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Episode:19 呪怨

今回から文の最初一文字を下げました。

 唐突だが、ハガネは剣を買うことにした。


 ハガネが魔法使いだとしても、護身用の短剣を持たないのは不自然であるし、ハガネを舐めてかかる者への警告として剣を持つことにした。


 使うつもりはあまりないので、特に選ぶ気はなかった。


 異世界転移もののテンプレとして、剣を買おうとするとそれがインテリジェンスソードでなぜか剣に認めてもらったり、魔力を馬鹿喰いする魔剣だったり、とにかく特別な剣を手に入れる。


 ハガネが入った店が呪いの剣しか売っていない店だったのは、何か力が働いているのだろうか?


 表の大通りから裏路地の少し奥にあるその店に気付いたのは本当に偶然だった。

 そして、その店が武器を扱っている店だったのはさらに偶然だろう。


 昨日、昼食を取った店とは対照的に薄暗い寂れた印象の店は、いかにも表立ってできない商売をやっている風である。


 事実、呪剣を商売で扱うことは合法ではない。

 国に認められた者は行えることになっているが、国は認める基準を設けていないので実質全て違法だ。



 ところで特殊な武具の定義は決まっている。

 一般に神に与えられたとされる剣が神具である。これにはアリアータ王国にある、伝説上の英雄ミッシェル・グリントが使ったとされる両手剣、旌顕の劔オルバート。エルフのすむ隠れ里にあるという鼎坐の御杖エリシュラスなどが有名だ。

 聖具と魔具は同じものだが作ったときその場にいたのが聖職者か魔術師かの違いだ。

 呪具はこれらとは一線を画する。

 上のような武具を誰かが怨みを持って扱ったときそれが変質したものだ。

 呪具はその怨みにより使用者の精神を変えるもしくは壊してしまう。反面、この武具は強力な力を発揮するため、依然裏での取り引きは多い。

 いつかこの世界では呪具ダメ、絶対!みたいな広告が出るのだろうか?



 ハガネが店内を見渡し、一つの片手剣を見つけそれに触れようとした時、奥から声がした。

「心が綺麗なものは触れない方がいい。汚いものは知ったことではないがな。」

 店の奥は煩雑としていて気付かなかったが地球世界で想像された魔術師のような風貌の爺さんがいた。

「余計なお世話です。」

 ハガネは彼にそう言い放ち剣の持ち手を握った。


 ハガネの脳内の記憶を遡らせられる。


 サーシャを傷つけた記憶。

 ロイとガなんちゃらの腹を解体でぐちゃぐちゃにした記憶。


 それらが少し印象を強くして記憶が流れる。


 盗賊の惨殺。

 最初の盗賊の無残な死に様。



 出会った人々や助けた少女、

 元の世界の大切に思えそうな(・・・・・)人々が謂れもなく自分のせいのような気を起こさせながら死んでいく。


 そして、自分の記憶にない記憶が流れ込む。

 ハガネに大切に無理矢理思わさせ(・・・・)られた(・・・)この剣に宿る怨みの主の大切な人々が死ぬ。


 なるほど、汚い生き方をしてきた人間は最初で発狂し、綺麗なものは最後で壊される仕組みなのだろう。

 確かにハガネの心のどこかが辛く思っている気がした(・・・・)


だから(・・・)?」


 だがハガネはその一言で済ませた。

 気付けばハガネは記憶から抜け出していた。


「爺さん、この剣は貰います。」

 爺さんは驚きが抜けないようだった。

「・・・あ、ああ50,000jzだ。」

 ハガネは代金のトランスファーカードを爺さんに投げつけて店から出て行った。



 裏通りに出ると、ハガネの前に男が数人立ち塞がった。

 女性としての普通な体格は男性としては小柄な体格だ。大柄な男よりはずっと小さい。

 そして両側の壁になっていることにより男たちがハガネに与える圧迫感はかなり大きいものになる。

「ハガネ・ニシオだな。主がお呼びだ、ついて来い。」

 男の一人がその姿に相応しい低い声でハガネに話しかける。

「ヘクト・ラ・メイ子爵って知ってるか?」

 ハガネはそれに問いを投げかけた。

「・・・ッ!」

 男たちが一瞬動揺する、しかし彼らはその道のプロだ。次の瞬間には冷静さを取り戻す。

 だがハガネには一瞬で十分だった。


 先程買った剣が男たちを既に数人、斬り殺していた。


 生き残った一人はハガネを睨むがその目には恐怖が浮かんでいた。

 ハガネには男を甚振る趣味はないので手短かに【操術】で済ますことした。

 ハガネが出す【操術】の糸が男に触れ男の目から恐怖の感情も消え、ハガネのために情報を垂れ流す人形に変わる。


 男から手に入れた情報を、まとめると新たな収獲はほぼなしと言える。

 ヘクトがハガネの容姿を知ったことは分かった。


 ミーアに服装と髪型を変えるよう言われたので、大通りで男女兼用の服を買い、宿屋で着替えた。

 髪型は後ろで適当に縛る。


 その夜に襲撃者はいなかったが、今後を考えると同じ宿屋に居座ることはいい手ではない。たから期限もあるが、宿を変えることにした。


 ちなみにラードと馬車は王都に専用の建物があるのでそこに置いてある。


 ハガネはそろそろ、ヘクトを殺すことを考えミーアと相談しながら策を練った。

策を考えているのは作者も同じです。

ハガネさんの武器は呪いの剣(銘無し)になりました。

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