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宮廷女官の婚活事情  作者: 吉田ルネ
file3 ロジャー・ダルトン(中央騎士団市中警邏係所属)

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14/17

3-5

いろんな作家さん方の、AI小説談を読んでいるうちに、だんだん自分もAI化してきたような気がする……



 6番街のパン屋はすぐに見つかった。あたりはすっかり暗くなっていた。パン屋はもう閉まっている。

 家路を急ぐ人と、これから繁華街に繰り出す人が道路を行きかう。

ロジャーたちは帰った後なのか、それともデート継続中か。3人は通りの目立たない場所に立って、様子をうかがう。

「もう、いないんじゃない?」

 そーっとアリスは聞いてみる。

「いいや、デートならば夕メシも食べると思うね」

 たしかに、アリスもデートの時は夕食を食べてた。

「問題はどこで食べるかだ。どこかのレストランで食べるか、パン屋におじゃまするか」

「……ええ? そんな家族みたいに……?」


 シンシアもザカリーも返事ができなかった。

「アリス」

 思いつめたようにシンシアが言った。

「アリスは悪くないからね」

「うん、ありがとう」

 どのみち、この結婚はダメなんだな、とアリスは理解した。堅実だと思ったのに間違っていた。見る目がなかったのだ。

 それでも、事実とロジャーの思いははっきりと聞きたい。そうでなければ、こちらも踏ん切りがつかないというものだ。


「来たぞ」

 ザカリーがつぶやくように言った。見ると、件の二人がべったりとくっついて歩いてきた。楽しそうに笑いながら、ときおり「チュッ」てしながら。あんな笑顔、見たことがないなー。アリスはそう思った。となりでザカリーが舌打をした。

「行くぞ」

 2人はパン屋の前まで来ていた。

 ザカリーが先に立って、シンシアとアリスはそれに続いた。

「楽しそうだな。今帰りか?」

 ひどく冷酷なザカリーの声が響いた。挑発的ですらある。突然呼び止められて、ロジャーは険しい顔で立ち止った。

「なんだと?」

 早くも一触即発である。暗いせいか、後ろに立つのがアリスだとは気づいていないようだ。

「結婚式は半年後なんだってな」

 その一言で、ザカリーに軍配が上がった。戦うまでもなかった。そりゃあ、そうだ。大義名分はこっちにあるのだから。


「な、なにを言っているんだ」

 明らかにうろたえた。

「結婚式よ。わたしたちの」

 アリスがずいっと前に出た。

「あっ。あっ? ど、どうして……」

 ひどくあわてたロジャーはパン屋の娘を後ろに隠すように前に出た。

くっそ! そこまで庇うのか! アリスの胸にムラムラと闘志がわいてきた。


 ならば! やってやろうじゃないの! とことん! 


 アリスは腕組みをすると、ぐっと胸を反らした。

「婚約者はわたしのはずですが、わたし以外にそこまで馴れ馴れしくキスをするお嬢さんは、あなたのなになんですかね⁉」

 さっきまでとは打って変わって、肝をすえたアリスの声が、朗々と街頭に轟いた。待ちゆく人々が何事かと足を止める。

「あ、あ、ちょっと! ちょっと待って!」

 ロジャーはおろおろとアリスに手を伸ばしてきた。なんて厚かましい! アリスはその手をぴしゃりと叩き落した。

「気安く触らないでくださる?」

「いやいやいや。誤解だよ。ちゃんと話をしようじゃないか」

「キスしながら歩いてきて、なにが誤解ですか! その子の存在はご両親もご存じなのかしら」

「いやいやいや」

「あーら、いやいやしか言えませんの? きちんとした説明を申し入れますわ。それともダルトン伯爵夫妻もお呼びしたほうがよろしいかしら」

 アリスはますます声を張り上げる。

「いやいやいや」

 だから、ほかのことばも言えよ! シンシアとザカリーはちょっとニヤついている。楽しんでいないで、ちゃんとフォローしてほしい。

「だから、待てって‼」

 とうとうロジャーは怒鳴ってしまった。


「ひ、ひどい。わたくし怒鳴られましたわ。こんな方と結婚なんて。しかも結婚前から愛人を作る方なんて、わたくし無理ですわぁー」

 アリスは芝居がかってハンカチで目を押さえた。


「あら、やだ」

「ひどいわねぇ」

「今どきの若い者は」

 ギャラリーからアリスに対する同情の声が上がった。

「いやいやいや。わ、悪かったよ。あやまるから、話をしよう。ね?」


 そのとき、パン屋のドアが開いた。

「なんの騒ぎだ?」

 出てきたのはパン屋の主人、小娘の父親だった。

 修羅場が加速する。


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