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人間達をボコる為に幹部候補との会議は延々続くけど個性が強過ぎて悩みます

『さて、他の者は如何だ?』


「それなら僕が」


 ツバが有り茶色の鳥の羽を刺している、暗いカーキ色のバイカケット帽を眼深に被った狩人風の大悪魔が口を開いた。


「僕は『レランジェ・レライエ=ローレイ』。見ての通り狩人さ。狩りが僕の十八番(おはこ)なんだけど、獲物を狩り捕るのは攻めだけじゃなく罠を張り巡らせる守りも得意としていてね?騎士団として魔王城の守りを固める事も可能だよ。


 残りの七箇所の拠点予定地に森が有るなら、僕も役に立てそうだと思うけれど」


 全身暗いカーキ色の命のやり取りを常にしている狩人とはイメージが掛け離れた凛とした声色と優雅な所作でレランジェは提案を持ち掛けた。


『森か……アル、如何だ?』


「大陸の南側に大きな森が有るよ〜?北の極寒のエリア以外は自然豊かかも〜」


『そうか、ならレランジェを南側に配置するのも良いかもな……城の近くに罠を仕掛けるとヴァッサーゴのモンスターも罠に掛かる危険が――?


 ……極寒のエリア?』


「ずっと雪が降ってる寒い処〜。『グラキエース帝国』っていう大国も在るから、近くに拠点を作らないとだね〜」




 イーラは完全に失念していた。この世界の地理を何一つ理解していなかったのだ。


『……この中に寒さに強いやつは……?』


「残念だけれど僕は無理だよ?雪の中で行う狩りも存在するけれど、僕には専門外さ。そもそも雪の中じゃ僕のこの緑色の服は目立ってしまうし、この服が無ければまともに狩りが出来ないからね。


 ……アガレウス様なら問題無いんじゃないかな?炎もお使いになられるからね」


 彼等はゴエ=ティアの大悪魔。冬の気候や雪程度、如何という事は無いのだが、遠く・寒く・何よりグラキエース帝国は人間の国でもトップクラスの戦力。全てがあまりにも面倒過ぎて誰も志願しなかった。


『……なら北にはアガレウスを配置するか。


 他に特殊な気候や地形の場所は在るのか?』


「砂漠は在るけど近くに大国も無いし拠点を作る利点は無いかな〜」




「……魔王様」


 終始、黒に鮮やかな青い花弁の模様の煙管(キセル)を吹かしていて、辺りに青白い煙が立ち込めていた花魁(おいらん)風の女性が左腕の袖で口許を隠しながら進言する。


「わっちは『ウェパール・セパール』と申しんす。


 大陸の中央からほんの少しばかり東へと参りんすと、周りの全てを巨大な湖で覆われている大国、『ラクス共和国』が在りんす」


『ほう……』


「そこで、わっちを八王にしておくんなんし。わっちがその湖の底に拠点を作りんしたら、ラクス共和国は下手に動けなくなりんしょう?


 拠点は複数作りんす。その内の拠点の一つを水面から出しんしたら、水中で呼吸や活動しんす事が叶いんせん方々もわっちの配下になる事が叶いんす」


『……。成る程、全員の話を聞いてからにはなるが、ウェパールの意見は理解した』


「有難うござりんす、感謝致しんす」


 袖で隠していた薄青い紅の口許は緩く弧を描き、その妖艶な表情にイーラは思わず頬を赤らめる。


「イーラ様は女性なら誰でも良いんだね〜」


『ゴホン!!さて、他には如何だ?』




「ワハハ!!!ならワタシが!!!『バティーム・マルティム』だ!!!能力は『腕力』!!!純粋な腕の力だけならサーヴナックルギナ様をも凌駕するぞ!!!ワハハ!!!」


 気の良いお姉さんという人間のような見た目の普通の女性だが、腕をブンブン回しただけで凄まじい風が巻き起こる。


『成る程、シンプル故に利用しやすいな』


「ムムム!!!ワタシを利用だと!!!魔王様はケダモノだな!!!ワハハ!!!」


『よし、次は――』




「こんなの意味あんの?」


 一人の少女が不機嫌そうに机に脚を放り投げる。 


「あーしには意味があるとは到底思えない。真の序列順にさっさと任命した方が早い。時間の無駄よ」




 ――ドンッ!!!!


