真の序列『十位』以上が集まっている魔王の間で異世界転移勇者より先にイケオジ大悪魔にフルボッコにされないか心配しながらも会議は続きます
(真の序列十位以上が揃っているだと……ッ!?
この世界にゴエ=ティアの大悪魔は全員居ないと聞いていた。つまり……。
あのガルプルギスでさえ十位では無く、コイツ等は全員がガルプルギス以上の強さを誇るという事……。今の俺じゃ手も足も出ないレベルの大悪魔達……か)
イーラは内心焦っていた。ベリアデスの乱とは違う。今この場でもしこの大悪魔達に不要と判断されてしまえばイーラは簡単に殺されてしまう可能性があった。
「イーラ様安心して……?私が逃がしてあげられるから……♡」
アルにはバレバレだった。唾液を強制的に呑まされた事で繋がりが強くなっていた二人は感情の共有も強固なモノへと変化していたのだ。
(……しかし、となるとあのアミィも十位以上の実力者なのか)
アミィと視線が交わるとアミィは耳まで真っ赤に染まっていた。それ処か髪の先がメラメラと燃えている……。
「……しかしよぉ?俺らをバラバラにしちまって良いのか?」
顎髭のイケオジは、くっしゃくしゃの手巻き煙草にマッチで火を着けると、マッチの火を手で振って消しながら魔王を真っ直ぐに見据える。
「あの異世界転移のガキは明らかに鍛錬が足りてなかった。リュミエールのガキが同じ力を使ってサーヴナックルギナのヤツと戦ったみたいだが、所詮はこの世界のガキだ。
『賜り物』ってのは異世界の人間が扱うからこそ強い。あんなのは紛い物に過ぎない。
此処に居るヤツらはバカじゃない。全員気付いてるだろうから言っちまうが、アンタも異世界人だよな?
アンタと同レベルのヤツが二人現れただけでアンタは負けちまうんだ。
しかも能力には相性ってモンがある。アンタの賜り物は能力じゃなく『魔王としての地位と実力』なんだろうが、闇と光のハイブリッドだろうとそれへの特効を持つ能力者には手も足も出ない。
戦力をバラけさせるのは得策じゃないぞ。
自慢じゃないが俺達なら女神だろうが殺せる。だがこの世界各地に散らばり、各個撃破される可能性は充分に考えられる。特効、奇襲、裏切り、何でもな。ソレでもアンタはこの方針を変えるつもりはねぇのか?」
『変えるつもりは無い』
イーラは視線を外さずに即答してみせる。
「……ふぅー」
顎髭のイケオジは煙草の煙を吐く。
「アルの力を行使したとして、八箇所……魔王城とアンタを狙われたら十箇所ある訳だが、その十箇所を同時に攻撃されても勝ち切れるのか?今や魔王軍は人間全員の共通の敵だぞ?
パイモンのヤツの千里眼を当てにしてるならソレは愚策だ。アイツから聞いてるかは知らねぇがアイツの千里眼には限界がある。扉や窓が閉まっていたら中は見通せない。幾ら近くに拠点を作り圧力を加えようと、水面下で既に動いているだろう。
俺達が一箇所に居れば全人類が侵攻して来ようと返り討ちに出来る。異世界転生者や異世界転移者が何人来ようと誰かが弱点を突ける。
俺は何もせず待つべきだと思うが。仮に拠点を作るにしても、真の序列十一位以下を派遣すべきだ。俺達全員を騎士団にしろ。そして侵攻はせずに魔王城の守りを鉄壁にする。
アミィとウェパールは此処に残すべきだ。ヘリオスも騎士団で良い」
言い終えると再び煙草を口に咥える。
「『マルバルバース』は随分と心配性でありんすね?一箇所に固まっていても女神と異世界人が多数攻めてきたら一大事でありんしょう?アルの力で助けに向かわせれば良いだけでありんす」
「……えっと、私もそう思います」
アミィはおどおどしながらも自分の意見をしっかり述べる。
「はぁ。確かにアミィもウェパールも、他のヤツらもアンタに影響されて好転してるのは理解してるんだ。だがな、アンタがベリアデス達を殺したように、俺達も死ぬ存在だって事を忘れるなよ?」
『……忘れて等いないさ。アイツらの犠牲も無駄にするつもりは一切無い。
此処にずっと居ても俺達は強くはなれないし何時かは滅びを迎えるだろう。種族の存続には繁栄も必要なんだ。この計画が上手く行けば、魔王軍のエリアは大きくなる。魔王城と旧リュミエール王国の範囲は特に大きく、な。
だがマルバルバースの意見も尤もだ。ならば序列上位は無条件で騎士団に据える、という事にすれば問題無いだろう?』
(……アル、序列の上位は誰だ?)
