24時間限定の恋人 2
「調べたわ」
駅前の交差点で信号を待ちながら、怜奈が携帯の画面を突きつけてきた。
「『デート 定番』で検索したの」
「はい」
「一位、水族館」
「閉まってます」
「二位、映画館」
「最終回が始まってます」
「三位、遊園地」
「怜奈、いま何時だと思ってます?」
「十時二十分」
「ですよね」
彼女は携帯をしまった。
「世の中のカップルは、明るいうちに恋愛しているのね」
「そうみたいですね」
「不公平だわ」
信号が青になった。僕らは歩きだした。
それから三歩で、彼女が立ち止まった。
「手」
「え」
「手をつなぐんでしょう」
交差点の真ん中だった。後ろから来た会社員が、迷惑そうに僕らを避けていった。
「渡ってからにしませんか」
「渡ってからだと決心が鈍るわ」
「鈍らせましょうよ」
「だめ」
彼女は右手を差しだした。
僕は左手を出した。
「反対」
「え」
「私が右だと、あなたは左でしょう。位置的におかしいわ。私が左側を歩くなら、私の右手とあなたの左手」
「いま右手を出してませんでした?」
「間違えたのよ」
信号が点滅しはじめた。
僕らは慌てて渡りきって、歩道の端でもう一度向かい合った。
今度はうまくいった。彼女の左手と、僕の右手が、なんとか噛み合った。
「……」
「……」
「汗」
「言わないでください」
「すごいわね」
「言わないでくださいって言いました」
「私もよ」
そう言われて、初めて気づいた。彼女の手のひらも、僕と同じくらい湿っていた。
「指」
「指?」
「指を絡めるやつと、そうじゃないやつがあるでしょう」
「……ありますね」
「どっちが恋人らしいの」
「知りません」
「調べる?」
「調べないでください」
結局、僕らはただ手のひらを合わせて握るだけのやつでしばらく歩いた。
三分ほど歩いたところで、彼女が急に握り方を変えた。指のあいだに、彼女の指が入ってきた。
「……何してるんですか」
「細部が大事だと言ったでしょう」
彼女は前を向いたまま言った。
耳がまた赤かった。




