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人間達を徹底的にボコる為の下準備として魔王軍幹部の候補を呼び出します

「それってボク降格って事じゃん!?」


 ヴァッサーゴはベリアデスの乱以降、指定され過ごしていた部屋で大声を上げた。


『降格では無い。お前は――』


 アルに抱き抱えられているイーラは淡々と続けようとするがヴァッサーゴが遮る。


「だってさ!?だってさ!?八王じゃなくなってルギナの副官ってさー!?降格じゃん!!」


「ヴァッサーゴ様相手なら結論から言うべき……」


『……ヴァッサーゴ、お前を「魔王城騎士団幹部」及び「サーヴナックルギナが統治する城の副官」に任命する』


「……魔王城……騎士団?」


『先ず、八王は各地に散り散りになって貰う。お前はサーヴナックルギナ同様に乱で実際に俺に牙を向けた。故に近くに置いておきたい。それとお前の持つ能力は魔王城にこそ必要だ。


 現状、異世界転移勇者が攻めて来た時でさえ彼処まで侵攻を許してしまっている。


 其処で、だ。魔王城とサーヴナックルギナの城を結ぶ間に強いモンスターを増やしたい。更にはサーヴナックルギナの城への侵攻をも阻む為、その周りにも高レベルモンスターを備えたい。


 コレはヴァッサーゴが八王になると出来なくなってしまう。


 八王と騎士団幹部は対等だ。副官とは建前で、実質サーヴナックルギナとお前は対等の存在。2箇所を行き来しながら防備を固めてくれ。


 「コレ」がヴァッサーゴの任務であり罪滅ぼしだと思ってくれ』


「……ま、まぁ?そーゆー事ならボクに任せてよ」


 ヴァッサーゴは満更でも無さそうな顔で手をブンブン振りながらイーラとアルを見送った。






「一先ずは安心だね〜」


『あぁ。魔王の間へ向かってくれ』


「はーい……」


 アルの腕の中で、イーラは念話を城中に響かせ拡声する。




『イーラだ。今から名を呼ぶ者は魔王の間へと来てくれ。「ガミジェーナ」、「マルバルバース」、「グシオラ」、「レランジェ」、「エリゴス」、「ゼパルル」「バティーム」、「ベリドール」、「ウェパール」、「ハルゲンティ」、「フルカウス」、「グレモリー」、「アミィ」、「キマリス」。以上』


 イーラは最後の準備として、残りの八王を決めようとしていた。






 ――魔王の間。中心には会議をする為の円卓が備え付けてある。イーラが魔王の間へと辿り着くと、呼び出した十四体の大悪魔は既に座っていた。


 イーラは一際大きな椅子へと浮かび移動するとそのまま浮遊している。座ると机で顔が見えなくなってしまうのと、この椅子にアルを座らせる事は出来ない為に膝上という選択肢も存在しなかった。アルもそれを理解している為、斜め後方に静かに立っていた。


『お前達を呼んだのは他でもない。新たな魔王軍の新体制に於いて、お前達の力が必要だからだ。かといってお前達の事を何も知らなければ適材適所に配置も出来ない。よって、お前達の意見・要望も後々聞かせて貰う』


「ホッホッホ……儂らを呼んだのはそういう意図じゃったのか。元々幹部でもない儂らが呼ばれたのでな、てっきり処分でもされるのかと思っとったんじゃ……」


 アガレウスやガルプルギスよりも見た目年齢が高い老人、『フルカウス』は長く白い髭(ひげ)を撫でながら安心した様子だった。他の者達も口にも態度にも出さないが同意見だった。


『案ずるな。俺はお前達を消したり等はしない。裏切ったりしない限りは、な。




 さて、説明するぞ。


 先ず、今後は魔王親衛隊、魔王城騎士団、八王の三体制にしていく。親衛隊、騎士団幹部は八王と対等な存在とする。俺以外の幹部は平等という事だ。


 親衛隊は俺の近くに常に居る。俺は魔王城に居るばかりじゃないからな。


 魔王城騎士団は俺の留守を守る存在だ。基本的には魔王城に常駐するが、勿論自ら攻めに転じる事もあるだろう。


 八王はコレまでとは全く違う。各地に八箇所の魔王軍の領地を作り、其処を統治して貰う。人間共の監視・牽制・制圧等臨機応変にやって貰う。既に元リュミエール王国領地はサーヴナックルギナが統治を開始した。他は未だ場所も決めていないが、一番遠くにはパイモンが。その次に遠い場所にはアガレウスが担当する。


 アモンとヴァッサーゴは魔王城騎士団に、フルブルプルは親衛隊に既に変わっている。


 つまり五つの空席が有る訳だ。……お前達の中に魔王城に残りたい者、逆に他の地を統治したい者は居るか?如何するかは能力と強さにもよるが一応意見があれば聞いておくが』


「ホッホッホ……儂はイーラ様の決定に従う呑みですじゃ」


 フルカウスはそれだけを告げると全てを受け入れる意思なのか両の眼を閉じていた。


「……すぅ……すぅ……」


『……』


(寝てやがんのかこのジジイ!!)


