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灼熱の冬  作者: 紫丁香
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10/17

夢魔

晩餐である。


和風ビュッフェである。


本堂の裏は 宿泊施設だった。


いや、

そんなレベルじゃなくて、

高級温泉旅館 そのものだった。


常時 湯治客がいるそうだ。


数名の湯治客に混じる、

黒いジェダイの一団。


「千歳殿は もう形も覚えた」

「『意』の乗せ方も、」

「天賦の才を感じる」


すっかり弟子(パダワン)だ。


「機会があったら、」

「符も教えたい」


「是非♪」


どこへ行く?俺のヨメ…


「花畔は、」

「相変わらず脅威だ」


え?


「全く使えんのに、」

「使うと常軌を逸してる」


「精神修養というより、」

「この界隈の常識、」

「が 必要なのかのう…」


「身体 動かしてりゃ、」

「なんとか なんだろ」


なんとも ならんでしょ、

それじゃ…


千歳に関しては、


噛み砕いた説明は、

知識の補完程度のもので、


本質は「感じて」得ている。


らしい。


俺は、

説明されても、

そもそもの基本を知らない。


瘴気から、

骸骨が 生まれるのも、

見ても 理解できない。


才能がないってヤツ?


「いや、」

「一般人のそれだ」


「それが普通だ」


そう 道仁さんは言う。


「千歳殿が稀有なだけで、」


「この世界の話を、」

「語れば語るほど、」

「信用ならない話にしか、」

「ならん」


そうですね。


思ってたのと違う、

って感じです。


「だから、」

「劣等感を抱く必要はない」


「追い追い 知りゃいいんだよ、」

「んなもん」


「肝心なのは、」

「あるもんは 使う」

「それだと思うぜ?」


「危なっかしいでな…」


話はこれくらいで、

という事で、

各々 食事を取りに行く。


精進料理的なものから、

高級な食材まで、

無駄に豪華。


湯治というくらいで、

ここは、

天然温泉が湧いている。


一体、

どんな商売してるのかと。


「旅館としての宣伝など、」

「しておらん」


「あくまで 檀家のためのものだ」

「訪れるものは 拒まんがの」


隠れた名湯を、

経営する住職。


生臭坊主…



さて、


温泉というと、

嫌な思い出がある。


ここは「鳥居」の中だが、

あの人に 結界は無力だ。


「悪戯しに来やがったら、」

「今度こそ ぶっ飛ばす」


それだよね。


あの人 出現しても、

悪戯の域なんだよな。


その癖、

用意周到だし。


「来たら、」

「宣戦布告し返す」


やめて。

喧嘩売らないで。


「心配しても始まらん」

「ただし、」

「出くわしたら正直に言え」


「さあ 食べようぞ」


……………………



広い。


なんで 何もかも、

広く造る?


その辺の 大浴場なんか、

目じゃないわ これ。


しかも、

宗教観 満載だし。


部屋も、

あんな上品な和室、

泊まったことないわ。


もう 住んじゃおうかな。


「俗世の垢を落とすんだとよ」


と 飛び込む山田さん。


ダメですよ、

俺達しかいないけど。


それにしても、

傷だらけの身体ですな。


どんだけ、

修羅場を潜ったのやら。


「感染すると、」

「治癒能力も上がるって…」

「古傷には 効かないんですね」


「効かねぇな」

「ワータイガーなんて、」

「半端な怪異だよ」


「だからって、」

「木村みたいにゃ、」

「なりたくねぇな」


ありゃ醜かった。

ショッカーの怪人だった。


「本当、」

「猫又で良かったです」


「猫又じゃねぇっての」


山田さんは、

サウナで整うと言うので、

先に上がった。


修行中は部屋は個室、


と言われたが、

かえって贅沢じゃないか?


「黒と灰」は、

ペットサービスに頼んだ。


久しぶりの孤独だ。


…落ちつかねぇ。


広いんだってばよ。

仏像が見てないだけマシか。


目を瞑りゃ眠れるだろ、

オーバーワークだし……



………うん?


なんだろ?


なんで、

こんな汚いところで、

寝てる?


廃墟…

あの 廃墟だ。


俺が、

不動産屋だと思った、


廃墟。


部屋の片隅には、

染みだらけの、

布団の山…


だけど、

寝てるのは…


お姫様ベッド?

なんで これだけ豪華?


「だって…」


え?


「汚いの…」

「嫌でしょ?」


なんで、

服 着てないんですか?


