秘匿
“全ては「意」のままに。”
俺の 思う通りに、
“「意」は、「理」を作る。”
俺の 思う決まりを
“「理」は、世を造る。”
俺の 思う世界を、
“「理」を知れ。”
“それが「意思」と成る。”
俺の 意思のもと、
“「意思」を揺るがすな。”
“それが「結果」を定める。”
俺に 引き寄せる。
“結果を望め。”
缶コーヒーが等分された。
中身は大地に吸い込まれる。
真っ二つだ。
まぁ、
仏像すら 真っ二つだったんで、
これくらいはできる…のかな?
で、何?
使えるか こんなもん。
瘴気から 溢れた化け物は、
真っ二つに したところで、
意味がない。
スケルトンは死なないんだよ。
なら、
何に使える?
物理じゃないか。
なんだよ この、
物騒な技は….
俺は 殺し屋に、
なりたいわけじゃない。
断じてない。
もう一つを試す。
俺の中の「界」に、
「視界」を解放するように、
求める。
これだ。
千歳が見せてくれた世界。
解像度が 上がる。
レイヤーが 幾重にも、
重なるのが 実感できる。
そこらに、
瘴気の紐が見え、
瘴気の紐は 俺を避ける。
千歳の言ってた、
常に俺を護る「バリア」だ。
目の端を、
何かが 走り抜けていった。
小鬼?
魑魅魍魎の類い?
あんなの、
普通にいるんだ…
…疲れる。
頭痛もしてきた。
度が強すぎる、
眼鏡みたいだ…
いい具合に調整するよう、
願ってみる。
頭痛が止んだ。
これが、
「視ないようにもできる」
か。
もしかして…
俺は 視え過ぎる?
だから、
「界」が 塞いでいた?
情報量を、
俺の脳みそが、
処理できないのかな…
霊的なものだけ、
感じるように 設定できる?
これからは 必要そう。
ああ、
さっきの紐の流れが見える。
なんか、
電柱の影から 恨めしそうに、
こっち 見てる人がいるけど、
俺 関係ないよね?
…なんか理解できる。
あの 恨めしそうな人、
あの人の「残留思念」に、
瘴気が絡まって、
形作ってるんだ…
幽霊の正体見たり…だね。
見たくもないんだけど…
視界が元に戻る。
おい、
「界」くん 素直すぎるよ。
さっきの感じで…
そうそう、
その具合で固定しといてよ。
なんとなく、
使い方のコツが分かってきた。
「Siri」だな こりゃ。
さて、
また、
「報連相」と言われそうだけど、
どうしたものやら。
絵里さんにキスされたなんて、
言えるか。
まぁ、
使えるようになった、
の レベルではないので、
当面は 内緒だな…
…息が白い。
飲むはずだった、
缶コーヒーは 真っ二つだし、
また 買いに行くか…
ふと、
さっきの「恨めしそうな人」に、
目が行く。
やっぱり 恨めしそう。
目の前まで 行ってみるが、
視線は こちらに向くものの…
何を伝えたい?
この人は ここに、
心を残してしまったんだ。
残る心。
それも「意」なのだろうか…
レイヤーが一枚増えるだけで、
見える景色が違う。
紐状に漂う瘴気が、
集まる建物もあれば、
薄らと光に包まれる、
場所もある、
あっちの、
山の手なんか そうだね。
良い気 と、
悪い気 か。
あの 公園って…
あそこのトイレで、
首吊りがあったと噂された…
蚊柱のように、
黒い煙が立ち昇ってる。
と、
毎度 心臓に悪い、
マナーモード。
呼び出しだ。
―本日十六時、事務所に集合―
…行きたくないなぁ
……………………
「やらかしたんだって?」
事務所に入るなり、
山田さんが からかってきた。
「仏像 真っ二つとか、」
「即戦力だな」
腕を首に回され、
ソファーに座らされる。
「いやぁ 覚えがないというか、」
「なんというか」
「惚けるでない」
地の底から 響いてきた…
俺の正面に…いる…
「『場』を読んだ」
「次第によっては、」
「滅す」
滅?!
弁償で、
なんとかなりませんか?
