御安全に
今、
12月になった。
剣山には雪が降ったそうで、
そろそろ 行動しなきゃな感じ。
昨日の今日で、
寝るのが怖い…
という事で、
「界」に守られながら、
深夜の大浴場である。
なんとなく、
「男湯には来ない」
気がする。
どうせなら と、
「呼吸法」をしながら、
お湯を一定範囲で、
囲んでみる。
囲むだけ。
消すと お湯が減る。
速く囲むなら、
シャボン玉が効率がいいし、
何箇所も一度にできる。
練習はするもんだ。
調子に乗ってたら、
大浴場が、
シャボン玉だらけになった。
一斉解除。
ちょっと想像して、
ゾッとする。
今のシャボン玉に、
「削除」なり、
「消滅」なり、
設定を付加すると、
物理世界では 大惨事になる。
「消滅」は「空気」が含まれる。
カマイタチとか、
聞いた気がする。
やってる事は、
「こちら」と「あちら」を分けて、
「あちら」をどうするか?
それしか してないけど、
考えないと、
そこに物理現象が生じる。
勉強 苦手なので、
何が起きるかが想像つかない…
…若干 途方に暮れる。
未来の話じゃなく、
今だ。
もう 寝湯のコーナーで、
寝てしまおうか…
…現実的ではないので、
食堂に来る。
-24時間ドリンクサービス-
この寺は どうなってるんだ?
やっぱり 住みつくか。
俺は 飲まないが、
アルコールも充実してる…
深夜なので、
小上がりも独り占めだ……
……………………
……朝だ。
厨房から、
慌ただしさが伝わる。
見ないフリされてたようだ。
寝冷えすることもなく、
よく寝てしまった。
なんだ この快適空間。
旅館の場合、
ロビーというのか?
そこのソファーで、
早朝のコーヒー。
すっかり湯治客である。
道仁さんの想定した、
合宿メニューの進み方からは、
大きく外れたらしいが、
事が 早く進むのに、
越した事はないので、
今日から 現地入りらしい。
ロビーの窓から、
絶景を眺めながら、
少し気合いを入れる。
……………………
「私のところにきたわ」
開口一番 これだ。
全員 箸が止まる。
「素っ裸で 抱きしめられた」
「相変わらず いい匂い」
朝から、何を、
想像させてるんですか?
あれ?
二人は真剣になった。
「真っ白な部屋で…」
「お姫様ベッド」
「周が、」
「友達になりたい、」
「と言ったから、」
「私のところにも、」
「来てみたって」
あ…
これは 本物だ…
「抵抗したけど…」
「なんか、」
「ずっと ヨシヨシされた」
「みんなに伝えてって」
『歴史を知って…』
歴史?
どこの?
というか、
なんで、
いつも 千歳を、
メッセンジャーにする?
「伝わってきたのは…」
「慈しみ」
「庇護」
「愛情」
「孤独」
「悲観」
「私に関しては…」
「ひたすら『可愛い』と」
なんでやねん。
道仁さんは、
各々の部屋に、
「陣」を引いたはずだと…
「修行が足りん…」
この場合 絵里さんが、
すごいんだろうか…
「俺んとこには、」
「来ねぇな」
「ぶん殴ってやるのに」
だからでは?
謎に可愛がられたけど、
何もされなかった、と。
大事なくてよかった。
不安な出だしだが、
各々 準備を始める。
……………………
レンタカーが用意されてた。
俺の軽でいくのかと、
少し 不安だったのだ。
でも、
今度はデカくね?
最大クラスの ワンボックス。
あの峠道 通れるのかな?
一応、
作業道具なんかも積まれてる。
「業者」を装うのかな?
ぼちぼちと、
面子が集まってくる。
作業着姿の道仁さん。
デカい現場監督ですな。
山田さん、
ドカジャン似合いすぎ。
千歳は…
何 着ても 可愛い。
「御安全に」
イケボの号令で出発である。
「おまえ、」
「その数珠 中に入れろよ」
出掛けに思い出して、
首にかけたのだが、
確かに、
作業着の上にしてたら、
悪目立ちする。
変装に徹せねば。
…いや 無理だろ。
何度も 行ってるからな。
面が割れてる。
道仁さんが、
目立たないわけない。
「地主 自ら 現地調査 」
「でいいだろ」
ゆるい設定だ…
段取りとしては、
俺が穴掘りに挑戦して、
道仁さんと千歳が 護衛
護衛?
山田さんは、
更なるフィールドワーク。
進捗は焦らない方向で。
とはいえ、
この冷え具合は、
雪を予感させる…
……………………
ほら。
この道ヤバい。
雑草が車体を叩く。
なんとか、
例の「番屋」まで辿り着く。
平日は 開店休業だ。
民家の細道は挑戦せず、
各々スコップを持って、
現地を目指す。
集落の奥、
秋を通り越して、
枯れ山になった、
その ふもと。
そこに土地がある。
基礎を掘り出して、
荒れたまま、
ロープで囲われている。
敷地外に、
「御札でデコレーションされた棒」
が捨ててあった。
道仁さんが、
軽く埃を払い、
例の二本指で触った。
ぼんやりと光る感じがする。
方向を見ながら地面に挿す。
再利用という事なのかな?
こちらを向いて、
「山に向かって掘りたいんだが、」
「深さがわからん」
「想定通りなら、」
「何か 構造物があると思う」
既に遺跡発掘である。
千歳がなにやら、
地面と会話している。
そう見える。
道仁さんは、
ロボットのように、
その辺をサーチしてる。
なんだ この集団。
「なんだか、」
「『拒否』されてます…」
「それだ、」
「母上の結界が効いてる」
「ラインとしては、」
「この辺り」
荒らされた土地と、
斜面が始まる辺りの間だ。
あ、
俺 見えるんじゃ…
「界」のフィルターを外す。
めまいと頭痛…
慣れないねぇ。
道仁さんが引いた、
ラインの辺り、
その「下」、
地面を透かす…
あ…ある。
結構 深く。
石造りの人工物がある。
敷地以上のサイズで、
「門」な感じ。
限界。
即、視界を下げる。
道仁さんと相談し、
敷地の真ん中辺りから、
階段状に掘る事にした。
「敷地内では、」
「『瘴気』を浴びないだろうが、」
「周りは滲んでる」
そうなのだ。
まるで、
霧の発生のように、
地面から 黒い粘っこい、
モヤが立ってる。
紐状の瘴気になって漂うが、
この土地は避けていく感じ。
「千歳殿も 体調不良は隠すな」
というわけで、
俺は真ん中、
二人は後方 等間隔で、
警戒する。
掘るのはいいけど、
よく考えたら、
山は 俺の所有じゃなくね?
「そこから先、」
「問題が出るなら、」
「儂の出番だ」
背中越しに声が聞こえる。
霊的な話じゃなくて…
不法侵入的な話なんだが…
ちなみに、
山田さんは とっくに、
枯れ山に突入。
遠くの火山も煙を噴いてる。
150cmの四角。
それを意識して括り、
「削除」
花壇より 何故か抵抗を感じるが、
できるみたい。
上手い事 階段になるように、
慎重に、
少しずつ…




