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灼熱の冬  作者: 紫丁香
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15/17

地獄

「鳥居から」

「中のものを出さない」


その設定のおかげで、

熱波は一瞬だった。


今はしんしんと雪が降る。


鳥居の前で、

おにぎりランチにする。



扉が細長い訳も分かった。


中に折りたたまれて、

鎖で固定するんだね。


扉を含めた「門」は、

ピラミッドの石組みみたい。

見たことないけど。


奥行きが扉の片方と同じ。


マジで遺跡だ。


今座ってる、

鳥居への通路も、

綺麗に平面の出た石畳だ。


そして鳥居。


「含笑寺」を、

ギンギラギンって、

バカにしてたけど…


そういうデザインだ。


深い朱色に、金の装飾。

金の看板?

結界の要素なんだろうか?


「ここまで原型残ってるのに、」

「結界 壊れてるんですか?」


先生に訊く。


「いや 活きてはいる」

「鳥居そのものにも、」

「壊れないよう保護があるな」


「ここから 這い出るモノは、」

「結界より強いということだ」


そもそも、

物理的な温度や湿気は、

鳥居は防がないもんね。


という事は、


鳥居の向こうはサウナ、

ってことだよね。


「想像力が足りなかったな」


と道仁さん。


「どっちにしろ、」

「人の入るところじゃねぇよ」


指を舐めながら、

山田さんが立ち上がる。


鳥居に腕を入れてみてる。


「整うわぁ」


整ってんじゃねぇよ。


さて、


と、ランチ終了。


「花畔は常に並列で、」

「『界』を使ってる」


「視界を素のままにすると、」

「慣れないのであろう?」


はい、

頭痛して 長続きしません。


「津曲作戦で行こう」

「千歳殿とニコイチだ」


「オヌシは 千歳殿を守れ」

「千歳殿は 視界を助けてやれ」


「儂らは、」

「それぞれ なんとかなる」


男前な宣言を受けて、


突入開始。


さて、

コマンド入力だ。


“害をなすものから”

“『俺』と『千歳』を護れ”


これでいい。


細かすぎるとハマる。

後は「界」が判断する。


そして、

たとえ離れても、

「千歳」も護られる。


千歳と手を繋いだ、

俺に「界」の仕事が視える。


シャボン玉より上等だ。


二人に、

光のベールがかかってる。


いざ、


鳥居を潜る。


うん、熱くない。

熱くないけど…

なんか心配…


「揺らぐなというに」


道仁さんが続く。


道仁さんも、

光のベールに包まれてる。


山田さんは、

なんか「通行手形」に、

願掛けするみたい。


「あれは、」

「入ることを許されるだけで、」

「何ひとつ加護は与えん」


山田さんもベールに包まれる。


「我らは限界があるぞ?」


山田さんに声をかける。


「早いとこ、」

「終わらせようぜ」


……



心配性が発症する。


こういうところって、

酸素どうなってるんだろ?


有毒ガスとかは、

通さないだろうけど、

必要なものも無くない?


「やかましい」


千歳が睨む。


「その時はその時」


どんどん、

男前になっていく…


そして、

疑問に思うべき事。


何なの?

この整地された階段。


組み方はレンガみたい。

サイズが違うけど。


超古代遺跡を、

探索してるんじゃないのか?


そして、瘴気。


まだ この辺りは、

紐状に漂うものしかない。


入り口から溢れるという、

感じではないけどね…


長い一直線の階段を、

降り切ると、


平坦で、

広い鍾乳洞に出る。


鍾乳石が見せる景色は、

幻想的だ。


階段からの延長で、

石畳の通路が続く。


どんな舗装技術だ?


手持ちのライトで、

あちこち照らしてみる。


津曲を思い出すが、

規模が違う。


山田さんが地面を照らす。


「おい」


道仁さんを促す。


そこには、

轍に見える跡。


真っ直ぐな線に、

蛇行して絡む線。


なんの跡?



シャン…


遠くから、

なんか聞き慣れた音がする。


ああ 道仁さんの錫杖…

って、え?


シャン…シャン…


一人 二人じゃないね。


「きたぜ」


山田さんが構える。


高い天井から、

帷が落ちるように、


瘴気が降ってくる。


墨汁をぶちまけたようだ。


先端は、

鎌を振りかぶった骸だ。


錫杖を地面に強く挿す、

道仁さん。


錫杖から無数の稲妻が走り、

骸を撃つ。


音を鳴らしていたのは、


錫杖を持った僧侶…

のゾンビ?


