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「じゃあ、やっぱり用が済んだら、わたしとは会うことも話をすることもないってことね。偶然会っても無視する気だったのかしら」
「……いえ、……そんなことは……」
「ないの? あるの?」
「ない、いえ、ある、いえ……」
「どっち⁉」
「あ、アリマス」
「やっぱり、使い捨てるつもりだったんじゃないの!」
「ごめんなさいいい!」
オスカーは深々と頭を下げた。
「ひどいわ! わたしをなんだと思っているの? バカにするにもほどがあるわ!」
泣きたいのをアリスはぐっと我慢した。
泣くもんか! こんなヤツのために泣くなんて、涙がもったいない。
「ちょっとは人の気持ちってものを考えなさいよ。わたしだって傷つくのよ」
オスカーは、ハッとした。なんだ、今までそんなことを考ええもしなかったのか。カーラ以外はどうでもいいのか。
「サイテー。二度とわたしに話しかけるな」
返事はなかった。アリスはオスカーに背を向けると、とっとと歩き出した。どうもカーラは縁起が悪い。
あれからひと月。食堂ではたまにオスカーを見かける。気づくとオスカーはささっと隠れるように姿を消す。
たしかに「二度と話しかけるな」と言った。だが、これではまるでアリスが悪者みたいで、気分が悪い。が、わざわざ訂正に行く気もしない。
はあ、厄介だ。
西部に続き、貧乏くじを引いた気がする。くやしいから、「カーラの追っかけのダシにされた」と言いふらしてやった。
おかげでアリスはみんなから同情されている。それはそれで、なんかみじめだ。
「ねえねえ、オスカー・ベイリーは劇団オウゴンオニクワガタを出禁になったらしいわよ」
ランチプレートBをつつきながら、シンシアが言った。今日はタラのムニエルだ。
「ええー!?」
そりゃあアリスもびっくりする。なにをどうしたらそうなるのだ。
「カーラにしつこく付き纏ったらしいのよ」
「あっ、へえ」
突撃しちゃったんだ。やけくそになったのかな? いろいろと間違ってるな、あの人。まじめすぎるのも考え物だ。さじ加減ていうものを理解できないかな。残念。
「劇場の入り口に張り紙がしてあるんだって」
「オスカー・ベイリー、出禁って?」
「そうらしいわよ」
あらあら。
「人をダシに使うからよねぇ?」
アリスとシンシアは、顔を見合わせてくすくすと笑った。そう言えば最近食堂で見かけない。
「後ろ指さされるから、自分の席でパン食べているみたいよ」
それは食パンですか、カレーパンですか(笑)。
ちょっとだけ溜飲を下げたアリスだった。
「ただいまもどりました」
ランチプレートAの唐揚げを堪能して戻ってきたアリスをハワード室長が迎えた。
「災難続きのバーネットさんに、おみやげだよ」
そう言って、紙袋を一つ手渡してくれた。
「あっ、これはチロルではないですか!」
焼き菓子が人気の有名店である。クリーム色の紙袋をのぞいてみると。
「わあ! フロランタンだあ!」
アリスはぱあっと顔をほころばせた。
「好きかな?」
「はい! 大好きです。ありがとうございます! いただきます!」
ハワード室長はにこにこしている。
「あのぉ、これはわたしのためにわざわざ?」
室長をうかがいみると、彼はふふっと笑った。
「いやいや、ついでだよ」
「そうですか。それでもうれしいです」
「それ食べて、午後もがんばろうね」
「はーい」
アリスの婚活は0勝1敗。まだまだ始まったばかりだ。
以降は不定期投稿になります。
よろしくお願いします。




