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第41話:スペーシング王国での結婚式

そして、旅立ちの日から1年後。


南国の美しい海を思わせる、スペーシング王国の王宮大聖堂。


その花嫁の控室で、私は人生で一番きらびやかな、純白のウェディングドレスに身を包んで鏡の前に立っていた。


「――シーリン。本当に綺麗だ。今日から君は、私だけの、世界で唯一の正妃おひめさまだね」


式の直前、誰もいない控室へと滑り込んできたのは、ついに正式に【国王】の座に就いたブルーコーラルだった。


彼は王としての圧倒的な気品を纏いつつ、私を見つめる青い瞳だけは、熱く、甘く、とろけるように細められていた。


「陛下、もうすぐ式が始まるのに……っ」


「いいじゃないか、私たちの結婚式なんだから。……ねえ、一年前のあの日、君にプロポーズを受け入れてもらった時から、私は毎日が幸せで仕方がないんだ。生涯、君だけを愛し、君のため、そしてこの国の民のためにこの国を豊かにすると誓うよ。愛している、シーリン」


ブルーコーラルは私の手を優しく引き上げ、その手の甲に、熱い口づけを落とした。


(無理無理無理! 1年経ってもこの甘さだけは本当に手に負えないっ……!)


私が顔を真っ赤にさせてドギマギしていると、彼は「ふふ、じゃあ祭壇で待っているね」と、愛おしげに私の額にキスをして部屋を出ていった。



一人残り、高鳴る心臓を押さえていると、トントン、と控えめなノックの音が響いた。


扉を開けて入ってきた人物を見て、私は息を呑んだ。


「……デール様……っ!」


そこに入ってきたのは、最愛の最推し、デールだった。

今日のデールは花嫁である私に配慮し、かつてのような白銀ではなく、お相手のグレイスタードの色である、洗練された美しいプラチナグレーの豪華なドレスを身に纏っていた。白銀の髪にグレーのドレス、あまりにも高貴で、そして婚約者への愛が伝わってくるようなそのお姿の美しさに、私の胸は一瞬で打ち抜かれた。


デールは、純白のドレスに身を包んだ私の姿をじっと見つめると――次の瞬間、その神秘的な白銀の瞳から、大粒の涙をポロポロと溢れさせたのだ。


「……本当に綺麗よ、シーリン様……っ」


「デ、デール様……っ!?」


(ひゃあああ! デール様の涙! 国宝! 尊い! 泣き顔のデール様美しすぎて私の全細胞が歓喜で震えてるーーーっ!!)


脳内のペンライトが百万本へし折れるほど大パニックを起こす私に、デールはいつものツンデレな威嚇を完全に忘れ、涙を流したまま、私の両手をそっと、しかし力強く握りしめてくれた。


「あんな生意気なブルーコーラル様にあなたを連れ去られたのは、今でも本当に気に入らないけれど。……でも、あの方が国を動かしてまで、あなたを世界一幸せにすると誓ったその言葉に、嘘はなかったわね。……シーリン様。私を、あの絶望の未来から救ってくれて、本当に……本当にありがとう」


「デール様……うぅ、違います、私が、私の方がデール様に救われたのです……っ!」


私たちは手と手を固く握り合い、あのお茶会を遥かに超える、涙と笑顔の『親友の絆』を確かめ合った。


「絶対に幸せになってね、シーリン様」


「はい! デール様も、あの王子をたっぷり調教して、世界一幸せになってくださいね!」



パイプオルガンの重厚な音色が響き渡り、大聖堂の扉が開く。


お父様のエスコートで歩くバージンロードの先、全貴族と王族が見守る大祭壇の前には、世界で一番大好きな私だけの王子様が私を待っていた。


客席の最前列には、涙を拭って満面の笑顔を向けてくれる、グレーのドレスを纏ったデールと、すっかり調教されてお利口さんになったグレイスタード。


その隣では、完全に失恋を受け入れたグリーンタール、アズパープル、そしてブラックスタードの三人が、私のウエディングドレス姿に一瞬息を呑んで赤面しつつも、「幸せになりなさい」「もし泣かせたら攻め込みます」と、切なくも前向きな良き友人としての笑顔を向けてくれている。


後の披露宴の席では、実質公爵のお父様が、シアンコーラルお義兄様と「二人のおかげで、二国の防衛網は完璧ですな(笑)」と、裏で超有能に堅い握手を交わしているシュールな光景まで広がっていた。


神官の前で誓いの言葉を立て、ブルーコーラルが私を愛おしげに強く抱き寄せた。


「生涯、君だけを愛する」


ブルーコーラルが甘く囁き、私たちの唇が優しく、熱く重ね合わされた。


(……デール様! 私、世界一幸せになりますっ!!!)


世界を変えてまで自分を愛してくれた『青き王』の隣で、私はこれ以上ない最高の、本当の幸せを掴み取ったのだった。

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