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Episode:25 守護

メリアがアルゴジアの方に武器の長杖を杖代わりにして、傷だらけの足を引きずって向かおうとする。


ハガネは彼女に声をかけた。


「エルフの里は壊滅したのか?」

「・・・ッ!!」

メリアが息を飲む。


メリアの、王都の壁にアルゴジアが向かった後の姿は、ハガネには少し不自然に感じた。

なぜ、エルフの彼女が人間の街に過ぎない(・・・・)王都を執拗に守ろうとするのか。ハガネは疑問に思ったのだ。


ハガネが、予想を言う前にメリアが語り出す。

「・・・私はあなたに知られたようにエルフです。そして、私はエルフの隠れ里の守護者でした。」

『解説、エルフの里の守護者とは、里に住むエルフたちを人族を含む様々な外敵から守る役目を担う者たちです。エルフたちのタンパク源となる狩人とは違い、こちらは専ら守護が専門です。』

ミーアの解説がハガネの視界に入る。たぶん図書館で手に入れた情報だろう。

「ある時、里に王魔が現れました。こちらの表現ですと推定危険度Aのモンスターです。

王魔は単独行動が基本です。私たち守護者達もそう考えました。作戦を立ててそのモンスターに挑み、私たちが戦闘に勝てそうになったとき。ふと誰かが里の方を見たのです。そこには大量のモンスターが押し寄せ、燃え上がる里がありました。そのモンスターと里に向かったモンスターも殲滅しました。しかし、時は既に遅くエルフの里は壊滅しました。」


長いメリアの話を要約すると、

モンスターが来て油断したら里が壊滅した

っていうことだ。


「それで守りたい人々を守りたいと。」

「はい。ですが・・・。」

「ここはスラム街だ。ここで戦闘をすればスラム街に住む人々は死んだり生活していけなくなるかもしれないぞ。」

ハガネの言葉は強い口調で言ったものではない。しかし、それは相手に嘘を付かせない重さを持った言葉だった。

「・・・スラム街の人々は関係ありません、彼らはここに勝手に居た(・・・・・)人々です。彼らが死のうと構いません。」

それに応えたメリアの返答も、本心だとハガネは考えた。


ハガネはこの考えが嫌いではない。

メリアの考えは守りたいものは守るがそれ以外はどうなろうと構わないというものだ。


***


ハガネは、人間は必ずしも自己中心的とは限らないと思っている。そして、人間は守りたいものを守る者だと思っている。

守りたいものが自己であれば、自己中心的となる。だが、他者を守ろうとする意思がある人間がいるのも確かだ。


RPGゲームに出てくる勇者は世界や国を守るためとても献身的だ。

だが、人間を守るため戦っている勇者は、襲ってくる盗賊を守るべき人間だからと戦わないことはないだろう。後で説得して仲間になることはあるかもしれないが。

それは、盗賊たちを守ることよりも自分たちを守ること、若しくは使命を遂行することを優先した結果だ。

守らなければならない物のために優先度の低いものは切り捨てなければならない。


もちろん、勇者のような人間がそうたくさんいるとはハガネも思っていない。

しかし、これは普通の人間にも当てはまることだ。


ここまでは当然といっていい話。

ハガネが気にするのは、どれだけ守りたいもののために他を切り捨てられるかだ。


切り捨てるといっても、人には限度が必ずある。

自分の命は大事だが、他者を助けたい人間は

自分の命は捨てることができない。

これが限度だ。


その点、メリアの他はどうなろうと知らないという考えはハガネの好きなものだった。



おそらく、エルフの里の守護者として里に来たものは仲間でなければ、例えただ迷っただけの人間でも殺さなければならないということが影響したのだろう。


***


ハガネはメリアに語りかける。

「里に居た時、守りたかったエルフたちはお前がモンスターを倒した後どんな顔をした?」

エルフたちがメリアたちに向けたであろう顔は想像に難くない。

「・・・。」

メリアはその光景を思い出したのか、目に少し怯えを映しだした。

「そんな奴らに守る価値はあるのか?」

ハガネは甘く囁きかける。

「・・・え?」


「お前が命を賭けて守ったのに礼も言わず、守られたのが当然という顔。守れなかった者(おまえ)を傲慢にも責める顔。・・・本当に守る価値があったのか?」

メリアの目がチラチラと動き、戸惑い迷っているような顔をする。


「・・・・・・そ、それは。」

「ない。そうだろう。」

考えて、しかしそれを否定しようとするメリアに、ハガネは肯定の意味で断言した。


メリアは回答から逃げるという選択肢を失い、合理的で正当に思えるハガネの言葉に同感してしまった。

「・・・そうだ、守る価値なんてない。」

「じゃあ、お前の本当に守りたいものはなんだ?」

その状態で、メリアにハガネは聞いた。


メリアは真剣に考えたようで、遅れて時間稼ぎの答えをハガネに返す。

「・・・・・・まだ、わからない。」

「それでいい、まだ考え始めたばかりだ。思いつくことはないだろう。」

ハガネはそれを正当化した。


視野狭窄に陥っていたメリアの目にアルゴジアの攻撃の後が写った。

「・・・だけど、今は王都を守りたい。」

「今は私がお前の守りたいものを守ってやる。お前は私の守りたいものだからな。」

嘘ではあるが、メリアを仲間にしたいとハガネも少しは考えていた。


ハガネは王都の城壁を破ったアルゴジアのもとに向かった。

ハガネの行ったものは心理を使った詐欺に近いです。

もっと時間が経っているように表現したかったのですが、これが作者の限界です。

解除はしていませぬ

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