 場の空気を悪くする訳にもいかずにイーラは気持ちを呑み込んだ。




『素晴ラシイッ!!素晴ラシイデスゾォッ!!我等ガ主ィィィィッ!!コノ「キマリス」ッ!!是非トモ!!是非トモ騎士団トシテ我等ガ主ノ留守ヲ、オ守リ致シタイッ!!』


 全身が漆黒の鎧に包まれている騎士のような大悪魔、『キマリス・キメリエラ』は興奮しながら告げた。


『幹部デナクトモ、構イマセヌッ!!コノ キマリス コソガ騎士ニ相応シイッ!!侵攻シテクル哀レナ下等生物共ハ、コノ キマリス ガ一掃シテ ゴ覧ニ見セマショウッ!!』


(確かに見た目は騎士そのものだしな……)




 すると一人の少女が手を挙げた。


「あの……どうせ能力で除外されるのは目に見えているので自己申告で選考から外れます。


 私は『アミィ』。能力は『悪事』、主に相手を混乱させる能力だから防衛にも統治にも不向きなので」


 癖っ毛赤髪の『アミィ・ハンナヴァール』は視線を落としながらもイーラへと進言した。


『……成る程、幹部にするかは未だ先だがお前は八王か副官側だな。お前の能力は役に立つ』


「……私が役に?」


『あぁ、適材適所だ。役に立たない者等居ない、作らせない』


「……っ!」


 アミィは顔を赤くしながら初めて笑顔を見せた。




「イーラ様は女たらしなので女性は気を付けてね〜」


『……アル、お前なんて事を――』


 イーラは呼び出した女悪魔達からの視線が痛かった。




『……やはり時間も惜しいか。能力は聞いて判断する事にする。キマリス、お前の能力は何だ?』


『コノ キマリス ノ能力ハ、


 「魑魅(ちみ)悪魎(あくりょう)」ッ!!数多ノ悪霊ヲ使役シ、敵ヲ滅ボシテ ミセマショウッ!!


 「真相心裏」ッ!!如何ナル隠シ事モ、人間共ノ秘宝モ、財産モ、何モカモ全テヲ暴イテ ミセマショウッ!!


 「騎士傀儡(かいらい)」ッ!!人間共ヲ我ガ騎士ト変エ、大量ノ騎士軍団ヘト変エテ ミセマショウッ!!


 コレ等三ツガ、コノ キマリス ノ能力ッ!!』


 キマリスは声高らかに説明すると、鎧で顔など見えてはいないのだが、明らかにドヤ顔をしているような雰囲気を醸し出していた。


『……それ程の力を持っているなら騎士団として魔王城に留まるよりは八箇所の拠点に――』




 ――ガシャンッ!!


 キマリスが机に両の手を叩きつけ立ち上がっていた。鎧の重みと質感により重く大きい音が響き渡る。


『コノ キマリス ガ、騎士ニハ相応シク無イトォォォォッ!?』


『……取り敢えず他の者の話も聞いてから考えよう』




 イーラは先が思いやられていた。

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 フルカウス

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『五十位』の大悪魔。白髪の老人で見た目年齢は最高齢。口髭(くちひげ)と顎髭(あごひげ)が合わさった白く長い髭が特徴的。カーキのレインコートにも見えるフード付きの服は裾や袖が焼け焦げている。能力の報告をする前に寝腐った。


 アミィ・ハンナヴァール

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『五十八位』の大悪魔。癖っ毛で炎のように見える赤髪を三つ編みにしている。見た目は少女で眼はパッチリしているがやや半月。鼻にはそばかす。イギリスの女子の学生服みたいな服装。イーラに一生従うと心に決めた、チョロい。

 能力は『悪事』。相手に欺瞞(ぎまん)と誹謗(ひぼう)を蔓延(まんえん)させ、混乱と裏切り・同士討ちを招く。


 キマリス・キメリエラ

 ゴエ=ティア七十二柱の序列『六十六位』の大悪魔。全身が漆黒の鎧に包まれた騎士のような姿。動く度にガシャンガシャンと音がする。自身はイーラの騎士だという誇りを持っている為魔王城騎士団に入りたいらしい。

 能力は『魑魅(ちみ)悪魎(あくりょう)』。数多の悪霊を使役する。『真相心裏』如何なる隠し事、人間の秘宝と財産、 その他秘密を暴く。『騎士 傀儡(かいらい)』。人間をキマリスの忠実な騎士へと変える。

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