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灼熱の冬  作者: 紫丁香
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11/17

闘い方

朝食は質素だ。


ご飯、お味噌汁、

シャケの切り身、

お漬物、海苔。


これでいいんだよ、

な メニュー。


清々しい 朝だ。

清々しいんだよ。


もう少し、

清々しくて いいよね?


「なんか あったでしょ?」


ダメか…


「出やがったのか?」


いやいや、と。


「夢見が 悪かっただけですよ」


「夢?」


顔を上げる道仁さん。


「残り香が してますけど?」


目を細める千歳。


そんなわけ…

ない、ないですよね?


「覚えてる範囲でよい」

「話してみよ」


いやぁ…


「夢は潜在からの警告だ」

「侮るでない」


「あ、いや…」

「えり…上津さんの夢を、」

「見たってだけで…」


「あ?」


いや千歳さん。

夢、夢です。


立ち上がらないで。


「待て待て」

「どんな夢だ?」


道仁さんが箸を置く。


「詳しく」


くわしくは無理です…


「まぁ…例の如く、」

「誘惑してきたってだけで…」


「思春期か おまえ」


山田さん…


そんなんじゃ…

そうなのかな…


「ふーん…」

「夢にまで…」

「見ちゃうわけだ?」


バキッ


箸が…


「朝の組み手で、」

「粛清したらいい」


道仁さん?


「それより、」

「一つ 推測があるが、」

「可能か わからん」


「寝てる時は、」

「無防備なのか?」


ああ、

やっぱり その心配か…


「組み手の時に、」

「『界』を解除して…」

「昨夜は そのままでして…」


「つまり…」


と 何やら「鑑定」してる様子。


「マニュアルで操作すると、」

「その後は、」

「オートにならんのか…」


そのようです。

使い勝手の悪い「異能」だ。


「これは、」

「師としての 儂の油断だ」


「オヌシの異能を、」

「過大評価していた」


「いや、」

「俺が 分かってないだけです」


本人が ポンコツなだけです。


「危険に晒して、」

「申し訳ない」


頭を下げる。


道仁さんは、

どこまでも誠実だ。


「して、」

「次第がわかった」


「夢魔だ」


夢魔?

聞き覚えあるような…


「いわゆる『サキュバス』」

「夢に現れて、」

「精気を吸うと言われてる」


聞いたことあります。


「上津は…上位種か…」


山田さんが吐き捨てる。


「上位?」


「『吸血鬼』の上位互換だ」


「サキュバスって、」

「そんなに強かったですか?」


「分類の話だ」

「伝承通りの実態ではない」


「『吸血鬼種』や『幻惑種』の、」

「最上位だよ。夢魔は…」


「夢を…見せられる?」


千歳が訊く。


「違う、」

「夢に入り込む」


「認知操作の極致だ」


そう 言われると、

今更 身体が震えてくる。


寝ている脳に、

無理やり侵入して、


操作してるんだ…


そんなの、

並の人間には、


どうしようもない…


「『吸血鬼種』のウイルスは、」

「人喰いを生む」


「俺もそうだけどな」


「サキュバスは、」

「肉は喰わねぇ」

「その代わり…」


「精気、生命力を喰う」


死ぬまでな…と。


「仔細を話せ」


道仁さんが凄む。


「どこまでした?」


それは どういう…


「夢魔の精気の絞り方など、」

「一つしかあるまい?」


千歳は睨み、

山田さんはニヤける。


「感染の心配はないが、」

「精神は蝕まれるぞ?」


何もしてない と、

いや 本当だし。


「正直、」

「なんで誘惑しに来るのか、」

「わからんです…」


「そうとう、」

「美味しそうなんだろうよ」


やめて。


千歳も その目やめて。


あの誘惑に、

耐えたんだよ?俺。


ともかく、


道仁さんは 自分の寺の、

セキュリティの問題を、


「なんとかせねばな」


と。


俺に関しては、


「やはり 教えた弊害も出ている」

「今後は 慎重にやろう」


と。


……………………



食事を終えて、

朝の鍛錬。


組み手の相手は…


千歳…


なんか「覇気」が出てる…


「はじめ!」


イケボが響く。


昨日 教えてもらった、

受け攻め を繰り返す。

繰り…返す…


速いって。

重いって。


警戒してたから、

「界」に、

防御は任せたんだけど、


重さだけは、

なんともならない。


ハイキックで、

地面に倒される。


え?


腹に両膝で、

着地された。


これ、普通なら、

死んでね?


そのまま馬乗りになり、

タコ殴りされる。


「ダメージを分けてる」

とはいえ、

やりすぎでは?


「やりすぎてるの、」

「あんたでしょ?」


「映像が浮かぶのよ!」


渾身の一撃。


額から煙 出てね?


襟首を持ち上げられて、


「あんたが受け入れてるのも、」

「わかるの」


それ もう…

テレパスでは?


頭を地面に叩きつけられて、


終了。


山田さんは、

ケラケラ笑ってる。


道仁さんは、

何故か 青ざめてる。


「いいじゃねぇか」

「即、使い物にならなきゃ」

「闘法じゃねぇよ」


脳筋は御満悦である。



その後、

模擬戦を見せてくれた。


ワータイガーvs術師である。


「本気で行って、」

「いいんだよな?」


「無論」

「手本を 見せようぞ」


組み手の延長ということで、

お互い 無手である。


でも、

それだと 道仁さん、

不利じゃない?


元々の乱暴者が、

今じゃ 猫又ですよ?


ほら 脱ぎ出した。


そのまま獣化。

言葉にすると格好いい。


対して、


掌を相手に向けて、

もう片方を胸の前で、


何やら印を刻む、

道仁さん。


猫又が 殴りかかった、

ように見えたが、


道仁さんを透過して、

反対側で転げてる。


立ち上がりかけた猫又に、

結んだ二本指の印を向ける。


弾き飛ばされた?


さすが猫又、

くるっと着地して、

地面を蹴る。


瞬間消えた。


芝生えぐれてる…


どうやら、

上から攻撃したらしい、

猫又を、


二本指の印で止めて、

もう片方の手を、

それに添えると、


猫又が仰け反った。


速さについてけない。

見えてるのに、

意味不明。


隣で、

千歳が 目を丸くして、

固まってる。


猫又は、

地面に着くや、

肉弾戦を仕掛ける。


大きくなった猫又は、

2m超えの道仁さんと、

同じくらい。


ただし、

腕の太さが違う。


黒い爪付きの、

ゴツい掌底を、


同じく手のひらで、

払い退けてる…

んだろうなぁ、と、


見えない速さを、

想像してるだけだ。


「視えてない」


視界を全開放する。


途端に、めまい、吐き気、


口を押さえながら、

二人を視る。


拳に「意」が乗るのも、


「理」が「結果」を造るのも、

見えたと思う。


猫又の拳は、

炎が立ち昇り 光弾となる。


受ける道仁さんの、

手のひらには…


それ絶対、

魔法陣だろ。


円形の光の護符?が、

瞬間展開され、

拳を弾き飛ばす。


そして、

猫又の胸に、


二本指の印が添えられる。


そこを中心に、


猫又に「雷撃」が走る。


膝をつく猫又は、

いつもの、

山田さんに戻る…


周りを見ると。


山田さんの攻撃は、

芝生 痛めたけど、


道仁さんのは、

物理にダメージ無し?


「対 怪異」の攻撃、

ってことなんだろうか。


だとしたら、

結構 容赦ない。


怪異扱いして、

攻撃したんだ。


「山田、オヌシは、」

「せっかく『人を辞めた』んだ」

「能力を活かせ」


圧勝である。


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