぇ……


ちょっとだけ、


格闘家の感覚?を

経験した気がするけど、


ダメだ、

長くもたねぇ。


なんかさっきから、

重たい打撃音が聞こえる。


少し焦ってる道仁さんが、


「筋は間違ってない」


とだけ言って、

真剣に千歳と向き合う。


だから、

格闘技教えるの、


やめてって…


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