良き理解者である酒豪アガレウス・アグレイアスとボコる為の準備します
イーラからの問い掛けに、フルブルプルは迷う事もなく答える。
「……別に良いけど」
『頼む。知識が無いと流石に決められないからな』
「……知っての通り八王はフルブルプル、パイモン、サーヴナックルギナ、ヴァッサーゴと……イーラ様が粛清したヴァルヴァトスとナーベリウス。……そして未だイーラ様が面識の無い二体。
……序列『二位』の『アガレウス・アグレイアス』と序列『七位』の『アモン・グリモ=ノワール』。
……この八体の大悪魔から成る幹部。
全員が『ゴエ=ティア七十二柱』の大悪魔」
『魔王軍には、他にも七十二柱は居るんだよな?』
「……それはもう沢山。……でも七十二柱も魔獣や魔物に限りなく近い……言葉を介さない獣も数多く居るから……八王みたいな幹部に据えたり……部隊に編成したりは不可能な連中。……あくまで兵器を投入するのと同義……野生のモンスターとなんら変わらないから」
『……成る程。その二体の八王を含めて、コミュニケーションの取れる七十二柱全員の情報が欲しいんだが』
「……『ソレ』は出来ない。……悪魔同士の認識なんて何処で曲げられているか分からない。……イーラ様が自分の眼で確かめるべき。
……それにフルブルプルが知っているのはあくまで『創り出された時』の能力と……七十二柱が揃った際の真の序列だけ。
……大悪魔も進化するから……憶測を教える訳にはいかない」
『……そうだな、感謝する。当初で構わないが、意思の疎通が可能だった中で、側近と八王じゃなく今も魔王軍に居る奴の名前だけでも教えてくれ』
「……ん。……でも覚えきれないかもしれないし……メモしておく」
その言葉を聞くや否や、メイガイラは懐から紙とペンを取り出した。
「如何ですか?『コレ』が魔王様親衛隊であり魔王様のお世話を任されてきたメイドの力で御座います……っ!!」
メイガイラは勝ち誇った顔でアルを一瞥すると、褒めて欲しそうにイーラをガン見していた……。
『……ん。良くやったぞ、メイガイラ』
「イーラ様ぁ〜……!!勿体無きお言葉!!わたくしは至福に御座います……♡」
「別にメモなんて要らないよ〜?私がイーラ様を抱っこして連れて行くからね〜、私も七十二柱の事は理解しているから……♡」
「ぐ……」
メイガイラの握り締める悪魔のペンが文字通り悲鳴を上げている……。
「……あの二人は放置。……兎に角言う。
……序列『四位』の『ガミジェーナ』。
……序列『五位』の『マルバルバース』。
……序列『十一位』の『グシオラ・グーシオン』。
……序列『十四位』の『レランジェ・レライエ=ローレイ』。
……序列『十五位』の『エリゴス・アビゴール』。
……序列『十六位』の『ゼパルル・ルルゥジュ』。
……序列『十八位』の『バティーム・マルティム』。
……序列『二十八位』の『ベリドール・ベアルーダ』。
……序列『四十二位』の『ウェパール・セパール』。
……序列『四十八位』の『ハルゲンティ・シャルドネア』。
……序列『五十位』の『フルカウス』。
……序列『五十六位』の『グレモリー・ガモリエル』。
……序列『五十八位』の『アミィ・ハンナヴァール』。
……序列『六十六位』の『キマリス・キメリエラ』。
……多いけど此処ら辺。……モンスターに近い存在……話が通じない相手……王や側近にするには弱過ぎる柱……を抜かしたらこんな感じ」
『思ったより多いな。取り敢えず一体ずつ接触してみるとするか』
「私もそれが良いと思う〜。じゃあ誰に会いに行く〜?」
『……まぁ最初は「アガレウス」だな』
「いいよ〜♡」
「……!!メモを書き終わりましたわ、褒めて下さいませイーラ様っ♡」
メイガイラが満面の笑みで顔を上げるがイーラの姿は既に無かった。
「……もう行っちゃったよ」
「……あんのクソ悪魔ぁぁぁぁぁ!!」
アルへの怒りの声が魔王城に轟いた。
イーラを抱き抱えたアルは魔王城内の扉の前に立っていた。
「魔王イーラ様が来てるよ〜」
『……ノックじゃなくて口頭でいくのか』
――ギギギ。
重く軋んだ音を伴いながら大きな扉がひとりでに開く。
中を見ると奥に大きな椅子が置いてあり、筋肉質な老人が座りながら酒を呑んでいた。
「……うぃ〜っ。フハハ!!魔王様が来るとは思いもよらなんだ、酒呑んでてわりぃな!!」
『突然の訪問をした俺に非があるのは明白。気にするな』
(『鑑定』のスキルを有していない俺にも分かる、コイツは……強い)
「フハハ、太っ腹だなぁ!!流石はヴァッサーゴ共を許すだけの事ぁ有る!!フルブルプルに至っては側近みてぇに連れ回してやがると来たもんだ!!
