サーヴナックルギナは人間の幼女と共に新しい生活を始めるので取り敢えず邪魔者全員ボコります
イーラとアルがイーラの部屋へと戻るとメイガイラの姿は無く、フルブルプルは膝を抱えて部屋の隅に座っていた。
「うわ〜。フルブルプル様……、うわ〜」
イーラはアルの腕から浮かんでフルブルプルの目の前で静止する。
『……フルブルプル、お前の気持ちを汲み取っていなかった、済まない』
「……イーラ様」
顔は上げずに視線だけをイーラへと向けて来る。
『……フルブルプル!!
お前を俺の、魔王親衛隊の隊員に任命するッ!!』
「……!!」
その言葉を聞いた途端にフルブルプルの長方形の瞳孔の瞳に光が宿る。
「……なる。……親衛隊……フルブルプルは『三』!!」
「イーラ様は本当に親衛隊を女の子で固めるつもりなんだ〜」
『偶然だ、偶々だ、意図的じゃない』
「……そういう事にしておく」
「フルブルプル様も甘いね〜」
『さて。ヴァッサーゴに話をしたら、いよいよ面識の無い七十二柱達に会うとするか』
リュミエール王国への侵攻と順番は入れ替わってしまったが、どの道通らねばならない道だった。
三体はヴァッサーゴの元へと移動する。
『……ど、どっちかだけでも充分だ――ぞ……』
二体の無言の圧に抑えられ、三体はそのまま向かっていく。
リュミエール王国の跡地。サーヴナックルギナは幼女を抱き抱えて地面へと降り立つ。整備された白と金の地面はヘリオスに剥がされ、更に下の土と岩の地面は激しい戦闘で裂けている。とてもじゃないが幼女を下ろせるような場所では無かった。
「……おい、作業するからテメェはコイツに乗ってろ」
幼女を右手一本で持つと、左手を地面へと向ける。
『顕現しろ、『サーヴノックスレイ」!!』
サーヴナックルギナの金色の魔力が地面に魔法陣を描くと、同じ金色の眩い光が空を穿つ。すると魔法陣から青白い光が噴き出し、それは地獄の炎のように燃え上がり金色の光を焦がしていく。
魔法陣から出てきたモノは馬だった。しかし青白い炎を纏い、タテガミと尻尾は炎そのものだった。何より普通の馬との違う点……脚が八本も有る事。
「おい、スレイ。このガキを背中に乗せてろ。燃やすんじゃねェぞ」
『……ルギナ、この人の子と契約をしたのかえ?』
「あァ?してねェよ。こんなガキと契約なんざして何になるってんだ」
『……なれば妾の蒼き焔で燃え散ってしまうじゃろーが』
「だから燃やすなっつってんだろーが」
『契約せねば燃えると申しておるじゃろーが』
「……ママ?」
『ま、ママじゃと?ルギナ……お主何時の間に交――』
「ママじゃねェしオレは未だ純潔だッ!!
