第10章希望の光
山道の先、夜空に黒い影がうねる。闇の主はゆらりと立ち上がり、触手を伸ばして二人を追い詰める。
だが、カイとセラの手にはリィナが伝えた封印の手順が刻まれていた。
「セラ、行くぞ……手順を間違えるな!」
カイの声に、セラも力強くうなずく。
二人は息を合わせ、儀式のように決められた動作を開始する。手には特殊な印が描かれ、闇の主を封じる準備が整う。
その時、黒衣の人物が再び現れた。
斜面から飛び降りると同時に、闇の主の注意を引きつけ、触手をかわしつつ二人を守る。
「今だ、二人とも!」
黒衣の人物の声に合わせ、カイとセラは最後の印を結ぶ。
手から放たれた光の紋章が闇の主を包み込み、黒い触手が光に焼かれて縮む。
だが、闇の主は容易には屈しなかった。
怒涛の力で紋章を押し返そうとする。二人の体が揺れ、思わず膝をつく。
「……くそ、まだだ!」
カイが叫び、セラも全力で手順を維持する。
その瞬間、黒衣の人物が叫んだ。
「リィナの力を信じろ! ここからが本番だ!」
言葉の意味は分からずとも、二人はリィナの意志を胸に刻む。
紋章の光が一層輝き、闇の主の動きが鈍る。触手が地面に叩きつけられ、黒い闇が徐々に消えていく。
そしてついに、闇の主の体が光に包まれ、闇が裂けた瞬間、周囲は静寂に包まれる。
二人は膝をつき、息を荒くする。
黒衣の人物はゆっくりと二人に近づき、フードを取った顔が月明かりに映る。
「……これで、一時的にでも止められた。リィナは……よくやった」
その瞳には深い敬意と、わずかな悲しみが宿っていた。
カイは震える手で空を見上げる。
「……リィナ、ありがとう……必ず助ける」
セラも小さくうなずく。
二人はリィナが託した希望を胸に、これからの戦いに備える決意を固めた。
闇の主は倒れたわけではない。
だが、光の紋章と三人の連携により、少なくとも今は封じられた。
次に訪れる戦いに、希望の種を残して――。