ワラワラ出てきた。


人のままの山田さんが、

「意」を乗せてぶん殴る。


ぶん殴りまくってる。


俺の「意力」は、

どれくらい残ってる?

八分目な気がするなぁ。


千歳 ウズウズしない。


いちいち倒さなくても、

こっちには害ないから。


ただ、

瘴気が薄いわけは、

なんとなく分かった。


満ちていないだけで、

比較にならないほど、

「濃い」んだ。


この洞窟は、

既に百鬼夜行で溢れている。


天井から降りた瘴気は、

次々と魑魅魍魎に変わる。


例の、

刀を持った骸骨もいるが、


巫女姿の骸骨もいる。

鈴のいっぱいついた棒で、

殴ってくる。


危ないなぁ。


なんだか、

わからないのもいるが、


要するに、

あっという間に囲まれた。


うざい。


シャボン玉は、

位置が固定されるので、


考える。


「照準」だ。


ターゲットを決める。


一、二、三、四、…

六個くらいで面倒になり、


「消滅」


近づく途中で消える。


効率は良くなったけど、

根本が解決しない。


キリがないんだよ。


あ、

分かった。


範囲指定「見える範囲」

目標「瘴気」

これを「あちら」に分けて、


「消滅」


結構、「意力」が減ったが、

黒く粘る煙は消えた。


残滓たる魑魅魍魎は、

二人に滅ぼされる。


アヴェンジャーズか あんたら。



「ナイスだ、はなちゃん」


山田さんに褒められる。


「歴史を知れ…」


道仁さんは違う事言ってる。


「なんの話だよ?」


いや 山田さん…


「あの女の伝言…」


そうそう、

で?


「鎌を持った骸」

「これに見覚えは?」


「見覚え?」


「伝承は事実に基づく」

「あれを目撃したら、」

「どう思う?」


「あ…」


「死神…」


「歩きながらにしよう」


瘴気が形になるのは、

大抵は周辺の、

「残留思念」と結びついた時だ。


刀を持った骸は、

刀を持ってた時代の思念、

ということ。


気になるのは、

形作られた中に、

僧兵や巫女がいたこと。


「残留思念なのだ、」

「ということは…」


ここで、何かがあった。


「確かに、」

「歴史が問題みたいだ、」


あの「死神」は、


「怨み」


が、渦巻く場所にしか現れない。


「形になる瘴気は、」

「大抵、攻撃してくる」

「それは、」

「生きてる者への嫉妬だ」


「そもそも『ネガティブ』だからな」


だが、


と続く。


誰のものでも、

誰へのものでもない、


純粋な「怨み」の感情が、

凝り固まったのが、

「死神」だ。


殺したい、

滅ぼしたい、

道連れにしたい、


その思いは、

「触れたものを滅する」


「即死攻撃?」


「そうだ、」

「間違っても触られるな」


どんどんハードルが上がる。


「『死神』が具現化する場など、」

「『戦場』くらいだ…」


本当に 何があった?ここ…


通路を辿ると、

細いトンネルになるが、

また、開けてくる。


今までも、

瘴気とは別の「湯気」が、

ずっと立ち昇ってたんだけど、


尋常じゃない湯気に包まれた。


トンネルの先は、

温泉の滝、


グラグラの。


落ちるお湯が沸騰してるって…

弾けて跳んで お湯飛沫だ。


今、「界」が外れたら…


底の見えない滝壺の外壁に、

階段が続く。


降りながら半周した辺りで、

通路が壁の方に潜る。


温泉が嫌いになりそう。


「道は、」

「曲がりくねってるけど…」


千歳が口を開く。


「真っ直ぐ向かってる」


視界の共有…


まるで 地下世界の地図を、

グリッド表示してるみたい。


千歳も精度が上がってる。


そうだね、

向かってる。


火口に…


潜った先は、

どうやら人工のトンネル。


見事なトンネル工事過ぎる。


地図を見た感じ、

次の空間まで掘って作った。

そんな感じ。


…!


後ろが明るくなる。


明かりなんか、

あるわけがない。


ガラガラガラ……


何かが転がる音がする…


そして、速くなる。


は?

火?

いや、火だるまの骸骨?

車輪がついてる…

骨の車輪?


え?

ゴーストライダー?


「走れ!!」


道仁さんが叫ぶ。

山田さんが走りながら、

前をはだける。


次の空間に飛び込むと、

頭の上を、

ゴーストライダーが駆け抜ける。


そして 立ち止まり、

向き直る。


燃え上がった炎が、

黒煙を上げ、

その中に、

無数の恨みがましい顔。


猫の骸骨に、

下半身がバイクのような車輪。

それが炎に包まれてる。


なんて歪なゴーストライダー。


「火車だ!」


「触れるな山田!」


既に獣化し、

「意」を乗せた、

爪を叩き込もうとしてる。



唵!!!!