 キマリスが机を叩いて立ち上がる。とても興奮し鎧からは荒い鼻息が漏れ聞こえていた。


『「ハルゲンティ」ッ!!貴様、我ガ主ニ何トイウ無礼ヲ……ッ!!コノ キマリス ガ貴様ヲ粛清致スッ!!』


「あーしとやるっての?そんな鎧であーしの黄金の鎧に太刀打ち出来るって本気で思ってるんだ?鎧の中はお花畑なのかな?」


『――ッ!!モウ許サヌッ!!』




 ――。


『……?』


 キマリスとハルゲンティと呼ばれた少女の動きが止まる。




『……コノ キマリス。我ガ主ノ前デ無作法ヲ ハタライタ。ハルゲンティ、済マヌ』


「……あ、あーしも態度悪かったわ。ごめん……」


 キマリスが静かに座ると、ハルゲンティも机から脚を下ろした。




「『コレ』が俺の能力、『敵意改竄(かいざん)』だよ、魔王様。敵意を好意に自由自在に変えちゃうんだ。逆は出来ないんだけれども。


 名乗るのが遅くて申し訳無いね。俺は『グシオラ・グーシオン』。能力はコレだけなんだけど普通に戦闘も出来るよ」


 金髪真ん中分けの正統派イケメンは髪を掻き上げながら爽やかに言葉を紡いだ。


「イーラ様絶対グシオラ様を遠くの拠点に追いやろうとしてる〜」


『……アルの思い描く理由とは違うが、近場の大国の近くに拠点を作り魔王軍への敵意を改竄すれば人間共の戦力を大分減らせるな』




「あ、あの、魔王様……」


 ハルゲンティがチラチラとイーラの顔を見ながらモジモジしていた。


「……あーしは『ハルゲンティ・シャルドネア』。能力は『金』。生み出す事も人を金に変える事も出来るわ」


『ほう。ならば後で金を作っておいてくれ』


「構わないけれど……何に使うの?」


『その内大国に潜り込む。その時の資金だ。ハルゲンティの能力は八王、若しくは副官に相応しい物だ。確定で魔王城を離れる事になるからな』


「ふ、ふーん?」


 ハルゲンティは嬉しさを隠し切れていなかった。今此処に居る者達は全員、前魔王の際には力を認められておらず、一兵隊だったのだ。


「主さん、凄う嬉しそうでありんすね」


 ウェパールが青白い煙を口から吐きながら愉しそうに微笑んでいた。


「なっ……別にあーしは普通なんだけど?」


「そうでありんすか?」


「っ!そ、そもそもあんたもやる気満々じゃないの!今まで魔王軍であんたがこんなにやる気になってるの見た事無かったからさっきは驚いたんだけど?」


 ハルゲンティは話題を変えようと早口で捲し立てた。


「……この魔王様はわっち達の事を真剣に考えてくれておりやす。その気持ちに真っ直ぐに応えたいと思っただけに御座いんす。他に意図等は一切御座いんせん」


「……ふーん」




「さて、此処に僕達が何時までも居ても魔王様は即決される訳でも無いんだ。能力と希望を告げた者から退室した方が魔王様も考えやすいと思うのだけれど」


 レランジェは何かを気に掛けるように告げるとハルゲンティに目配せをする。


「そ、それもそうね?魔王様はそれで良いかしら?」


『あぁ、どっちでも構わないぞ。残りたい者は居ても良い』


「なら僕は失礼するよ。何処に配属されようと全力で魔王様をサポートしてみせるからね」


「それじゃあーしも帰るわ。ワイン呑みたいからね」


 レランジェとハルゲンティは早々に魔王の間を出て行った。




「では、俺も失礼するとしよう。バティーム、寝ているフルカウスを部屋まで運んでやってくれないか」


「ワハハ!!!ワタシに任せなさい!!!」


 バティームは寝ているフルカウスの頭を鷲掴みにするとそのまま出て行った。グシオラは爽やかな顔で手を振ると紫色のローブを翻して退室した。


「グシオラ様はもう八王で遠くに飛ばされるの決定したね〜。今のがトドメになっちゃった〜」


『未だ言うか……』


「安心してイーラ様、私は顔より中身でイーラ様を選んだよ〜」


『赤子に顔もクソも無いだろ』




『コノ キマリス ハ残リマスッ!!我ガ主に害ヲ及ボス者ガ居ナイトモ限ラナイッ!!』


「イーラ様には私がついているから問題ないよ〜。親衛隊の『一』だからね〜」


『グッ!!何トイウ魅惑ノ響キ……ッ!!コノ キマリス……ッ!!騎士団ガ無理ナラバ是非親衛隊ニッ!!』


「だから親衛隊はもう充分だよ〜」


『シカシナガラッ!!我等ガ主ヲ守ル為、ダケナラバ不要デショウ……ダガシカシッ!!親衛隊トハ我等ガ主ト共ニ侵攻モ行ウッ!!万ガ一、異世界転生勇者ヤ異世界転移勇者ガ複数人デ襲ッテキタラ如何スル ツモリカッ!!』


