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Episode:24 爆発

ハガネとメリアは王都に走った。

王都の壁は壊されていなかったがそれに守られていない、スラム街が焼けているようだ。

スラム街では木製の建物が多いから燃えるのも早かったのだろう。


アルゴジアと思しき影を尻目に、アルゴジアに攻撃を受けていない門から王都に入る。


攻撃されている付近には冒険者や兵士が集まっているようだ。


また、走って向かう。



一人の小太りな武官が全員に話をしていた。

「作戦を説明するっ!!敵は我が軍に倒せないものではない!集まってくれた冒険者諸君には申し訳ないが、この件は王都守護軍の兵士で片付けさせてもらう!」

冒険者ギルドには要請を出していたはずだ。

兵士たちが勝手に行動しているのか、国の指示かはわからないが軍だけで片付けようとしているようだ。

「王都守護軍の諸君はすぐに戦闘に向かう!モンスターだと思って舐めてかかるなよ!」


王都守護軍は本来、敵国から国を守る最後の砦の役割だ。つまり、対人戦闘が基本。

しかし、エルティゲルのとき活躍できなかったことを意識しているのだろう。


兵士たちは王都の壁の門を抜け戦いに行った。


ベルギットが先ほどまで武官が立っていたところに立った。

「聞いての通り、王都守護軍がアルゴジアの戦闘を先に(・・)行う。だが、武器を下ろしてはならない。いつでも戦えるようにしろ!盾をもて!剣を構えろ!」

「「はい!」」

冒険者たちは剣こそ構えないが、剣の持ち手に手を掛ける。



*****



王都守護軍は苦戦していた。

負けている訳ではないが、かろうじてだ。


こちらの攻撃が通らない。

アルゴジアというらしいモンスターに生えた鱗が、異様に硬いのだ。剣技を使っても通じない。

そして、相手の攻撃の爆風は盾兵が盾で防いでいる。しかし、それも気を抜けば吹き飛ばされそうだ。


気を抜けば倒される軍とダメージをほとんど受けないアルゴジア。

どちらに分があるかは誰が見ても明らかだった。


しかし、戦の経験の浅い武官は攻撃が効かないことに苛立ちを覚え、怒鳴る。

「もっと攻撃せんか!」

戦わない武官の声が聞こえたかはわからない。


アルゴジアはこのまま戦い続けても、体力の消耗に繋がると本能で感じた。

アルゴジアが攻撃のそれまでのパターン、爆発を起こし爪で攻撃するというものを変えた。

爆発を起こすのを遅らせる。アルゴジアが麻痺毒で痺らせてから殺すという本来の方法に戻したのだ。


盾兵達が痺れ、盾で防げなくなる。

直後に爆発。

盾兵達はあっけなく吹き飛ばされ、盾を失った軍は瓦解する。

矢鱈に効きもしない攻撃していたアルゴジアの足元の兵士は爪で切り裂かれた。

アルゴジアの黒かった爪が赤く染まる。


兵士を全て始末したアルゴジアは武官のところまで飛んでくる。

「なにをする!モンスターの分際でっ!!」

武官は叫ぶが、アルゴジアに伝わるはずもない。

「うぁああああ!!」

武官はアルゴジアの爪で貫かれた。




軍はアルゴジアに殲滅された。



*****



壁が揺れる。

一方、冒険者たちは、壁が攻撃されているのを聞き軍が敗北したことを知った。


***


冒険者たちは、飛んでいるモンスターとの戦闘がまず、相手を落とすことから始まることを知っている。


「魔術師、弓手は羽を狙え!!」

魔法や弓が羽に向かう。

盾部隊以外の冒険者はアルゴジアのもとに向かわない。


軍は最初から歩兵で攻め、弓や魔法が同士討ちを恐れうまく使えなかった。


盾部隊に指揮官がアルゴジアのガスの攻撃がきたことを伝える

「ガス攻撃!全員盾構え!息を塞げっ!」

息を塞ぐのは麻痺毒に影響されないようにするためだ。


アルゴジアとの応酬が少し続くと、一本の矢がアルゴジアの羽根の根元に刺さり、アルゴジアが体勢を崩す。


冒険者たちに、攻撃の合図が来たがその前に彼らは飛び出していた。


**


ハガネはあまりやる気はなかった。

メリアは違うようだが、ハガネにはこの街の住民を守る意味はなかった。

ハガネは死なないとはいえ、痛いものは痛いから嫌いだ。守るため程度に嫌なことをするのは気が進まない。


ハガネも冒険者として、現在戦っているがメリアがいなければ、

「予定よりアルゴジアが早く来たので間に合わなかった。」

なんて、言い訳をするつもりだった。

ハガネが来たのはメリアが行ったからと言っていい。


ハガネは、剣技も何も使わなかった。


**


地に墜ちたアルゴジアが、寄ってきた冒険者を邪魔に思った。

くるりと一回転して、置いていかれる形になった尾が恐ろしい速さで冒険者に迫る。

吹き飛んだ者と避けた者は半々くらいだった。


それだけで半分の冒険者を屠ったアルゴジアは息を吸う。


盾部隊の指揮官がガスの攻撃を予測するが、出たのは液体(・・)だった。



それを溶解液とでも思ったのか、盾部隊は避ける。



連鎖的に爆発を起こすこともなかったため、冒険者たちはそのことを忘れ、戦闘を続けた。


**


冒険者たちはアルゴジアと戦う内にアルゴジアの動きが早くなるように錯覚した。


だが、それは違う。

冒険者たちの動きが悪くなっているのだ。

疲労もあるが、それだけではない。

まるで麻痺したかのように体が言うことを聞かない。



戦闘中、幾度かアルゴジアが液体を吐いた。


アルゴジアはまさかガスを気体として貯めているはずもない。

それは謂わばガスの原液だ。

そして、ガスは揮発性だった。

ガスは麻痺毒であることも忘れてはならない。



突然なんの前触れもなく、それは起こる。


このガスもそうだが、空気中である程度の分圧がなければ、爆発は起こさない。

一方、原液がばら撒かれたことによりそれらが揮発し、ガスは少しづつ増えていく。

しかし、"ある程度"に達するのには時間が掛かる。


だが、ある程度に達してしまえば、もうどうしようもない。




アルゴジアと戦った区域、全てが爆発した。




爆発の後そこに残っていたのは、爆風でも無傷のアルゴジアと瓦礫、そして冒険者の死体だった。

冒険者の死体を木材についた火が照らしだしていた。

人が先ほどまで住んでいたとは思えない土地は焦げ臭い匂いと死臭を漂わせていた。


冒険者たちの肺に入った空気も例外ではなかった。


肺の中の空気が連鎖的に爆発したため、黒焦げになった生首と下半身という死体が多い。

焦げた肌から、ピンクの中身が見える骸が転がっている。

腕も何本も転がっていて、どれが誰のものかもわからない。

たまたま、その時息を止めていた冒険者がその光景を見て、嘔吐した。



メリアは律儀に盾部隊の指揮官の言っていたことを守り、息を止めていたので助かったようだ。ガスの濃度を知っていたハガネは言うまでもない。


***


アルゴジアの羽根の傷は直ったのか飛び立ち、王都の壁に向かう。


壁で爆発が起こるが、それを止めるものはもはや、いない。



程なくして、

王都の壁が崩壊した。

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