山田さんごと、

周りの鍾乳石ごと

俺達ごと


道仁さんの音撃が、

「火車」を吹き飛ばす。


遠くで、

体勢を立て直す「火車」。


「死神の成れの果てだ!」

「触られれば死ぬぞ!」


天井からまた、

瘴気が降ってくる。


滴り落ちる墨汁のように…


道仁さんは「火車」へと走る。


俺は 瘴気を消す。

もう どんとこいだ。


錫杖で「火車」に、

一撃入れる 道仁さん。


炎が揺らぐが、

すぐさま爪を刺しに来る。


二本指の先に護符を乗せ、

その爪に合わせる。


魔法陣が間に生じ、

「火車」の腕が塵になる。


が、


それに意味はない。


もう一方の腕が、

襲いかかる頃には再生してる。


錫杖で受け、

護符を猫の額に貼る。


頭が塵になり、仰け反る。

ウィリーな感じ。


煙の顔が一斉に、

道仁さんに襲いかかる。


錫杖を突き出し、

二本指を添える。


雷鳴が轟き、

稲光が、

煙ごと「火車」を霧散させる。


化け物は瘴気に還る。


それを、

俺が消す。


湧いた化け物は、

山田さんが霧散させた。


師匠の本気を見た。

逆らうのやめとこ。


おっと、


キリがないの忘れてた。


地面から骸骨が湧く、

天井から死神が湧く、


湧くたびに、

俺が瘴気を消す、

具現化した化け物を、

二人が処理する。


ウズウズしてる、

千歳を止める。


先へと走りながら、

これを繰り返す。


坂になってきたところで、

周りが狭くなる。


またトンネルだ。


面倒くさいので、

「鳥居」に張った「界」と、

同じものを張る。


少なくとも、

「あちら」の化け物は来ない。


でも、


「そちら」に行くのも…

嫌なんだよなぁ。


終点なんだけど、

ほら、


地面明るいでしょ?


赤々と。


グツグツと、

グラグラと、


岩が沸騰してる。


まぁ

20mくらい下なんだけど。


普通なら燃えてるよね、

俺達…


まるで、

オズの魔法使いの、

イエローロードみたいに、


石畳は「封印」に続いている。


今、目の前にある。


三日月形の溶岩だまり。

その内側の陸地に、

「封印」がある。


この空間の中央だ。


ここの煙が、

山から噴き出し、


「封印」から漏れた、

瘴気を混じらせる。


何百年も、

決壊しない理由も、


何百年も、

放置された理由も、


知らない。


「封印」からは、

黒い粘った煙が、

立ち昇る。


絵里さんが惚れ込んだ、


「琥穴」


「壊されている」


道仁さんが言う。


「いつの話か分からんが、」

「劣化ではない」

「故意に壊されている」


あまりに馴染んでて、

見落とした。


鬼門に当たる塔に、

錫杖が刺さっている。


デコレーションされた御札は、

呪符?


立ち昇る煙が、

突然 軌道を変えて、

こちらに向かってくる。


咄嗟に避けたが、

煙は「封印」の前の地面に、

ぶち当たる。


「形」を取る。


それは、

炎を噴き、

骨の車輪を造り、

人の骸となり、


肉を、色をつけていく。


その服は…神主?


上半分は、人となり、

下半身は、

骨が組み上げた車輪。


「火車」だ。


でも、その顔は、

人の知性を宿す目をしてる。


そして、

血の涙を流す。


「まだ…足りぬ…か?」


喋り出した?


いっそう炎を上げ、

叫び始める。


「おのれ!!!」


「カミツめぇぇ!!」


いつの間にか持ってる、

大太刀を振り下ろしてくる。


冗談じゃない。


トンネルまで退いた。


「上津だぁ?」


絵里さん何したの?


「あれほどの形を作るなど、」

「並の残留思念じゃない、」


「しかも『火車』と化してる」

「凄まじい怨念だ…」


だから、

何があったのよ?ここ…


道仁さんが錫杖を構える。


「これは骨が折れるな…」


なんか覚悟決めてる。


触るなと言われたけど、


「界」に、


「神主火車」を包ませる。


よし いける。



「消滅」



うわっ、

抵抗が凄い…


なんか雄叫び上げ出した。


ものすごい形相のまま、

消えていった…


よしっ。


ガッツポーズ。




何?みんなの顔。


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