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第2部:第9話:作戦会議

お兄様やブラックスタード殿下に続き、大国の影の精鋭部隊までが永久フリーパスを使って、スペーシング王国の王宮最深部に強制転移してきた超展開。


ブルーに片腕でしっかりと抱きすくめられたまま、黒魔女に狙われていることを知った私は大パニックを起こしていた。目の前には、ファンナステッドとスペーシング、二つの国の最高峰の闇の権力者たちが集結している。


「黒、金。……よく来てくれたね。さすがにそちらの影のネットワークは、行動が早くて助かるよ」


ブルーが不敵にニヤリと王としての笑みを深くすると、金を名乗るオールゴルトお兄様は、私をブルーの腕から引き剥がそうとするかのように鋭い眼光を向けた。


「ブルーコーラル陛下。妹を抱きしめる腕に少々力が入りすぎではありませんか? ……まあ、挨拶はここまでです。……黒、例の『黒魔女レッド・ビアンカ』の擬態能力についての情報を共有を」


「ああ」


黒が一歩前に出ると、周囲の空気が一気にプロの隠密のそれへと引き締まる。


「レッド・ビアンカは、自らの姿を老婆から絶世の美女、あるいは特定の誰かにまで自在に変えられる特級の擬態能力を持っている。我が国の街の包囲網をすり抜けたのもその能力だ。奴はおそらく、すでに姿を変えてこのスペーシング王国の王宮内に深く潜入している可能性が極めて高い」


「誰にでも姿を変えられる、ですか……。それじゃあ、すれ違う侍女も、お茶を運んでくる執事も、誰も信用できないじゃないのっ!?」


私が青ざめてゴクリと息を呑むと、ブルーは私の肩を優しく抱き寄せ、冷徹な青い瞳を光らせた。


「だからこそ、だ。リン、これから私たちが言葉を交わす時、普通に話していても周囲には絶対に気づかれないような、自然な『挨拶の合言葉』を決めよう」


「挨拶の、合言葉……?」


「そうだ」とブルーが冷酷に唇を歪める。


「例えば、お茶を持ってこさせた時、こちらが『今日のハーブティーの香りは素晴らしいな』と声をかける。本物の使用人であれば、事前に叩き込んである『はい、ブラウン公爵家から届いた特級品でございます』と答える決まりにする。バレてしまっては困るから何通りも合言葉を作り、もし、この普通の挨拶に混ぜた合言葉を返せない者が現れれば――そいつは、姿を変えた偽物ビアンカだ。そして、私は事前に近しい執事に合言葉を伝えていた。先程恐らくレッド・ビアンカと思われる擬態した執事が執務室に入ってきたが、追い返せた」



――この作戦会議が行われる少し前。


ブルーの執務室や、私の正妃の区画の廊下では、この恐ろしい『合言葉の罠』が静かに遂行していた。


執事に化けたビアンカが書類を持って王の部屋に入った時、ブルーは一言、他愛もない『合言葉の罠』を仕掛けた。だが、完璧に擬態していたはずの魔女はその自然な挨拶の裏にある合言葉を返すことができず、一瞬で「偽物」だと見破られていたのだ。


だからこそブルーは、即座に「人払いを」と冷酷に言い放ち、肝心な国家機密を聞かれる前に、魔女の動きを未然に追い払うことに成功していたのである。


魔女がすでに城内に潜入しているという事実への恐怖。だけど、それを遥かに上回る男たちの圧倒的な有能さに、私は背筋がゾクゾクとするのを感じていた。



「……よし。これでビアンカが誰の姿に擬態して近づいてこようが、私たちの間に入り込むことは不可能だ。では、ここからは奴を捕獲するための『挟み撃ち』の陣形について詰めようか、金、黒」


ブルーがテラスの机の上にスペーシング王国の立体地図の魔導投影を浮かび上がらせると、男三人による、これ以上ないほど緻密で冷酷な捕縛作戦の会議が本格的に始まった。


「魔女がシーリンの正妃区画を狙って近づいてきた瞬間、私が率いるブラウン家の私設精鋭部隊が背後の退路を完全に遮断する。ネズミ一匹通さない包囲網だ」


金が優雅に微笑みながら、恐ろしい殲滅作戦を口にする。


「正面の迎撃は、我が国家隠密組織の影が担当しよう。魔女が魔法を発動させるよりも早く、魔力を四方から完全に中和して拘束する。……陛下、君はシーリンの真横から一歩も動かず、その自作の国宝級魔道具で彼女に一切の呪いを通させない盾となれ」


黒がすべてを見通す黒一色の瞳を光らせ、完璧な指示を出す。


「ああ、言われなくてもリンの隣は私の特等席だからね。奴が姿を現した瞬間、私の魔術でその手足を完全に焼き切って、二度と擬態できないようにしてあげるよ」


ブルーは蕩けるような優しい笑顔のまま、黒魔女をこの世から消滅させるための絶対の殺意を青い瞳にメラメラと灯していた。


(……う、美しすぎるハイスペック男子たちが、私のために国家防衛レベルの過保護な会議を開いてるわ……! ありがたいけど、男たちの殺気がドス黒すぎて部屋の気圧が低くて息が苦しいっ!!)


自分が黒魔女に狙われているというサスペンスの最高潮の危機の中、シーリンは「イケメンたちの過保護すぎる愛の包囲網」に包まれながら、別の意味で毎日心臓のライフをゴリゴリと削られるハラハラな日々を送るのだった。

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