第12章 決闘
夜が明けきらぬ薄闇。
カイたちは黒衣の導きに従い、聖域と呼ばれる広間に足を踏み入れた。石造りの床は血に似た赤い文様で覆われ、天井からは鎖が垂れ下がっている。
そこに待ち構えていたのは――「主」。
黄金にも黒鉄にも見える仮面をつけた男が、静かに腰を上げる。圧倒的な威圧感が、空気を張り裂けるように広がった。
「来たか、選ばれし三人よ。…いや、未熟な雛たちか」
低く重い声。挑発というより、ただの事実を告げているような響き。
セラが杖を握りしめた。
「ここまで来たのは偶然なんかじゃない! あんたを倒すために、私たちは――」
だがカイが手で制した。彼の視線は、ただ一点、主へ。
(ここで揺らげば、全てが崩れる。俺が、切り開く)
開戦
刹那。
主の影が、分裂した。三、五、十。広間いっぱいに偽像が走り出す。
「幻術…!」リィナが目を凝らすが、その動きは一瞬遅れた。
本物の主が、槍を突き出す。
カイは咄嗟に剣を構え、火花を散らして受け止める。衝撃が全身を突き抜け、膝が折れそうになる。
その刹那を逃さず、セラが詠唱を完成させる。
「〈雷槍〉!」
蒼い雷光が奔り、分身のいくつかを焼き払う。
しかし、主は微動だにせず。
「力を得たか。だが――力だけで何が変わる」
⸻
心理戦
主の声は戦いの中でさえ揺るがず、逆に心を抉るように響く。
「人は裏切る。仲間は必ず去る。…それを知らぬから、貴様らは足を揃えて立てる」
リィナが叫んだ。
「裏切らない! 仲間を信じることが、弱さじゃない!」
その声には、過去に背を向けてきた彼女自身の苦しみと決意が込められていた。
主が振り返りざま、冷ややかに刃を放つ。リィナの肩を浅く裂いた。
「言葉に酔う者ほど、最も脆い」
カイの胸が煮え立つ。
(違う…! 俺たちはここまで共に来た。苦しみも、悔しさも――全部力に変えてきた!)
剣を握る手に、半年間の修行と戦いが重なる。倒れそうになった日々、セラに叱咤された夜、リィナに背を押された瞬間。
「俺たちは……過去に囚われない!」
⸻
激戦
カイが飛び込み、主の槍を受け止めた。火花が散る。
同時に、セラの魔法陣が背後から光を放ち、リィナが刃を回転させて主の死角を突く。
三人の動きが、半年の研鑽を証明するかのように噛み合った。
しかし主はなおも圧倒的。
「悪くはない。だが――決意と呼ぶには浅い!」
彼の仮面越しの瞳が、カイの心を見透かすように燃える。




