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Episode:17 妄想

王都には、かつて推定危険度A1のユニーモンスターが襲来したことがあった。

それを討伐したのが当時の名前でベルギット・アヴァドである。

ベルギットはこの功績を称えられ、ランク0つまり特級冒険者への昇格と勇者勲章という物語でしか出て来ないような勲章と名誉伯爵の位を与えられる。ベルギットはこの後ユニークモンスター討伐の時の怪我で冒険者引退を決意するが、民衆にとって彼は英雄となった。


今世英雄伝という小説は彼の英雄化の立役者となる。

この小説はベルギットの生き様を描いたものであるが、それを綿密な調査や聴取によって裏打ちされた彼のこれまでを元に描いている。


ハガネは次の日、この前のモンスター殲滅の作った時間があったのでベルギットについて調べていた。

聞くは一時の恥、聞かざるは末代の恥ということわざがあるが、それに乗っ取る形で宿屋のから離れた商店街で聞くと知らないことを驚かれたが英雄だと教えてくれた。

民衆の考えは皆大体同じで今世紀の英雄、生きた伝説といった感じである。


今世英雄伝という小説の名前も教えてくれたので、いまそれを講読中ということだ。


活版印刷は地球世界では人類最大の発明だとされている場合もあるが、この世界ではそうでもないようだ。活版印刷はステータス画面の文字を紙に移せるようになった程度の認識である。小説の論文には活版印刷を重要視する意見もあるが、残念ながら少数派だ。

これはシステムカードの影響が強く、紙の重要性も薄れていたことも原因している。


とにかく、この世界にはワードプロセッサーはまだないが、活版印刷による冊子もある。



小説があれば本屋もある。

しかし、ハガネは公共図書館に来ていた。

ハガネは自由民(【自由民証】を持つ者はそう呼ばれる。)なので利用と馬鹿高い税を取られる。

しかし、ミーアの計算上こっちの方が安くなるらしい。


ミーアの特性として、手に入れた情報はコンピュータのようにデータ化されるので忘れることはないことがある、思い出し忘れることはあるが。

これがなければ、ハガネは自由民として図書館税の元など取れないだろう。


現状のハガネはあたかも四つの本を同時に読んでいるようになっている。

ただし本人が実際、読んでいるのは一冊だけだ。

読書の制限を解放すれば、いくらでも同時に読めるが後で酷いことになりそうだ。それに縛りのこともある。


ミーアがハガネを通して発動する魔法、ただし魔力消費量0が三つの本を浮かせ、それが自立しているかのように捲られる。

傍から見れば絶世といっても過言ではない美人がそれらの動作を行っている様子はファンタジー世界の中でもどこかメルヘンチックであった。


ハガネたちが収集した情報は主にこの世界の歴史と文化、一般常識だった。

物語などを読めば、この世界もしくは国で当然となっている一般常識が必ずと言っていいほど出てくる。また、童話的な話はこの国の民衆の考え方に繋がることもある。


ハガネたちの策の考慮に彼の容姿は入っていなかったが、そんなことを続けていれば有名になり居場所も自分たちを探している者たちにバレることに、まだ彼らは気付かなかった。



ヘクト・ラ・メイ子爵はサーシャは彼女に託した使命を果たせなかったことと、もう一つも失敗したことに怒りをあらわにしていた。


彼はハガネをメスシリウス・リィ・アスタシア侯爵に献上することで、自分はさらに上の仕事につき、更には階級を上げる予定だったのだ。彼にとっては出鼻を挫かれたように感じた。

ハガネのことを彼に紹介した時、興味を持っていた。と少なくともヘクトは感じた。



当然だがこの世界には写真などはない。地球世界の源氏物語には噂でしか美しい娘のことをしれないことが描かれたエピソードが存在するが、この世界で美しい娘を手に入れることを考えた時に(既に考えから腐っている気もするが)選ぶ人間のセンスは重要なものとなる。


メスシリウスはヘクトは美しい女の選ぶセンスがいいと感じていた。



サーシャはその場の怒りに任せ奴隷として売ってしまったが、後から湧き上がってきた計画の失敗のストレスの発散の相手がいなくなってしまった。



悪役貴族がメイドを虐めるものがあるが、奴隷と違いメイドは職業なのでいつでも辞めて逃げることができる。(物理的に逃がさなくすれば別だが。)

よっぽど大きな秘密でも握らなければそんなことはできない。そんな秘密は簡単に見つかるものではないし、そもそも持っているほうが珍しい。たとえ、握ったとしてもメイドを虐めた事実が知られればメイドを雇えなくなってしまう。

よって貴族がメイドを虐めるのは現実的でないのだ。


そのことをヘクトは知っていたからこそ、行き場のない怒り(彼の妄想から来るものだが)に困っていた。


簡単に解消する方法として、奴隷を買うこともあったが王国では奴隷の売買は貴族であろうと民衆であろうと禁止されている。

禁止されているのは、売買であり所持を禁じているわけではない。決闘などの契約で賠償金を期日以内に集められなかった場合の従属(無償奉仕)など、奴隷を作り出し所持するのは違法ではない。

これには抜け穴があり、奴隷にする人間を連れて行けば実質売買できてしまう。(今回のサーシャはこれだ)


しかし、ヘクトはハガネに責任を押し付けることでストレスを解消しようとした。


「ハガネ・ニシオを探し、見つけ次第殺せ。」

ヘクトは自分でも驚くほどの暗い声だった。

メスシリウスはメスシリンダーとシリウスをくっつけただけのとても簡単な名前で、アスタシアはあすとあしたをくっつけ貴族風にしたもの。

サーシャは売られました。

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