瘴気
瘴気って なんぞや?
帰り道に考え始めた。
俺が 見たのは、
粘っこい 黒い煙。
端っこから 化け物になって、
終いには、
刀を持った 骸骨になった。
千歳が 補助してくれたから、
見えた光景。
つまり、
俺には 見えない。
ということは、
一般的には 見えない。
「感じる者はおる」
と先生。
「人より感じるレイヤーが多いと、」
「霊感があるなどと言われる」
「『見える』段階なら、」
「『異能者』の入り口だ」
俺 見えないけど…
「見るんだよ」
そんな乱暴な…
「あれに噛まれたり、」
「傷つけられたら、」
「どうなるんです?」
「それが、」
「巷で言う『霊障』だよ」
なんだか、
「幽霊」に取り憑かれてる的な、
そんな風に思ってたけど、
「『思念』のある瘴気に、」
「絡まれれば そうとも言える」
「見えるものと、」
「理は違う」
なるほど。
側を通りかかったので、
これも聞いてみよう。
「例の廃墟は、」
「どうなったんです?」
「とりあえず…」
「『吸血鬼種』とは、」
「関係なかったんだよな」
「ただの廃墟」
ただの 化かすための舞台、と。
「中身だけ 片付けたとさ」
ん?
「あの…ご遺体は?」
「だから、」
「片付けたんだよ」
「身元やら…捜査やらは?」
「警察にやらせても、」
「大騒ぎした挙句、」
「上から圧かかって 迷宮入りだぜ?」
「申し訳ないが、」
「『神隠し』とさせてもらう」
「儂のところで、」
「手厚く葬っておる」
分かっては いたんだけどね。
法律は二の次 というのは。
なんだかなぁ…
……………………
営業所で怒られた。
そりゃそうだ。
飯食って 帰ってきたら、
午後九時過ぎてた。
完全に時間オーバー。
まぁ稼いだから許してよ。
部屋に戻ると、
「黒と灰」が玄関で正座してた。
で、
居間の方を目で合図する。
テーブルが豪華。
いつもは侘しく、
コンビニ飯なので、
ご飯が 用意されてるなんて、
贅沢は 想定してなかった。
千歳が なんか噴いてる。
瘴気じゃないよね…
「報連相」
笑顔だ。
笑顔で触ってくる。
般若になった。
…。
ご飯は別にいいそうだ。
好きで作っただけだと。
男三人旅がダメらしい。
千歳さん。
拉致だよ?拉致。
好きで 行ってない。
「その時に、」
「一緒に行けないことが嫌なの」
「掘るまで間があるから、」
「視察に行っただけだよ」
「視察で 終わってないじゃん」
そうなのだ。
掘るまで 分からんとはいえ、
確定的に、
地獄 確定なのだ。
…なんだか腹減ってきたので、
千歳の飯を食べる。
「例の如く、」
「俺は 直接見てないんだけどね」
「見なさいよ」
同じ反応された。
「意識して見ようとするの」
「じゃないと『界』が解けない」
俺は能力で、
能力を、
塞いでるの?
「そういう事」
「周が望めば『界』は応える」
「望み方を考えて」
結果を望め。
か。
千歳が手を握ってくる。
視界の解像度が上がり、
幾重ものレイヤーがかかる。
「これは『共感』してるだけ」
「直接 私の視界を、」
「見せてる わけじゃない」
「私と同じように、」
「『感じて』もらってるの」
「今、何が視えてる?」
「それは、」
「もともとの 周の視界なの」
何が視えるかと言えば、
視界の性能が上がった、
と感じるだけで、
特別 変なものは視えない。
薄い細い煙のようなものは、
瘴気?
「漂ってるよ」
「普通に その辺にいる」
「触ると 不快を感じる」
「気が良くないとか、」
「言われる所は 大抵濃いよ」
「こんなの、」
「いつも 視ているの?」
「視ていたわ」
「視ないようにも、」
「できるようになった」
「それより、」
「感じる方が 問題」
「子供の頃は、」
「感情を共有できるのが、」
「嬉しかった」
「大人になると、」
「怖くなったわ」
「私が感じるだけじゃなく」
「相手が感じてしまう」
「私と同じに なってしまう」
「それは怖い」
あの時。
アパートに、
嫌なものが満ちている と、
言い出したのは千歳だった。
いつもの、
「霊感ごっこ」、
だと思ってた。
あの時の異様な光景は、
千歳の言葉を、
裏付けて いたのにね。
千歳は あの頃から、
俺より色々、
見えていたんだろう。
そして色々、
教えてくれてたんだろう…
記憶の箇条書きは、
直らない。
今年の夏以降は、
少し、
頭使ってる気がするけど…
「休みを取ります」
宣言された。
「12月 中くらいまで、」
「休みを取ります」
大丈夫なんですか?
「どうせ そのくらいから、」
「休みたくても 休めないのよ」
「そこからは突貫で仕事こなす」
「『調査会社』の仕事、」
「報酬高いしね」




