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第35話:実質公爵の品定めと、青き王の覚悟

デールへの報告を終えた翌週末。私はブルーコーラル殿下と共に、数ヶ月ぶりに我が実家であるブラウン伯爵邸の門をくぐっていた。


(あ、あの玄関でニコニコしながら待っている地味で気弱そうなおじ様が……裏で国家防衛を牛耳る『実質公爵のスパイボス』のお父様なのよね……?)


ゲームには無かった設定に未だにパニックを起こしている中、私たちは豪華な応接室へと案内された。


お父様はソファーに深く腰掛け、いつもの優しい微笑みを浮かべている……はずなのだが、その瞳の奥にある眼光は、完全に獲物の全てを見通す本物のキレ者のそれだった。


「初めまして、ブラウン伯爵。スペーシング王国第二王子、ブルーコーラルです。本日は、お嬢さんとの正式な婚約のご挨拶と、我が国で執り行う婚約式へのご同行をお願いしたく、参りました」


ブルーコーラル殿下はいつもの飘々とした態度を消し、一国の王族としての圧倒的な威厳と覇気を纏って、お父様に向き直った。


対するお父様も、ふっと口元を緩めながら、低く重厚な声を響かせる。


「……ブルーコーラル殿下。貴方が我が娘のために、自国で玉座を奪う覚悟を決め、密輸ルートに加担していた自国の裏切り者を即座に処刑したお話は、我が家のネットワーク(※世界規模の諜報網)から全て聞き及んでおります」


(お父様!! 王子の前でガチの諜報網の存在をバラさないでぇぇぇーーーっ!!)


私の必死の脳内ツッコミを無視して、お父様の鋭い視線がブルーコーラル殿下を値踏みするように射抜く。並の貴族なら恐怖で腰を抜かすほどの凄まじい威圧感だ。


だが、ブルーコーラル殿下は微塵も怯むことなく、その美しい青い瞳でお父様を見つめ返した。


「ええ。彼女のためなら、私は世界だって変えてみせる。ブラウン伯爵……いえ、公爵。どうか、私にシーリンを託していただけませんか。私の生涯をかけて、彼女を必ず守り抜くと誓います」


お父様と、隣国の王子。


部屋の中に、ビリビリと肌が震えるほどの凄まじい沈黙が流れる。


やがて、お父様はふっといつもの気弱そうな優しい笑みに戻り、満足そうに頷いた。


「……いいでしょう。ブルーコーラル殿下。陛下の影として数多くの男を見てきましたが、これほど真っ直ぐで、我が娘に狂った男は初めてだ。娘の婚約式、喜んで妻と共に同行させていただきます。……我が家の最高級のトマト(※私設精鋭暗殺部隊)を護衛に付けましょう」


「お、お父様、普通の護衛でいいですからねっ!?」


お父様の有能すぎるバックアップと、ブルーコーラル殿下の揺るぎない愛に包まれながら、私たちの物語はついに学園を飛び出し、新たな輝かしい未来へと向けて、隣国スペーシング王国へと一歩、踏み出すのだった。

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