……っと。自己紹介が未だだったな。
オレぁ序列『二位』、『アガレウス・アグレイアス』だ!!前は『八王』だったが、アンタの魔王軍だと如何なる事やら……って話をしてぇんだろ?
まぁ言いてぇ事は大体分かっちゃいるからな。
アンタのオヤジは――」
『――適切な人事をしていなかった。だろ?』
「フハハハハ!!その通りだよなぁ!!」
『……だがもう分かった。アガレウスは幹部クラスの強さだと。
話は此処からなんだが、八王は魔王城を離れて各地の拠点の城主を担って貰うつもりだ。魔王城は魔王城騎士団を作り守らせる。
何方にせよ無理強いはするつもりない。アガレウスには希望は有るか?』
アガレウスは問いに対し考える様子も見せずに即答する。
「オレぁよ、『魔王の配下』なんだぜぇ?配下の意見なんざ二の次三の次で構わねぇんだわ。アンタが決めたら遥か遠くの地で城主になろうとも、この城を守る役目になろうとも、果たしてみせるぜ」
アガレウスの真っ直ぐな瞳に信頼を感じるとイーラも即答してその忠義に応える。
『ならば引き続き『八王』を任せる事にする!!未だ拠点の位置はリュミエール王国以外に何も決まってはいないが、一番遠くにはパイモンを据える。
遠ければ遠い程狙われる危険も高く強い者が良い……。よってアガレウスは二番目に遠い拠点を任せる事になるだろう』
「フハハ!!それはそれは楽しみだ!!」
イーラはベリアデスの乱に参加しなかった理由を彼に会う前から聞こうと決めていたが、そんな気が失せる程に明朗快活な彼を気に入っていた。
そして彼の言った『配下』が全てなのだろう。
魔王が新しい魔王に成り代わった時点で彼はイーラの配下に下っていたのだ。
『アルの能力で何時でもアガレウスの拠点には行けるからな。美味い酒を定期的に供給してやる』
「そりゃ助かる!!ならさっさと行っちまいてぇくらいだ!!フハハ!!」
二人が部屋を出ていくと扉がゆっくりと閉まった。
「……元魔王。アンタの息子……いや。ありゃあ転生者。正確には違うんだろうが……立派にやってやがるぜ」
巨大な鷹の悪魔『アガトゥール』がグラスを持って来ると、其処に惜しみ無く酒をなみなみと注ぐ。何処か寂しそうにも見える表情を見せながら、グラスを合わせた綺麗な音だけが響いていた。
設定
アガレウス・アグレイアス
ゴエ=ティア七十二柱の序列『二位』の大悪魔であり『八王』が一体。筋肉質な老人。ドワーフを大きくしたような雰囲気を持つ。普段から黒い鎧を着用。髪は白髪混じりで灰色にも見える。癖っ毛でロングを後ろに流している。口髭と顎髭を蓄えている。一瞬で酔いを醒ます事が可能な為どれだけ呑もうと問題無い。
アガトゥール
アガレウスと共に居るオオタカ型の悪魔。全体的に青黒く、羽の先は炎のように揺らいでいる。




