魔王親衛隊の初任務として冒険者達のケジメをつけさせる為に冒険者の恋人や家族を完膚無きまでにボコります
「人間には使い道が幾つも有るのです」
アルの白い渦によって、失意のハルモニアは何処かへと移動させられた。
『……パイモンは魔王城に常駐が必須と考えていたが、これ程の戦力に加えてアルによる即時移動が可能となると、遠くの大国近くの拠点に常駐させた方が得策かもしれないな』
「我の『千里眼』は何処に居ようと魔王城周辺を視れます故、それもまた良き案でしょう」
『……パイモンは「八王」のまま、後に拠点を創った際にはその拠点を居城として魔王軍の繁栄に努めて貰う!!』
「……魔王様の御心のままに」
『因みに、パイモンがベリアデスの乱に参戦しなかった理由は何だ?これ程の戦力があれば魔王にもなれそうなものだが?』
「それは至極簡単な話。我が『弱い』からに他なりませぬ。
魔王に関しては、二人が強くとも、肝心の魔王になる我が弱くては……。たとえ二人が強かろうと、他の魔王軍全員が相手では……。
乱に関しては、前魔王様が殺された時点で異世界転生者が生まれたのは必然……。なれば静観が吉と思ったまで」
パイモンは淡々と答える。
「……魔王様は八王を八ヶ所の拠点に据えようとお考えの様子。なれば、魔王様と魔王城は如何様にするおつもりか」
『八王には文字通り八ヶ所の「王」として君臨してもらう。事実上の最高幹部だ。其々で軍を整備する。
それとは独立し、魔王城を守る「魔王城騎士団」と俺を守る「魔王親衛隊」を其々創る。
合計で十の組織を創る訳だ』
「……成る程、ソレは中々。なればやはり我は八王……一番遠くの拠点に据えるのが適任か」
『そう考えている。この地から一番遠くに据えるのは心苦しいが――』
「いえ。我は問題有りませぬ。お前達は如何だ?」
「わたくしも何一つ問題有りません。魔王様とパイモン様のご判断に従うまでで御座います」
「ん〜。私は親衛隊に入りたいな〜」
「――!?アル、何を――」
「だって〜。私の『空間』って魔王様の近くにあった方が良いと思うの〜。
パイモン様との視界リンクが出来るから〜、遠くからでも空間移動も出来るし情報も受信出来るし〜」
「し、しかし……」
「それに〜、べバエルはパイモン様と二人きりの方が嬉しいんでしょ〜?本当にショタコンなんだから〜」
「な――っ!?」
べバエルが真っ赤になっていた。
『……ショタコン……?』
イーラはパイモンを見る。
(……ショ……タ……?)
「……魔王様、もしかして我を女だと思――」
『って無いから安心しろ。』
「……ふーん?」
パイモンから感じた事の無いプレッシャーを感じながらもイーラは考え込む。
(確かにアルの能力は魅力的だが……一番遠方に配置するパイモンの戦力が減るのは……)
「そもそも!パイモン様はショタでは無い!ショタは少年だ!少年は見るからに男――はっ!?」
べバエルが自身の失言に気付くも時既に……。
「べバエルは後で我が直々にお灸を据えてやる」
「ひん……」
パイモンはアルの瞳をじっと見詰める。
「ねぇ……良いでしょ〜?
べバエルと私が魔王様から離れたら、異世界転移者が来た時に対応出来なくなっちゃうかもしれないよ〜?」
「……良かろう。
……魔王様、アルを宜しくお願い致します」
『……引き受けた。体制が整ったら先ずはリュミエール王国を落とし、八王の一体を据える。残り七箇所は大分後にはなるがな』
「やった〜、私も頑張らないと〜。
宜しくね〜?イーラ様……♡」
アルはフルブルプルからイーラを奪い取ると、抱き締める。メイガイラを超える程の柔らかさを感じるが、無心に努めていた。
「……イーラ様をお支えするのは……フルブルプルの役割」
「え〜、でもこれは『親衛隊』のお仕事だよ〜?