心の中で問い掛けるだけでアルには伝わる。それは逆もまた然りだった。
(耳打ちしたかったのに〜。それは――)
「おい。アルに聞こうとしても無駄だぞ」
『――!!』
「何の為に『真の序列』が有ると思ってるんだ?ちゃんとした力の序列があんなら元々の序列なんか要らないだろ。態々そっちを名乗ってる意味を考えろ。アンタが魔王だろうと、俺達の上に立つ存在だとしても、真の序列はほいほい教えて良い代物じゃない。
そもそも俺達は本人の意思に反して真の序列の詳細の開示は出来ないようになっているんだがな」
『……マルバルバースよ。貴殿の言い分は十二分に理解し、共感もしようぞ。だが、我は貴殿の考えには些か賛同しかねるな』
四ツ腕の鎧の騎士は下側の腕を組みながら物申す。
「……言い分を聞いてやる、『エリゴス』」
『単純な話だ、マルバルバースよ。彼奴らの賜り物次第では魔王軍が一箇所に居るのは得策では無いという事。この魔王城一帯を消失させる程の力が迫った時、何も出来ずに我々は敗北する事になろうぞ』
「……で?」
『魔王殿の案ならば、事前に敵の動きを察知する事も出来ようぞ。少なくともこの魔王城にて動かずに居るよりは……な?』
沈黙。誰も喋らず、動かず、静寂が続いた。眼を閉じ、煙草を吹かしていたマルバルバースが、煙草を完全に燃やした。
「……はぁ。分かった。俺もアンタの案に乗る。
だが完全に八王について賛成した訳じゃない。だから魔王城に残らせて貰う。普通の兵隊だろうが構わない。俺は――」
『分かった。マルバルバース、お前は魔王城騎士団の幹部に任命する』
「……は?」
『此処に居るのは全員真の序列の上位、全員を幹部にするのは決めている。魔王城に残ると言うなら騎士団の幹部は確定事項だ』
「……変わってるな、アンタ」
マルバルバースは呆れた風に新たな煙草に火を着けるも、口許はニヤけていた。
設定
マルバルバース
ゴエ=ティア七十二柱の序列『五位』の大悪魔であり、真の序列の『上位十位』の一体。イケオジ。顎髭が生えている。ややタレ目。赤茶髪は真ん中分けで髪は癖っ毛。真ん中に一本束。地面に着くほど長い髪を後ろで束ねている。白シャツはボタンを開け、ネクタイはだらしなく巻いている。カッチリとした昔の王族のような黒ベースに赤のナポレオンジャケット。下もセットアップで同色。赤茶の革靴。くっしゃくしゃの手巻き煙草を常に100は常備している。
エリゴス・アビゴール
ゴエ=ティア七十二柱の序列『十五位』の大悪魔であり、真の序列の『上位十位』の一体。四ツ腕の鎧の騎士。頭、胴、脚の鎧は白い。右の腕はオレンジと水色。右肩の腕は赤と黄緑。左の腕は黄色と紫。左肩の腕は茶色と緑。




