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灼熱の冬  作者: 紫丁香
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8/17

難工事

「で、集まってもらったのはさぁ」


と、所長が緊張を破る。


そう、

呼び出されたのだ。


決して、

俺の 糾弾会ではない。


だから 解放してください。

山田さん…


「『谷守』の進捗なわけだけど…」


「頑張っても、」

「小型のユンボしか入らないし、」

「軽トラしか入れない」


「どうしよう?」


いや どうしようって。


「地元の人に聞いても、」

「海側の開けたとこなら ともかく、」

「山側は考えたくないとか…」


どうやって、

アパート建てたんだよ。


「その当時と、」

「家の数が違うんだろうねぇ」


「まぁ 何十年も新築なんか、」

「ないみたいだからね」


ないだろうなぁ…


地形がね。

アクセスが あの峠道しかないし、


家の間なんて、

乗用車一台がやっとだ。


栄えてた頃は、

どうしてたんだ?


「街道があったらしいけどね」

「今の国道とは違うし、」

「もう廃道だよ」


して、

と 道仁さん。


「どのくらい進んでる?」


「やっと、元の建物の基礎を、」

「撤去したくらいだね」


「何往復もして、」

「割に合わんと言われた」


業者に投げられたんだ…


「なんとかならない?」


なんで 俺達?

あ 道仁さん?


「掘れたとしても、」

「整地ができん」


掘れたとしても?


「掘りっぱなしになるぞ?」

「瓦礫もそのままだ」


「それも困るねぇ」


「瓦礫くらい 運べね?」


「それも『何十往復』だねぇ」


予算はともかく、

途方も無い 長期工事か。

やってられないねぇ。


「ともかく じゃないんだよ」

「予算も やってられないよ」


「下りないよ〜」


と遠くから神楽さん。


「もっと面倒くさい工事だって、」

「やってたろ?」

「津曲だって再建だべ?」


山田さんの素朴な疑問。


「そこなのよ」


所長が絞り出す…


「できれば…」

「本部に、」

「申請したくないんだよね」


なぜ?

やらかしだから?


「『琥穴』に関連した、」

「情報 出したくないのよ」


「『上津絵里』か…」


道仁さんが渋い顔して、

何故かこちらを一瞥する。


「何重もの意味で、」

「今の本部は信用ならんからな」


そうか…


「上津絵里」に潜入されてた本部。


俺が 隠蔽しようとして、

滅せられ かけたように、


潜入されてた本部は、

信用ならない。


本当に洒落にならないんだな。


報告しない 俺と、

あの時の 山田さんも。


ここの 温情で生きてる…


あれ?

でも報告は したんだよね?

山田さんは証拠を叩きつけた と。


「その結果は、」

「『山田と木村の処分処置』だ」


「その後は 知っておろう」

「状況終了。それだけだ」


それは…

信用ならない…


「てな 訳でね」


いや軽いって。


「予算も あまり使えないのよ」


「儂が 出してもよいぞ?」


さすが、

わけのわからん寺を、

作るだけある。

太っ腹。


「津曲は、」

「儂が主導してもいい」


「そこは要相談としても、」

「時間の問題は、」

「解決しないんだよね」


実際、

俺には 深刻さが測れない。

どれほど急ぐのか…


「それすら わからないから、」

「早く掘りたいんだよ」


「『家』を建てるの自体、」

「無理だったのでは?」


「簡単じゃなかったねぇ」


ゆるいってば。


…あまり言うのはやめよう。


田舎の不動産で、

適当にハンコ押したのを、

蒸し返される。


しかも詐欺られたし…


俺もいい加減すぎる…


少しは、

モノを考えなきゃ…


「こいつの『所有』が、」

「邪魔してるって線は?」


親指で指さない。


「あの場で『掘り返す』事に、」

「同意してるからな」

「そこまでは『許可』と見ていい」


ああ、

俺が「所有」してるから?


掘らなきゃ わからないんだから、

仕方ないよね。


とにかく、と、


「建てねばならないし」

「掘らねばならん」


道仁さんが、

所長より所長らしい。


あ、

と山田さん。


こっちを見て、

ニヤニヤしだした。


「おまえ、」

「囲んだもの、」

「消せるらしいじゃん」


と肩を組んでくる。


あの、

刀持った骸骨の話?


「あれは、」

「瘴気だからできたんじゃ…」


物理には関係ないような。


「仏像 真っ二つにしたじゃん」


あ…した。


「なんですって?」


千歳が目を丸くする。


そして、道仁さんを見る。


…何かを悟る。


頭を下げる。


「すみません、」

「うちのポンコツが、」


「なんか、」

「大惨事なのが伝わります」


よいよい、

と 道仁さんは言うが…


そうなんです。

大惨事なんです。


しばらく使用不可です。


隠し事が、

できないパーティー…


「物理、消せるんじゃね?」


「にしたって、」

「土木は無理ですよ」


あの時も、

「何か」が減ったもんな。

限界がありそう。


「確かめるか」


と、懐紙を取り出し、

丸める。


「消してみよ」


みよ と言われても…


なんと命じる?

消せ。

じゃ反応しない。


うーん?


「同じだ。まず包め」


やってみる。

あ、シャボン玉出た。


骸骨の時と同じように、

「消滅」を命ずる…


消えた。

消えた?


あ、テーブルもえぐれた…


「周…」

「見えてるよね?」


!


「なんだ?マジで能力開眼かよ」


「危ういのう…」


道仁さんは喜んでいない。


「こういう使い方は、」

「勧められん」


分かります。

俺も如何なものかと、

感じます。


「あちら」の設定の話…

ゾッとする。


「瓦礫、消せるんじゃねぇか?」


「それどころか、」

「掘削もいらないねぇ」


所長が生暖かく見つめる。


「できたとして…」

「埋められんぞ?」


だよね。

穴の開いた土地のまま。


「でも、」


と、


「急ぐのは『掘る』で、」

「埋めるのは、」

「追い追いでいいんじゃ…」


意味ありげな目で、

こっちを見る千歳。


「仕事して」


彼氏なんですけど?

元夫なんですけど?


人間重機でいいんですか?


「そろそろ 役に立って」


そこそこ活躍してない?


「仕方がない」


と 立ち上がる道仁さん。


「合宿じゃ」


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