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異世界に転生したら鑑定スキルを賜ったので悠々自適なのんびりライフを目指して頑張ります

(目が覚めると、私は温かい腕の中に居た。


 両親よりも若そうな男女……。これが新しいお父さんとお母さんなのかな……)


 青系の髪色の男女は、同じく青い髪の赤子を幸せそうに見詰めていた。


「メイルちゃ〜ん♡パパでちゅよ〜♡」


 父親らしき人物が赤子に口付けをしようと顔を近付けるが、赤子は両手で頬を押して拒絶した。


(い、いくら父親でも流石に嫌よ!?)


「め、メイルちゃん!?」


「ほら、パパのチューは嫌だもんね〜♡」


 母親らしき人物は赤子を父親から奪い取ると、庇うように父親に背中を向けて赤子をあやしていた。


(それにしても……『メイル』、ね……。本当にもう私は湖海 葵じゃないし、湖海 葵は何処にも存在しないのね……)


 メイルは母親の顔をじっと見上げる。とても若く美しい女性だった。


「んー?どうしたのかしら?」


 優しい母親の笑顔を見ていたその時、生前の葵の時には存在しなかった感覚。それなのに前から知っていたかのような、不思議な感覚を覚えた。




 ――それは『対象を「鑑定」する』という感覚。賜り物の使い道に関してはエリスが教えてくれたけれど、使い方に関しては説明されていなかった。時間が無くて聞けなかったが、そもそも聞く必要も教える事も何も無かったのだ。何故なら今のメイルにとっては『鑑定』する事は息をする事のように容易に行える事なのだから。



(……『鑑定』っ!!)


 鑑定を発動すると、メイルの脳内に母親の情報が羅列されていった。それは履歴書のように詳しく、SNSのプロフィールのように分かりやすかった。




 鑑定結果

 名前 カンナ

 年齢 24

 性別 女性

 種族 人間

 出生地 ラクス共和国

 能力 水

 能力詳細 水を操る。日常生活で役に立つ程度。

 属性 水

 強さ F−

 備考 何処にでも居る普通の人間。ロッドの妻。メイルの母親。

 生い立ち 『ロッド』と結ばれた後子供を身籠り出産。




 生い立ちの欄は脳内でスクロールが可能で、生まれてからの彼女の人生が事細かに記されていた。カンナの優しい表情を見れば明らかなのだが、彼女が善人だと分かりメイルは安堵する。


 メイルは警戒していたのだ。あくまで、この異世界転生は『罰』なのだから。


 メイルはカンナの肩越しにロッドの顔を見るとロッドも鑑定する。




鑑定結果

 名前 ロッド

 年齢 25

 性別 男性

 種族 人間

 出生地 ラクス共和国

 能力 反射速度

 能力詳細 反射速度、視力、動体視力の向上。

 属性 光

 強さ F

 備考 何処にでも居る普通の人間。カンナの夫。メイルの父親。反射を活かした釣りと漁で生計を立てる漁師。

 生い立ち 『カンナ』と結ばれた後子供を授かり父親になる。




 生い立ちのスクロールを一通り終えると此方も善人なのが分かりメイルは安心し息を吐く。赤子だからか、鑑定を2回も行使した所為かは分からなかったが、メイルは強い眠気に誘われて夢の世界へと落ちていく……。


「あら、寝ちゃったのね」


 カンナは小さな声で囁くと、メイルの額に口付けを落とす。


「あっ。ママ狡いよ〜」


 ロッドも小声で不満をぶつけていた。




 メイルは眠りながらにも、この幸せな家庭に転生出来た事を幸福に思っていた。前世の両親はこんな愛を与えてはくれていなかった。今と同じ年齢の頃には与えてくれていたのかもしれないが、赤子の頃の記憶はメイルには、葵には存在する筈も無い。


 こんな幸せが何時までも続いていく事を彼女は願っていた……何気無い日常も彼女にとってはとても幸せなのだ。






 彼女は次の日から、色々なモノを鑑定した。人間だけでなく家具や食器等も鑑定する事が出来た。金属や材質等も元居た世界とは違うようで、聞き覚えの無い名前が羅列されていた。


 数回鑑定しては疲れて眠りを繰り返し、メイルは知識と鑑定結果を着実に増やしていった。


 得られた鑑定結果は脳内のライブラリに記録され、何時でも好きな時に引き出せる。ライブラリの鑑定結果は自動更新はされず、同じ人物を鑑定すると一覧として全てが見られる仕様になっていた。




(……とても便利な能力ではあるけど、やっぱり他人の鑑定結果が欲しいのよね)


 両親は親バカで過保護だった為、外に連れて歩く事をあまりしない。漁師として港町側、ラクス共和国の外周付近に住んでいる為人も少なかった。外周全てが港町の為、漁師達は互いに等間隔で間を設ける事で自分のテリトリーを主張していたのだ。


 大きな買い物は中央の都市部へ行くのだが、メイルを身籠った頃から買い物はロッドが担当しており、メイルもカンナも外出する機会自体がほぼ無かった。それでも健康の為にと家の前には抱っこされて出るのだが、漁師の縄張りの間隔の所為で人は現れなかった。


 それでも、見えている植物や空を優雅に飛ぶ鳥など、鑑定出来るモノは片っ端から鑑定していく。


 鑑定を続けた事で徐々に能力を使える回数も増えていった。


 鑑定だけでな無く、両親の会話からも情報を得ていく。




 メイルは自身の口で喋る事も出来ず、歩く事も出来ず、未だ両親が居なくては生きる事が出来ないが、誰も知らない内に、着実に進化し成長していた。




(私は前世のような失敗なんてもうしない……!この能力を上手く使って、のんびりまったりライフを謳歌してみせる……っ!!)


 勉強と習い事、両親からのプレッシャーで追い詰められていた彼女にとっては切実な望みだった。

 設定


 カンナ

 メイルの母親。ターコイズ色の髪はゆるくカールしている。後ろを結びオニオンヘアにして前に垂らしている。

 能力は『水』。水を操る。日常生活で役に立つ程度のモノだが家事には重宝される。


 ロッド

 メイルの父親。紺色の髪。前髪は目に掛かる程度。日焼けで肌は褐色。漁で鍛えられ筋肉質の細マッチョ。

 能力は『反射速度』。反射速度の向上の他、それに伴い視力と動体視力も向上。身体能力事態に影響は及ばさないが、他人よりも早く反応する事で身体能力の低さをカバー出来る。しかし能力としては弱い為戦闘向きでは無い。この能力を活かした釣りが得意。

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