「逃げる〜♡」


『賜リ物次第デハ ソレモ叶ウマイッ!!』


 二人の会話を聞きながらイーラは顎に手を当てながら考えていた。




(確かにどんな能力が飛び出すか分からない。コレはゲームの世界に似てはいるがゲームなんかじゃない。死ねば本当に終わるんだ。俺は実際に今この世界に生きているんだ。俺が死ぬ事で、今まで助けてくれた皆を危険に晒す事なんか出来る訳が無い)




「わっちも親衛隊は多いに越した事は無いと思いんす。是非とも増員しておくんなんし。わっちは心配でありんす」


『……既に三人居るが、攻めるとなれば騎士団からの助力もある。となると普段から常駐している騎士団に人員を割くべきだと考えるが』


 議論は平行線だった。




「カッカッカッ。ソレは後々魔王様が考える事。我々は只々魔王様に従えば良い」


 馬の骨を被っているような異形の大悪魔が口を開いた。


「我は『ガミジェーナ』。能力は『罪人(つみびと)蘇生』……罪人を蘇生し我が傀儡とする能力。罪人とは我に対しての罪に限定される。コレは我個人だけでは無く魔王軍全てに対して適応される。


 ……我が伝える事はもう無い。では我も失礼するとしよう。少々我はこの場には場違い故」


 ガミジェーナはそれだけ告げると出て行った。




『……場違いってどういう意味だ?』


「……?魔王様、この人選はそういう事じゃ無いのでありんすか?」


『……?』


『オォッ!!素晴ラシイッ!!何モ知ラズニ我々ヲ選ビ出シタトハッ!!流石デ御座イマスッ!!』


「魔王様……」


 アミィは憧憬(しょうけい)の眼差しを送っていた。




 アルが手を添えてイーラにこっそりと耳打ちをした。それを聞いたイーラは絶句する事となる。




「今此処に居るのは真の序列『十位』以上の大悪魔だけなの〜♡」

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 ガミジェーナ

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『四位』の大悪魔。四位だが真の序列では無い。純白の馬の骨を被っているような異形の姿。喋る時には馬の骨も動いている。黒のローブで顔以外は隠されている。

 能力は『罪人(つみびと)蘇生』。罪人を蘇生し傀儡とする。罪人の定義はガミジェーナとガミジェーナが属する組織及び上官や部下等全てに対しての罪を指し、『生前に魔王軍に直接的に・間接的に牙を向いた人間を蘇生し操る能力』。


 レランジェ・レライエ=ローレイ

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『十四位』の大悪魔。見た目は狩人。ツバが有り茶色の鳥の羽を刺している、暗いカーキ色のバイカケット帽を眼深に被っている。同色の半袖のシャツにショートパンツとスカート。暗い茶色の肘前までのグローブに膝下丈のブーツ。全てがアースカラーでギリースーツのように森と同化する。

 狩人らしからず、スカーフで顔の下半分を隠しているが美形で所作も美しい。


 バティーム・マルティム

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『十八位』の大悪魔。気の良い人間のお姉さんのような見た目。黒髪でタレ目。彼女から見て唇の左下に黒子。ノースリーブの身体にフィットしたグレーのニット。下はサイズピッタリの黒スキニー。動きやすさ重視の白のスニーカー。

 能力は『腕力』。腕の力はサーヴナックルギナをも凌駕する。


 ウェパール・セパール

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『四十二位』の大悪魔。廓(くるわ)言葉を使う花魁風の美女。眼は大きいタレ目。化粧は口紅すらも青い。湖のように青い髪を花魁風にしている。髪飾り、煙管、着物等全てが黒に鮮やかな青い花弁の模様。煙管を吸うと青白い煙が周りを漂う。


 ハルゲンティ・シャルドネア

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『四十八位』の大悪魔。真っ白髪のツインテール。瞳は黄緑色でツリ目。色白の肌。黄金の鎧は普段は軽装。メスガキ。真の序列十位以上の化け物が揃っていた為早々に退室したかった。

 能力は『黄金』。黄金を無限に生み出せる。その黄金は時間経過やハルゲンティの死で消失はせず、ちゃんと価値も有る。水を白ワインへと変える能力も有るのだが名前は存在せず自身が嗜む為にしか使わない。

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