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宮廷女官の婚活事情  作者: 吉田ルネ
file2 オスカー・ベイリー(運輸局事務官)

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2-4



「じゃあ、やっぱり用が済んだら、わたしとは会うことも話をすることもないってことね。偶然会っても無視する気だったのかしら」

「……いえ、……そんなことは……」

「ないの? あるの?」

「ない、いえ、ある、いえ……」

「どっち⁉」

「あ、アリマス」

「やっぱり、使い捨てるつもりだったんじゃないの!」

「ごめんなさいいい!」


 オスカーは深々と頭を下げた。

「ひどいわ! わたしをなんだと思っているの? バカにするにもほどがあるわ!」

 泣きたいのをアリスはぐっと我慢した。

 泣くもんか! こんなヤツのために泣くなんて、涙がもったいない。

「ちょっとは人の気持ちってものを考えなさいよ。わたしだって傷つくのよ」

 オスカーは、ハッとした。なんだ、今までそんなことを考ええもしなかったのか。カーラ以外はどうでもいいのか。

「サイテー。二度とわたしに話しかけるな」


 返事はなかった。アリスはオスカーに背を向けると、とっとと歩き出した。どうもカーラは縁起が悪い。




 あれからひと月。食堂ではたまにオスカーを見かける。気づくとオスカーはささっと隠れるように姿を消す。

 たしかに「二度と話しかけるな」と言った。だが、これではまるでアリスが悪者みたいで、気分が悪い。が、わざわざ訂正に行く気もしない。

 はあ、厄介だ。

 西部に続き、貧乏くじを引いた気がする。くやしいから、「カーラの追っかけのダシにされた」と言いふらしてやった。

 おかげでアリスはみんなから同情されている。それはそれで、なんかみじめだ。




「ねえねえ、オスカー・ベイリーは劇団オウゴンオニクワガタを出禁になったらしいわよ」

 ランチプレートBをつつきながら、シンシアが言った。今日はタラのムニエルだ。

「ええー!?」

 そりゃあアリスもびっくりする。なにをどうしたらそうなるのだ。


「カーラにしつこく付き纏ったらしいのよ」

「あっ、へえ」

 突撃しちゃったんだ。やけくそになったのかな? いろいろと間違ってるな、あの人。まじめすぎるのも考え物だ。さじ加減ていうものを理解できないかな。残念。


「劇場の入り口に張り紙がしてあるんだって」

「オスカー・ベイリー、出禁って?」

「そうらしいわよ」

 あらあら。

「人をダシに使うからよねぇ?」


 アリスとシンシアは、顔を見合わせてくすくすと笑った。そう言えば最近食堂で見かけない。

「後ろ指さされるから、自分の席でパン食べているみたいよ」

 それは食パンですか、カレーパンですか(笑)。

 ちょっとだけ溜飲を下げたアリスだった。




「ただいまもどりました」

 ランチプレートAの唐揚げを堪能して戻ってきたアリスをハワード室長が迎えた。

「災難続きのバーネットさんに、おみやげだよ」

 そう言って、紙袋を一つ手渡してくれた。

「あっ、これはチロルではないですか!」

 焼き菓子が人気の有名店である。クリーム色の紙袋をのぞいてみると。

「わあ! フロランタンだあ!」

 アリスはぱあっと顔をほころばせた。

「好きかな?」

「はい! 大好きです。ありがとうございます! いただきます!」


 ハワード室長はにこにこしている。

「あのぉ、これはわたしのためにわざわざ?」

 室長をうかがいみると、彼はふふっと笑った。

「いやいや、ついでだよ」

「そうですか。それでもうれしいです」

「それ食べて、午後もがんばろうね」

「はーい」


 アリスの婚活は0勝1敗。まだまだ始まったばかりだ。


以降は不定期投稿になります。

よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ハワード室長が独身なら優良物件だな だけど地位の有る気の利く男は大抵は売約済なのが現実だ
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