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Episode:21 友達

修正:サグの武器をグレードソードから大盾と片手剣に

アリアータ王国南東にはロユブス山脈があり、これを越えるのをこの世界の現在の技術で行うのは困難だ。

増してや、ここを越え南東の国々と交易をするのは困難を通り越して無理に近い。

南東の国々との交易はミューレ峡谷と呼ばれる山脈にある谷を通って行われる。


ロユブス山脈ではミューレ峡谷周辺のみでしか、冒険者によるモンスター討伐は行われていない。

住民による要請がある都市周辺とは違い、ロユブス山脈での討伐を補助することに国は消極的だ。


ロユブス山脈では有名な今世の英雄の討伐した推定危険度A1のユニークモンスター、エルティゲルが発生した。

このような非常に危険なモンスターが広い未開地で発生することが多いことは過去の統計的にも明らかである。

国も当然危険は排除したいので、ロユブス山脈の未開地を踏破したい。しかしながら財政的問題で難しくミューレ峡谷周辺でしか行われていないのが現状だ。


***


「ここは最重要の防衛拠点だぞ!絶対死守しろ!」

怒声が響くが彼らの戦うモンスターにこれまでの攻撃で怯んだ様子は全くない。



ミューレ峡谷の冒険者ギルドの調査用の支部は、ロユブス山脈から現れたモンスターによる攻撃で被害を受けていた。

調査支部がそのモンスターに名付けた仮称はアルゴジア。

これはアルゴというモンスターに特徴がよく似ていたからだ。


アルゴは巨大な蜥蜴のようなモンスターだ。基本的に数十匹で群れを作り生活しているが、それをさらに巨大化させたようなアルゴジアは単独だ。

おそらく群れを作る必要性がなくなったのだろう。

しかし、アルゴジアには二対の虫に似た巨大な羽が生えている。どんな素材でできていれば羽を普通の虫のようにピンと伸ばせるのだろうか。

そして、あろうことかアルゴジアはその羽で飛んでいた。


アルゴが吐く麻痺毒のガスは可燃性らしく、アルゴはごく薄い黄色のガスが十分に広がると火を付ける。

本来この能力は小規模の爆発しか起こさない。


だが、アルゴジアのサイズでガスを撒けばその爆発はかなりの広範囲に及ぶ。

冒険者ギルドの支部を完全に包み込むほどの火球が発生した。



建物が吹き飛ぶ。



そんな、非日常的な現象が発生した。


防御のスキルを発動させたため吹き飛ぶのを免れた一部の冒険者たちは

吹き飛んだ冒険者ギルドのあった場所でアルゴジアを見上げ呆然としていた。


「なんだよ、あれ。」

「勝てる訳ねぇだろ。」


冒険者たちは口々に弱音を吐く。


冒険者たちは慈善事業で働いている訳ではない。

よって、彼らには逃げるという選択肢が存在する。


弱音を吐き始めた冒険者たちの一人はそれを思い付く。

「逃げよう。」


その一言でその冒険者たちのパーティーは瓦解して逃げ去る。


だが、そこをアルゴジアが見逃す筈がなかった。


巨体に見合わない速さで冒険者たちが逃げる方向に先回りしたアルゴジアは、宙にいることにより自由になった四肢で切りつける。


冒険者たちは頭から縦に切り裂かれ内臓などを垂らしながら倒れ、絶命する。

運良く当たらなかった冒険者や、爪が掠ったことにより内臓が飛び出ている冒険者もいた。

しかし、アルゴジアは爪で切りつけている間にガスを用意していた。

冒険者たちは吐いた息が吹きかかり体が麻痺したあと、すぐに付けられた火による爆発でスキルを発動する間も無く爆死した。


死んだ冒険者とは違う方向に向かった冒険者たちが王都にアルゴジアの発生を報告しに行った。



*****



活版印刷により作られたものには本だけではなく、新聞があった。

それまで、新聞は民衆のために書かれた手書きのものを掲示板に貼っていたが、活版印刷により個人に配ることができるようになった。しかしその信用性には疑問がある。


現代地球世界では情報の偽装や改竄が相次いでいるのだ。それより簡単にできるこの世界で、起こらない筈はない。


と言っても、それが民衆の情報源であるのは確かでありそこには当然大事件も乗る。


今日の新聞にはこう書かれていた。

『貴族のヘクト・ラ・メイ子爵が死亡!?

金目当てかはわからないが、ヘクト氏が汚職を行っていたことを示す資料が纏めてあったことが、彼に敵対的だった貴族から発表されており、恨みによるものの可能性が高いと思われます。彼の自宅に向か・・・』


どう見てもハガネです、ありがとうございました。


***


次の日、ハガネは冒険者ギルドの建物に置いてある新聞を読んでいた。


新聞には最新の賞金首やモンスターの部位の売値なども載っているので、武闘派の印象が強い冒険者も読む。現在では冒険者ギルドがいつも定期契約で買うようになったのだ。


***


成金貴族とよばれる貴族はほんの数年前までは働かない者たちだった。

通貨混乱期の金の多くが既に消費され、働かざるを得なくなったのだ。法衣貴族とよばれる領地を持たない貴族は文官や武官として国で働くがその中に成金貴族も入った。

また、いち早く通貨混乱期の金の無駄遣いをやめ、それを商売の元手にした一部の貴族は商業貴族と呼ばれる。 国境を隔てて商売をする商人のほとんどがこれに入る。


貴族の給料の一部は国から支払われることに法律でなっており、これは働かなくても支払われたため、当時は成金貴族のことを金食い虫などと民衆は呼んでいた。

その記憶はまだ新しく成金貴族=悪者というイメージが民衆には存在する。


なお、貴族の階級は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵などと書いているが、本来は別の呼び名がありたまたま階級の数が五つだったため、そう表記している。


