Episode:15 狩猟
ベルギットは重々しい声でハガネの問に答えた。
「君に責を問おうとは思っていない。しかし、君もまだ新人だ。仲間もいないのに周囲が敵ばかりでは生き残れないだろう。」
「・・・仲間を作るつもりはない。」
ハガネは他にも言いたいことがあったが、そう吐き捨てて、クエストカウンターに向かった。
ベルギットにもハガネが仲間を作る気がないことが登録情報からわかっていた。ハガネもベルギットがわかっていることを知っていた。
だからハガネは事実を述べることで、無理矢理話を終わらせたのだ。
ハガネが受けたクエストはモンスターの討伐依頼だった。
モンスターとは魔物や魔獣などと呼ばれるものの総称だ。
魔物と魔獣には蛾と蝶に近い区別がされているが本質的にはかなり似通っている。
冒険者ギルドの定義では魔物はモンスターと呼ばれるないものとは全く異なる見た目であるのに対し魔獣は通常の動物にない組織を付け加えたものだ。
ラードはこれまで見たことのない生物だったため魔物と間違えられたが一般的になった現在魔獣のくくりに入っている。
モンスターとそうでない動物の違いは実はない。動物は人間にモンスターが必ず持つものである魔石を持たないことを基準としているが、本当は動物は魔石を持っている。それが小さ過ぎたため人間に見つけられなかっただけだ。
この世界の未来の生物学では大発見として教科書に乗るだろう。
魔石とは魔力の増幅を行うことのできる物体ことされており事実そうであるが、これは附属的な効果に過ぎない。本当の魔石の効果は魂と肉体の結びつきを一時的に強くすることだ。
前に言ったが魔力とは魂と肉体の結びつきの力の余剰分である。結びつきが強くなれば、それにつられて余剰分も増え魔力が増幅されるように見える。
魂と肉体の結合が強くなった状態には肉体はどういう原理か強くなる。
これによる運動能力の高さがモンスターと動物の違いを大きくこの世界の人間に感じさせたのだろう。
ハガネが受けたクエストはゴルベアという魔物の10体の討伐である。
ゴルベアは危険度C2の魔獣である。
冒険者ギルドに国から依頼された常時依頼の一つだ。
常時依頼は王都周辺の森がモンスターで溢れかえらないようにするための依頼で、間引きに近い(目的的には間引きとは逆だが)ものだ。
ハガネは森に着くと冒険者ギルドに言われたような特徴の魔獣を探さなかった。
モンスターたちは森に入ってきた一見無防備なハガネに襲いかかった。
しかし、ハガネに近づく前に突然転び、そのまま息絶える。
【射撃術】というスキルである。
【射撃術】は弓や投剣術などを使う者が持っていることが多いスキルだ。
全ての能力を持つハガネも持っている。ただし、ハガネが射撃したのはモンスターの脳それ自体だった。
射程や障害物、必要なものなどの制限から解放された射撃という術は致命傷となる部位を直接攻撃する手段となった。
出会ったモンスターは全て殲滅だ。
ハガネは「ヒャッハァ!汚物は消毒だァ!」と叫びたくなったが、寸前で抑えた。
素材は欲しいので解体していき、アイテムボックスに片っ端から突っ込む。
モンスターのいらない部分が、痕跡として残った。それは血だけだったり、血すら抜かれた干からびた死骸だったりした。
スキルはそれができるようになった証であるが、それを出来ないのに手に入れた場合どうなるのか。こんな状況はハガネにしか起こらないが。
それは、スキルを手に入れる上で必要となる知識などを手に入れさせられ、それができるようになるのだ。
【解体】の場合、それは解体のための技術や知識となる。
ハガネはこのスキルを手に入れる副次的効果としてこれらを手に入れた。故にどこを切るべきかなどがまるで知っていたかのように分かる。
アイテムボックスはスキルの一つだが【アイテムボックス】のスキルは自分の周囲にアイテムを入れたり引き出せたりできる異空間への穴を作り出すスキルである。アイテムボックスはスキルが異空間の通称である。
【アイテムボックス】は使い方などが持ってない人間にはわからず修練できないのでほぼ確実に後天的に手に入れられない(ハガネなどの例外を除き)、だからギフトと呼ばれるこの世界の人々が生まれつき持っているスキルとして手に入れる。
しかし、入れられる量に限界はあるが超大量輸送を可能にするこのスキルは物語に出てくるような人物しか持っていない。
アイテムボックスの最も特徴的な点は入れたものをアイテムという形でリスト化することにある。
この世界の完全に客観的に全ての事象を判別できるシステムは物体も認識してくれるらしい。
ハガネはゴルベアをいつの間にか10体、狩っていたので帰ることにした。
トランスファーカードをクエストの証明にはを使う。ショーカードはモンスターの討伐履歴を誤魔化せるからだ、これらのモンスター討伐の実績は他者がシステム的に受け取ることができないが、実体化させて物理的に渡すことはできる。これを利用して他人が狩ったモンスター討伐実績を売買するということが裏では起こっている。
ユニークモンスター場合はショーカードで充分だ。
ハガネは売買に少しの魅力を感じたが、ハガネは結局依頼を遂行することにした。
モンスターを狩った実績を大量に所持し、依頼達成をできるようにする。それを時々依頼を受けては渡すことにしたのだ。
これにより、ハガネはその場で達成できる分だけの日数、かなり何をやっても邪魔されずバレない時間を手に入れたのだ。
ハガネらゴルベア討伐の報酬を受け取りとゴルベアだけ(・・・・・・)の部位の売却を行った。
ハガネは盗賊団討伐などによりかなり金を持っていたので、わざわざ疑われるようにゴルベア以外のモンスターの部位の売却などはしない。それを急ぐ必要はないのだ。
ハガネは宿屋に泊まることにした。本音を言うと馬車内の異空間が一番快適なのだが、地球世界の日本の若者がネカフェで寝るのとは違うのだから、毎晩馬車で寝れば不信に思われる。
今回の宿屋は王都ということもありかなり高かった。それに料理の味は飽食の時代の少年だったハガネにはどこか物足りないものだった。
といってもハガネに料理の開発をするつもりはさらさらなかったが。
薄い雲を透かして月が見えるこの世界の夜空に闇色の影が映る。
宿屋のセキュリティは鍵程度で、職業犯罪者にとってはそんなセキュリティなど無いに等しい。
そして、そんな職業犯罪者はハガネの部屋に侵入していた。
ハガネさんに職業犯罪者(変態)が忍び寄る!