親衛隊って私しか居ないよね~?」
『……確かに今はアルしか居な――』
――むぎゅう♡
イーラは弾力で集中出来ていなかった。
「だからこれはアルの役目……♡
唯一の親衛隊なの〜」
「……っ!!……イーラ様……フルブルプルも親衛隊が良い」
『!?ま、待てフルブルプル、落ち着け。お前は八王だろう。未だ八王の面子も決めていないのに先に親衛隊から決める事は出来ない』
「……贔屓」
フルブルプルは膨れていた。
『ゴホン。
パイモン、コレでこの場は失礼する』
「はっ。……この後のご予定は?」
『ふっ、冒険者にも圧力を掛けてやらないといけないからな。
アル、先程の白髪の彼氏とやらが居る場所は分かるか?』
「うん〜、アレグロの彼氏の居る村なら何時でも飛べるよ〜?」
アルは先程アレグロに能力を行使した際に相手の居場所まで特定していた。これは同姓同名の個体との差別化を果たす為の能力そのものに与えられたモノだった。好意を抱く相手の出身地と現在の居場所までもを特定してしまう。
『なら今飛ぶ。
……勿論フルブルプルもだぞ?』
「え〜。も〜、しょうが無いな〜」
「……フルブルプルの中に殺意確認」
(そんな物騒なモンを確認も自己申告もしないで欲しいんだが……)
三人の身体を白い渦が呑み込み、一瞬で消えていた。
「……パイモン様、良かったんですか?」
「構わんさ。アルは『特殊』だからな」
「……?」
「遠くの居城に移り軍を動かすとなると、必然的にべバエルは副官のような立ち位置になるが……問題は無いか?」
「無論で御座います。わたくしは一生パイモン様にお仕え致します」
べバエルはアルが居ない為、心置きなくパイモンの頭を撫でくり回していた。
「……やっぱり我の事を子供扱いしてるだろぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」
パイモンは遂にブチギレた。
どの大国からも遠く離れた名も無き村。廃れ寂れていようと、其処に根付く人達にとってはかけがえの無い日常。しかし、『ソレ』は唐突に終わりを迎える。
「……?何だ?アレ……」
「白い……渦……?」
突如として宙に出現したソレに村人達は見上げる事しか出来なかった。
――そして、三体の絶望が降臨してしまう。
「あ、あれって……」
白い髪のメイドに抱き抱えられた『赤子』。それだけで『アレ』が誰なのかを理解してしまう。
『――我が名は魔王イーラッ!!数日前に宣言した通り、リュミエール王国への侵攻までは何もせずに居ようと思っていた……しかしッ!!パーティ「鎮魂歌」を名乗る五人組が愚かにも我が魔王城への侵攻を試みた!!
我々は心苦しかったが、正当な防衛の為に彼ら五人を亡き者にしたッ!!』
イーラは前回同様全人間に対して念話を行っている。正確にはハルモニアは未だ生きては居るのだが、死んだ事にした方が都合が良い。
『しかし、「コレ」では国の侵攻は防げようとも冒険者達個人個人による侵攻は抑制する事は叶わない!!我々魔王軍は苦しい決断を迫られたが、仲間の為に決行せざるを得ない!!
我が魔王城及び魔王軍に対して侵攻・攻撃した冒険者は殺した後……恋人、家族の他、親しい人間を皆殺しにする事を此処に宣言するッ!!