「貴方もよ?」


…素っ裸だ。


傍に、

そっと座ってくる。


「どういうカラクリですか?」


「貴方は、」

「寝てるわ」


つまり 夢?


「そう」


「私、」

「人の夢に入るの、」

「得意なの」


夢見てるって事だよね?


「貴方はね」


「私は、」

「ここにいるわ」


起きなきゃ…


「無理」

「そうさせないのが、」

「私」


毎度ながら、


「なんか用ですか?」


振り絞る。


「無粋ね」


「この姿の用事って」

「何?」


それは、

ダメな事です。


身体、

寄せないでください。


「夢くらい、」

「いいじゃない」


「練習」


なんのですか?


「絵里さん!」


肩をつかむ。


「敵と味方!」


また、

キョトンとされる。


間違った。


「敵同士!」


「俺とあなた!」


「ここは、」

「貴方の中よ?」


「どこに、」

「『線』を引くの?」


「やっと、」

「貴方に入れたの」


「せめて、」

「お話し、」

「しましょう?」


と言って立ち上がる。


いや、

立ち上がるのもダメ!


服 着てください。


「私が、」


「貴方の、」


「敵?」


「いつから?」


いや、


「だって、」

「俺 人間側だし…」


「いつから?」


いつからぁ?


答えに詰まる。


あれ?

俺の勘違い?


俺、

人間じゃない?


「その『線引き』は、」

「どこ?」


…どこだ?


「私の力も、」

「貴方の力も、」


「人間以上、よ?」


「人の理で、」

「生きる意味は?」


問われると、

答えなんか…


それより 絵里さん。


話 頭に入ってこない。

服着て お願い。


クスクス笑う。


「少年、みたいね」


「お互い、」

「隠すものがない姿で、」


「愛し合いたかったのよ」


キスされた。


「魅力、」


「ない?」


「そんなわけあるかぁ!」


と叫んで 、

ベッドの端に逃げる。


「どうやって入ったの?」


俺の「界」何してた?


「自分で、」

「外したくせに」


ケラケラ笑う。


あ、

昼間の修行で…


終わったらバリア張ってよ…


にじり寄ってきた。


月明かりに照らされて、

美しい肢体だ。


「私は、」

「敵じゃないわ」


「最初は、」

「貴方を、」

「知らなかっただけ」


「貴方は、」

「私を惑わした」


「そんなことできる人、」

「いないわ」


「貴方の力は、」

「『異能』なんて、」

「括りじゃない」


「神の技よ」


「魅力的だわ」


つまり、


「俺の 能力目当て?」


「最初はね?」


「言ったでしょ、」

「貴方は、面白いわ」


「ここまでしても…」

「靡(なび)かない…」


「これ、夢よ?」


「誰にも、」

「バレないわ」


そういうこと…

じゃない。


もう 質問攻撃だ。


「改めて 聞きますよ?」

「目的は何?」


「『琥穴』の解放?」


それは、したいわ


と。


「でも、」

「目的、じゃないわね」


「剣山も津曲も、」

「仕組んだの、」

「絵里さんでしょ?」


「津曲は、」

「そっちのミスじゃない」


そうでした…


「私は、」

「眺めてただけ」

「自然に、決壊するのを」


「剣山は?」


「私じゃないわ」


私じゃない?


じゃあ、


「なんで、」

「本部に入ってたんです?」


「半分は、」

「行きたかったんだけど」


「半分は、しがらみ、」

「かな」


撓垂(しなだ)れ かからないで。


うん?『行きたかった』?


「自由で、いたいわね」


…?


「貴方となら、」

「自由に、」

「なれそうなのに」


お姫様ベッドに寝転んだ。


何かを掴むように、

天に手を差し出す。


「どれだけ」

「生きても」


「不自由だわ」


「…私が、」

「人間なら、」

「受け入れた?」


わからんです。


「でも、妻帯者なんで」


「内縁でしょ?」


そうだけど。


「…俺、」

「絵里さんが 悪い人だとは、」

「あまり 思ってないんですよ」


「そうなの?」

「『人』なの?」


「俺には 区別つかんです」

「猫又も 友達なんで」


「…友達なら歓迎です」

「人の敵に 回らんでください」


「『人』の敵か、」


「久しく、」

「『人』じゃないのよ、」

「私」


「行くわね」


再びキスをされた………





…………目が開けられない。



目は覚めた。


でも、

開けられない。


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