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宮廷女官の婚活事情  作者: 吉田ルネ
file3 ロジャー・ダルトン(中央騎士団市中警邏係所属)

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3-1




「ふむふむ」

 帰りがけ、アリスが立ち止ったのは、官庁エリアから王宮の正面ホールへ続く廊下の掲示板の前だった。

 掲示板には様々な張り紙がしてある。総務の許可を得れば誰でも張ることができるのだ。


 子ネコや子イヌの里親募集、慈善団体のボランティア募集、教会バザーの協力依頼、などなど。

 その中に混じっていたのが「婚活パーティー参加者募集」。

 これは今のわたしにうってつけではないか。アリスは掲示板に近づくと、じーっと食い入るように見つめた。


 日時は1週間後。場所は城下のビストロ。参加費女性1000イェン。男性5000イェン。定員男女それぞれ20名。

 お気軽にご参加ください。申し込みは総務局まで。


「よし! これだ!」

 アリスは回れ右をして、その足で総務局へ向かった。




 そして待ちに待った婚活パーティー当日。いったん家に戻り、地味なお仕事服から少々華やかなお出かけ服に着替えた。

 こういうのはあまり派手でもいけない。ちょうどいい塩梅というものがある、とシンシアに言われた。

「派手に着飾った女と結婚しようなんて思わないでしょう? 結婚するなら堅実な女よ」

 なるほど、そうか。アリスは、ぽんっと手を打った。


 ヘアメイクも派手過ぎず地味過ぎず、下っ端貴族だけども、気持ちだけは清楚なお嬢さま風に。香水も控えめに控えめに。すれ違いざまに、ふわっと香る程度に。

 そんなふうに準備万端でやってきた会場のビストロ。入り口のドアには「貸し切り」の掛札が。

 ぶるっと震えたのは武者震いだ。

 よしっ!

 気合を入れてドアに一歩近づいたとき。

「もしかして参加者の方ですか」

 後ろから声をかけられた。はいー、と返事をしつつ振り向くとイケメンがいた。あー、イケメンかぁ。イケメンはなー。ちょっとなー。

 男もやっぱり堅実なほうがいい。イケメンが堅実じゃないというわけではないが、そういう人を知っているので。


「さあ、入りましょう」

 スマートにドアを開けて、アリスを中に入れてくれた。さあ! 「清楚なお嬢さま」作戦の発動だ!

「ありがとうございますぅ」

 小首をかしげてにっこりとほほ笑んだ。


 最初に自己紹介コーナーがあって、それからフリーのトークタイムに突入。

 堅実な人、堅実な人。アリスは目を皿にして探す。

 しかし! 見た目で堅実さってわかるんだろうか。みんな堅実に見えるのだが。それはそうだ。結婚相手を探しに来ているんだから、みんな猫をかぶっているに決まっている。アリスだってそうだし。


 これは、見抜けない。

 いくら目を凝らしたって、心根が透けて見えるわけじゃなし。そうこうしているうちに、3人ほどの男性に囲まれた。

「所属はどこですか」

「結婚後は仕事は続けますか」

「どんな家庭を築きたいですか」

 矢継ぎ早に質問が飛び交う。


 残念なことに、だいたいの年収は想像がつく。みんな同世代だし。はっきり言えば似たり寄ったり。たぶんみんな、次男とか三男とか、跡継ぎじゃない人たちだ。

 結婚後の生活もたぶんみんな似たり寄ったりだ。

 じゃあ、決め手はなにかといえば、やっぱり見た目? いやいや。ここはちゃんと見極めよう。さりげない仕草に、きっと性格が表れているはず。


 ふと見れば、さっきのイケメンは女性たちに囲まれている。やっぱり見た目重視か! 漏れ聞いたところによると中央の騎士だという。

 うわー、イケメン騎士かー。ないなー。ないない。もうこりごりだ。

 ほかで探そう。何人かと話してみたけれど、これといった決め手もない。

 せっかく来たのにな。


「焦ってザコに手を出すんじゃないわよ」

 婚活パーティーに出ると言ったら、シンシアがそう言ったのだ。

 そうだな、今日は無しだな。次に期待しよう。

 そう思っていたら。


「少しお話してもいいですか」

 声をかけてきたのは、件のイケメン騎士だった。


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