此度は五人居たが、仲間を裏切り、且つ利用していた悪しき冒険者、僧侶「アレグロ」の親しい者だけを見せしめとして処刑するッ!!』
イーラの宣言と同時にフルブルプルは村の外側にハニーイエローの雷の結界を張り巡らせる。
アルの瞳にハートが浮かび上がると一人一人凄まじい速度で鑑定していく。
「姉発見〜。弟発見〜。母親発見〜。彼氏発見〜」
白い渦で即座に確保すると一箇所に集める。
「ぐ……な、なんで俺が!?アレグロの過ちは俺にはカンケーねぇだろ!?家族が償うべきで、俺は付き合ってただけで、彼奴がそんな奴だなんて知らな――」
「ハルモニアに色仕掛けさせようとしていたのは……君だよね〜?」
「……な、なんの事か分かんねーよ!!俺はこんなとこで死ぬ訳にはいか――
――は?」
アレグロの彼氏は視界が消えた。一瞬だけ白く染まったかと思ったら、次の瞬間には真っ暗闇の闇の中に居た。
「ひっ……め、目が……目が……ッ!!」
アレグロによく似た姉は恐怖で失禁する。妹の彼氏の両の目が白い渦に呑み込まれていた。
「嘘吐きな彼氏さんは〜、失明してね……」
――ぶちゅ。ぶちゅ。
アルが両の手の握り拳を思い切り握り締めると君の悪い音がして、指の隙間から体液が流れ落ちる。
「――ッ!!!??グギャァァァアアアアア!?
い、いでぇぇええええあああ!!目がぁぁああ!?」
暗闇と思っていたのはアルの掌だった。彼女は彼氏の両眼を手中へ移動させると握り潰してしまったのだ。
「君達は全員……、私達から罰を与えられるべき存在なの……」
四つの白い渦が現れると――
――四つの心の臓が姿を現した。
「……ッ!ちょ、まさか私のじゃないわよね!?
……ッッッ。こ、鼓動を感じない……」
アレグロの姉は自身の左胸を幾ら触っても鼓動を感じず、焦り、激昂した。
「ふ、フザケてんじゃないわよッ!!アレグロとあのクソ彼氏がやった事ならアタシは関係無いわよねッ!?」
『……小娘、貴様誰に口を聞いている?』
「ひっ!?ちょっ、待っ――」
イーラが手を下すよりも先に、アルが姉の首元に手を空間移動させると、一瞬で喉を掻っ捌いた
「がッ……はッ……ッ!?」
「喋れなくしただけだよ〜。
ほら……一番若い君にチャンスをあげるよ〜」
アレグロの弟を指差すとアルは悪魔の笑みを浮かべる。
「君が四つの心の臓から一つを選ぶんだよ〜。
選んだ心の臓を君自身の足で踏み潰してね〜?出来るよね……?」
選びやすいように、弟の目の前に四つを並べる。
「はぁ……はぁ……はぁ……ッ」
弟は極限状態ながら、彼氏のものだろうと一番大きな心の臓を指差す。
「コレだね~?じゃあ……踏み潰して〜♡」
弟の目の前に心の臓を置く……。弟は足を上げると……思い切り踏み抜く。
――グチャ。
「――ゴプッ」
心の臓を踏み潰した気持ちの悪い感触から一転し、絶望で感触等即座に忘れていた。
自身の母親が吐血し、痙攣し、やがて動かなくなってしまった。
「……っ!!か、母さん!!そ……んな……」
「何で悲しんでいるの〜?自分のじゃ無かったんだよ〜?大当たりなのに〜」
アルは心底不思議そうに首を傾げる。
「ほら〜、次はどれを踏み潰すの〜?」
「っ!?ま、まだやるの!?無理だよっ!!」
「だって〜、あと三つ有るんだよ〜?
君が無理なら……こうするしか無い、かな」
アルの周りに無数の白い渦が顕現し、一つ一つから指が出て来る。
「なんだありゃ――って俺の指が無ぇ!?」
「あたしのも無いわ!?」「ワシもじゃッ!?」
他の無関係な村人達の、指。老若男女様々な人達の大切な指。
「左手の薬指って……大切だよね〜?