「オヌシの資産で、」
「なんとか なるもんではないわ」
「それより、」
「誰か おったであろう?」
「それも、」
「怪異がのう」
睨まれる。
そりゃもう、
睨まれる。
「…そうでしたかねぇ?」
「滅するが?」
「上津さんがいました」
土下座する。
「また あの女かよ」
吐き捨てるように、
山田さんが呻く。
「仔細を、」
「話せ」
「今後に関わる」
何より、
入り込まれたのが、
気に食わん と。
「ええと…」
「いらっしゃったので…」
「抵抗したら…」
「仏像が…」
「真っ二つ?」
「はぁ?」
大嘘である。
「では、」
「仏像を壊したのは、」
「オヌシなんだな?」
「そうなります…」
「何故、隠す?」
「いやぁ…」
「少し 小っ恥ずかしいこと」
「言われたので…」
「どうせ また、」
「寝技 使われたんだろ」
使われてません。
これまでも ありません。
あれ 寝技か?
いや、
断じてない。
「誘惑は 奴らの身上とはいえ、」
「情報は 共有しないと、」
「命に 関わるぞ?」
「あの女、」
「やけに おまえにご執心だな」
はい 何故か。
土下座は続く…
「何を話した?」
「聞いたのは…」
実は、
瘴気を 服として纏ってる事。
相変わらず、
俺を仲間にしたそうな事、
後は…
「俺は…」
「王だとか?」
「なんだそりゃ?」
道仁さんは 宙を睨む。
「会話は それだけか?」
「だと…」
端折ったのは内緒だ。
「怪異 だな」
「もはや 妖怪そのものだ」
本人は、元々は人だと、
言ってたけどね…
「瘴気を 纏うだぁ?」
「ああ あの時か」
「素っ裸で キーキーって、」
「飛び回りやがってよ」
「やり辛ぇったらねぇ」
そりゃ やり辛い。
そうか。
「上津絵里」と、
わかる 姿だったんだよな。
「おまえが、」
「服 飛ばしたんだって?」
それは 言い方が悪い。
不可抗力です。
「纏えて、」
「具現化してることの方が、」
「恐ろしいわい」
宙を睨んだままだ…
「遅くなりました…え?」
千歳さんが、
土下座の俺を見て驚く。
よけろ と言われ、
その場に、
そそくさと椅子を置き、
千歳にソファーを勧める、
道仁さん。
相変わらず、
リスペクトが過ぎる。
結果として、
ボロいソファーで、
山田さんに、
首根っこ押さえられた、
俺。
テーブルを挟み 向かい側、
一人悠々の 千歳。
テーブルの左右に、
所長と道仁さん。
道仁さんは 小さな丸椅子。
囲まれてる?
「さて、」
「今までの話に、」
「偽りはないな?」
偽っては….いたっけ?
言ってない事は、
多々あるけど…
「また 何か やったの?」
既に、
目が据わってる千歳さん。
「能力、開眼したらしいぞ?」
嫌味ったらしく笑う…
「また、上津が出たそうだ」
聞くや否や、
腕を掴まれた。
般若。
般若がいる。
千歳さん、手が、
手が 痛いです。
「ドギマギを 越えてるわね?」
「これは、」
「浮気と 言えない?」
「おまえ、」
「上津と何やったんだよ?」
山田さんが引いた…
もう 聞き飽きたでしょうが、
何もやってません。
やられましたが、
やってません。
「この人 感染の疑いがあります」
おい 千歳?
道仁さん、錫杖 やめて?
「言ったぞ?」
「次第によっては、」
「滅すと」
感染なんか してませんて、
するような事 してません。
おでこにキスは、
セーフだよね?
「噛まれでもしなきゃ、」
「伝染らねぇよ」
と、山田さん。
「噛まれてたら、」
「こんなとこ、」
「居られないわなぁ」
後頭部を掴まれる。
「せいぜい 気をつけな」
「おまえ 魅入られてるからよ」
「どっちがどっちかは、」
「わかんねぇけどな」
正面から見据えられる。
「俺にも、」
「正直 わからんです」
「騙された時だけですよ?」
「会話したの」
俺が何をした…
「花畔よ」
と、真面目に話される。
「吸血鬼種」と出会って、
その事実を 報告しない者は、
本来、即拘束だという。
感染してる 可能性と、
惑わされてる 可能性、
その両方が 拭えないからだと。
「オヌシの『界』を知らなければ」
「滅すのは 洒落では済まない」
と釘を刺される。
「問題なのは、」
と、千歳。
「周が、」
「満更でもないことよ」