***


ハガネは冒険者として事前に受けていた依頼の分のトランスファーカードを受付に渡し、金を受け取る。ヘクトに貰った分の金と比べれば些細なものだが、ハガネが冒険者として不審がられないために重要なことだ。(すでに遅い気もするが)


昨日までと違い、見た目普通の剣をハガネが腰に吊るしていることに気付いたらしい冒険者もいた。流石に呪剣だとは気付かないようだが。


新聞をまた読み始めようとしたハガネに話し掛ける青年がいた。

「剣、買ったんだ。いい剣そうだけど、護身用だよね?」

あまり人と話さないハガネには馴れ馴れしく感じたがなぜか悪い気はしなかった。


「はい、魔法を使うにしても接近戦の手段が無いのはまずいと思いまして。それに冒険者にはアレな人も居るでしょう?」

「ああ、俺はリュート・フォレクト。」

彼は自己紹介をした。

「リュー?」

「一昨日の昼にあったよね?」

「ああ、リューくんか!」

彼は一昨日行ったレストラン、ラ・シェルリのウェイターの青年だったのだ。

「リューくんっていうのは少し恥ずかしいけどね。一応、こっちが本業。少し前にランクは2−になった。」


少し長めに切り揃えられた青い髪に、マリンブルーの瞳、好青年の典型のような顔はあのウェイターの顔だ。

リュートはハガネと同じように剣を腰に吊るしていたが、ハガネのそれよりも少し幅の広い、バスタードソード(両手でも片手でも持てる剣)のようだ。


「・・・あの時は冷たく言ってすまなかった。知ってるかもしれないが自分はハガネ・ニシオだ。」

ハガネは一昨日のことを思い出して悪かったと思い謝罪した。

「気にしてないよ。それに少し安心した。始めてあったときには友達とか作れるのかなって思ったから。」


"初めて"が殺気のときなのか昼のときなのかわからなかったがこの場合はどちらでも変わらない。


「今はそうじゃない?」

「普通に話てるしね。」

周りにしかわからない自分のことがあることをハガネは知っていたが少し懐疑的だった。


タイミングを見計うことは出来ないはずだが、ちょうど話が途切れたとき、冒険者ギルドの扉が開いた。


リュートの反応を見ると彼の知人のようだ。

「サグとメルじゃないか。今日はいつもより早いね。」

メルを女性とするとサグが答えた。

「それは皮肉か?」

「いつもより早いって褒めてるだけだよ、サグ。」

「それも皮肉ですよね!」

消去法的にメルがリュートに反論する。

「お前はあれか?ハーレムでも作ろうとしてるのか?」

「そんなわけないだろ。彼女はハガネ、ランクは・・・「2−」だそうだ。」

「ハガネさんは誰と組んでるんですか?」

メルがハガネの周りに誰もいないことを不思議に思って問う。

「いや、自分はソロだ。パーティには入っていない。」

「「「えぇ!?」」」

リュートまでも驚いていた。


普通、冒険者はパーティを組む。また、ソロで活動できる能力があっても安全マージンをとってタッグを組む。ソロは相当珍しいのだ。


***


危険度はD4〜D1、C3〜C1、B3〜B1、A3〜A1。が設定されている。なお、アルファベット表記しているが実際は異世界言語の順番である。

Dの危険度のモンスターはほぼ狩る必要もない雑魚モンスターだ。

Cの危険度のモンスターは人に危害を与えるモンスターになる。

Bからは急に強くなり人数が少なくとも2人で倒すことが前提とされている、これは相手が特殊な能力を持つことが多く。毒などへの対処が必要になるなど、一人では危険だからだ。

Aのモンスターは全てユニークモンスターである。

ほとんど現れすらしないが大国の軍を一頭で壊滅させるレベルの能力を持っているとされる。また、複数のパーティで挑むのが定石とされているが、勝算のない戦いになる。

エルティゲルは最初、王国南東の国々に向かい数個の国を滅ぼしたことから、危険度A1と推定された。


***


「ソロで2−ってB3を一人で狩ったんですか!?」

メルは驚きで一人の意味の言葉を繰り返してしまっている。

「ソロって、マジかよ。」

「たしかにそれくらいなら、俺が助ける必要ないね。」

ただ、リュートは納得といった顔だった。



サグとメルが忘れていた自己紹介をする

「私はメリアナ・トゥスカーレ。回復魔術師(ヒーラー)で、メルって呼ばれているわ。」

「俺はタンクのサグ・ディオン。よろしくだな!」


メルは枯れ草色の髪に緑の目で、かわいい系の顔立ち。ウェイトレスに近い格好をしているが、腰に短剣とそれを吊るすためのベルトを付けていてメインの武器の短杖もそこに差している。

サグは焦げ茶色の髪に浅葱色の目で精悍な顔つきの青年だ。装備は金属のアーマーただし兜なしである。見たことのない金属だが、おそらく魔法金属でてきた高級品だ。

武器は大盾を背負ってい、片手剣を腰に吊るしている



彼らは幼馴染で、冒険者ギルドと掛け合って(というほどでもなかったようだが)三人の能力の特徴もあり、同じパーティになったそうだ。



*****



アルゴジアはその虫のような羽で空を飛んでいた。

そして、一つの都市を見つけ急降下してから、

ガスをばら撒き爆破する。

少し焦げた焼死体や爆死体(?)を脚で掴み食い始める。

騒ぎを聞きつけた冒険者がアルゴジアに剣を向けた。

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