……っ♡」
アルは一切の躊躇無く……片手でイーラを抱いたまま、もう片方の手の指で、一つの指の爪を掴むと思い切り剥がした。
――べりんっ♡
「ギャァアアァァァアアアアアッ!!イダッァァァアアアアッ!!」
アルによる恐怖のゲーム……。この光景はパイモンによって世界の至る場所に映像が投影され、大国や他の村の村人達も見ていた。
「ほら〜。君が早く心臓を選ばないからだよ〜」
三つの白い渦が突然消えた。指が空間を移動しているのに、白い渦が消えた……。それはつまり空間が遮断された事を意味している……。
――ブシャッ!!
――ブシューーーッ!!
――プシュゥゥゥゥウウウウッ!!
三者三様、薬指との空間が遮断された所為で指が千切れた三人は悲鳴にならない悲鳴を上げのたうち回る。二度と結婚指輪を着けられない……。
「ああ〜、またまた君の所為だよ〜?」
「ま、待って!!選ぶからっ!!こ、これ!!」
「やっとだね〜、はいどうぞ〜♡」
弟は焦り、テキトーに選んだ心の臓を思い切り踏み抜くッ!!
「――ゴプッ」
弟は、踏んだ瞬間に自身の心の臓だと分かった。感じた事の無い痛みを感じたからだ。しかし、恐怖で踏み抜いた足を止められる筈も無く、激痛と共に踏み抜いた末、今こうして痙攣しながら横たわっている。
地面に着いた頬が血に濡れ温かさを感じる筈なのに……身体は冷えていく……。
「二つ目で引いちゃうなんて〜。盛り上がりに欠けちゃうな〜」
『……見せしめだ、アル。
全ての白の渦を切断しろ』
「な……待って下さいよ!!アレグロの出身の村だからって何故我々がこんな仕打ちを――」
『キサマ等も魔物に襲われたら魔物全体を憎み殺すであろう?我々は手を出していないのに、魔王城を攻め込んだリュミエール王国と鎮魂歌は一体何なのだ?先に手を出したのは人間だ。ならば我々が同じ事をやり返すのは正当な権利であろう。
指の一本で赦してやると言っている。せめてもの譲歩だ。皆殺しじゃないだけ感謝しろ。
――やれ』
「うん……薬指ばいばい〜♡」
村人全体の薬指が切断された。泣き叫ぶ声が阿鼻叫喚だった。
『アレグロの姉と彼氏は有効活用させて貰おうか。未だ未だ使えそうだ』
アルが二人を白の渦で魔王城へと運ぶ。
『理解したな、人間共ッ!!たとえ国じゃなく冒険者やパーティだろうと!!その罪と罰は本人だけでは済まない事をしかと心得よッ!!』
イーラが言い終わると白の渦に呑まれ、三体は村から姿を消した。
設定
魔王親衛隊
イーラが構想しているイーラ直属の部隊。第一号としてアル=バーラム・アバリームが入隊した。移動系能力者は必須の構想だった為イーラとしては有難い打診だった。メイガイラは入隊させる予定だったが、あの場に居なかった為に第一号を逃している。フルブルプルに関しては八王と悩んでいる。
魔王城騎士団
魔王城に常駐する騎士団。主に防衛だが総力戦のようなものが行われる場合には勿論出陣する。八王は確実に空席が有る為、魔王軍全体の戦力や実力で配置を決める必要が有り難航している。
アレグロの彼氏
細マッチョの色黒農民。ハルモニアを利用する計画立案の張本人。
アレグロの姉
妹と違い性格の悪さが前面に出ている悪役令嬢に居そうな強気な顔。実はアレグロの彼氏の本命で交際していた。
アレグロの母親
夫を早くに亡くしアレグロの仕送りで生活していた。彼女以外誰も知らないが、アレグロの彼氏の慰み者。
アレグロの弟
アレグロの彼氏から邪魔者扱いされていた。彼氏への殺意が心臓踏み抜きに繋がっている。




