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いろんな作家さん方の、AI小説談を読んでいるうちに、だんだん自分もAI化してきたような気がする……
6番街のパン屋はすぐに見つかった。あたりはすっかり暗くなっていた。パン屋はもう閉まっている。
家路を急ぐ人と、これから繁華街に繰り出す人が道路を行きかう。
ロジャーたちは帰った後なのか、それともデート継続中か。3人は通りの目立たない場所に立って、様子をうかがう。
「もう、いないんじゃない?」
そーっとアリスは聞いてみる。
「いいや、デートならば夕メシも食べると思うね」
たしかに、アリスもデートの時は夕食を食べてた。
「問題はどこで食べるかだ。どこかのレストランで食べるか、パン屋におじゃまするか」
「……ええ? そんな家族みたいに……?」
シンシアもザカリーも返事ができなかった。
「アリス」
思いつめたようにシンシアが言った。
「アリスは悪くないからね」
「うん、ありがとう」
どのみち、この結婚はダメなんだな、とアリスは理解した。堅実だと思ったのに間違っていた。見る目がなかったのだ。
それでも、事実とロジャーの思いははっきりと聞きたい。そうでなければ、こちらも踏ん切りがつかないというものだ。
「来たぞ」
ザカリーがつぶやくように言った。見ると、件の二人がべったりとくっついて歩いてきた。楽しそうに笑いながら、ときおり「チュッ」てしながら。あんな笑顔、見たことがないなー。アリスはそう思った。となりでザカリーが舌打をした。
「行くぞ」
2人はパン屋の前まで来ていた。
ザカリーが先に立って、シンシアとアリスはそれに続いた。
「楽しそうだな。今帰りか?」
ひどく冷酷なザカリーの声が響いた。挑発的ですらある。突然呼び止められて、ロジャーは険しい顔で立ち止った。
「なんだと?」
早くも一触即発である。暗いせいか、後ろに立つのがアリスだとは気づいていないようだ。
「結婚式は半年後なんだってな」
その一言で、ザカリーに軍配が上がった。戦うまでもなかった。そりゃあ、そうだ。大義名分はこっちにあるのだから。
「な、なにを言っているんだ」
明らかにうろたえた。
「結婚式よ。わたしたちの」
アリスがずいっと前に出た。
「あっ。あっ? ど、どうして……」
ひどくあわてたロジャーはパン屋の娘を後ろに隠すように前に出た。
くっそ! そこまで庇うのか! アリスの胸にムラムラと闘志がわいてきた。
ならば! やってやろうじゃないの! とことん!
アリスは腕組みをすると、ぐっと胸を反らした。
「婚約者はわたしのはずですが、わたし以外にそこまで馴れ馴れしくキスをするお嬢さんは、あなたのなになんですかね⁉」
さっきまでとは打って変わって、肝をすえたアリスの声が、朗々と街頭に轟いた。待ちゆく人々が何事かと足を止める。
「あ、あ、ちょっと! ちょっと待って!」
ロジャーはおろおろとアリスに手を伸ばしてきた。なんて厚かましい! アリスはその手をぴしゃりと叩き落した。
「気安く触らないでくださる?」
「いやいやいや。誤解だよ。ちゃんと話をしようじゃないか」
「キスしながら歩いてきて、なにが誤解ですか! その子の存在はご両親もご存じなのかしら」
「いやいやいや」
「あーら、いやいやしか言えませんの? きちんとした説明を申し入れますわ。それともダルトン伯爵夫妻もお呼びしたほうがよろしいかしら」
アリスはますます声を張り上げる。
「いやいやいや」
だから、ほかのことばも言えよ! シンシアとザカリーはちょっとニヤついている。楽しんでいないで、ちゃんとフォローしてほしい。
「だから、待てって‼」
とうとうロジャーは怒鳴ってしまった。
「ひ、ひどい。わたくし怒鳴られましたわ。こんな方と結婚なんて。しかも結婚前から愛人を作る方なんて、わたくし無理ですわぁー」
アリスは芝居がかってハンカチで目を押さえた。
「あら、やだ」
「ひどいわねぇ」
「今どきの若い者は」
ギャラリーからアリスに対する同情の声が上がった。
「いやいやいや。わ、悪かったよ。あやまるから、話をしよう。ね?」
そのとき、パン屋のドアが開いた。
「なんの騒ぎだ?」
出てきたのはパン屋の主人、小娘の父親だった。
修羅場が加速する。