……ったく。こんなクソガキ相手に契約なんざ……」
『ソレは何なのじゃ?良心が痛むとでも申すのかえ?』
「……契約はコイツが大きくなって、全てを知って、ソレでも受け入れるッつーならするんだよッ。スレイが燃やさなきゃ済む話だろーがッ!!」
『……別に――』
――シュゥゥゥゥゥ。
「妾が半魔人形態になれば何も問題は無いんじゃがな?」
スレイの馬の首から上が女性の人間のように変化した。肌は灰混じりの褐色で青白い髪はタテガミ同様に燃え上がっている。
「なら最初からやれッつーの!!」
「ルギナ、お主が妾の背中に乗せよと命じたんじゃろーが。背中は到底無理であるぞ」
「ハァ。疲れるからもーいい、如何でも。ほら、コイツ持ってろ」
「……ママ?」
幼女はルギナを見て泣きそうになっていた。
「……心配すんなクソガキ。此処ら辺を片付けるだけだ」
スレイは遥か上空へと宙を駆けていく。ルギナは右の拳に魔力を込めると地面を思い切り殴り付ける。其処を起点に金色の光が地面を四方八方へと枝分かれしながら駆け巡っていく。この光は元リュミエール王国だった領地全てに行き届く。
「……やっぱ人間が未だ混じってやがるな」
それ等は『皆殺し』の取り零しでは無い。未だ侵攻が無いと踏んで一時的に留守にしていた者。ルギナが襲来するギリギリで領地から出ていたものの、行く宛も無く戻って来ていた者。そして、何かお宝が残っていないかと盗りに来た者。
しかし見分け等つく筈も無い。
そして、見分け等つける必要も無い。
『今、リュミエール王国の元領土に脚を踏み入れてるゴミ共ォ!!テメェ等は魔王軍領土に不法侵入した大罪人だッ!!よってこのサーヴナックルギナが粛清するッ!!』
ルギナは光で言葉を伝達しイーラの念話のように自身の言葉を元領土全体に届けた。
「あ、兄貴!!不味いッスよ!!お宝なんて諦めて逃げねぇと!!」
「っ!!クソ――ガッ!!」
地面の光が盗賊の身体を突き刺すとその高温で蒸発し跡形も無く消え失せる。同様に不法侵入していた人間達は全員消滅した。
「ほれ見てみぃ、人の子よ。ルギナの能力を見れるぞよ?」
「ママ!!」
地面が更に強く発光すると、割れ・裂け・抉れ・隆起していた地面が真っ平らに整備されていた。以前のリュミエール王国よりも平坦。そして金色に光り輝いていた。
そして領土を囲うように地面はせり上がり、巨大な壁を設けた。リュミエール王国の数倍はあろうかという程に荘厳な金色の壁だった。道に沿い東西南北に四つの門を設置。大型の悪魔やモンスターも通れる程に巨大なものだった。
続いて街の中心から西側……つまりは魔王城の方面へと少し移動した場所に下り立つと再び地面を殴り付ける。
――キィィィン!!ガッガガガッ!バギッバギバギッ!!ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
凄まじい勢いで金色の床が激しく入り乱れながら上空へと昇っていく。それは『城』だった。これも今は無きリュミエール王城を遥かに凌ぐ規模であり、魔王城を攻める為にやって来た人間の心を圧し折るには充分過ぎる程に凄いモノが出来上がっていた。
「……もういいぞ」
「見事じゃ。ルギナも納得の出来なのであろうな。
……しかし、じゃ。妾の眼には魔王城よりも豪華に映っておるのじゃが、大丈夫なのかえ?」
「……新しい魔王は問題ねェ。つっても前の魔王様も許してくれてただろうがな」
ルギナは降りてきたスレイから普通に幼女を受け取り抱いていた。
「ママー♡」
「ママじゃねェ!!」
其処だけは譲れない。未経験故のプライドだった。
「……のう?この人の子に名前は無いのかえ?」
ルギナは考えた事すら無かった。
「テメェ名前はあんのか?」
「……?ママ?」
不思議そうに首を傾げる幼女をルギナは黙って見詰めていた。
「ふむ。これは無さそうじゃな。なればルギナが名付けをしてやると良かろう」
「あァ?何でそう――。ハァ。ッたく」
ルギナは頭を掻きながら、悩み込んでいた。
(何じゃ、よもやあのルギナが人の子の名付けに前向きとは……。妾が思っておる以上にこの人の子に入れ込んでおるのか……)
「……別に名前なんざ呼べりゃ何でも良いか。
テメェの名前は『サルマ』だッ」
「何でもと言いながらも、熟考しておったじゃろーが」
『……さ、サル……マ……!!
サルマ!!』
自身の名を手に入れた幼女は満面の笑みでルギナに抱き着き頬擦りをしてくる。
「おま――。チッ」
舌打ちをしつつも無抵抗のルギナに、スレイは思わず笑みを零していた。
コレから、此処から、二体と一人の暮らしが始まろうとしていた。
設定
サーヴノックスレイ
サーヴナックルギナの従属。青白い炎を纏い、タテガミと尻尾は炎そのもの、脚が八本も有る馬の大悪魔。首から上を人型にする半魔人形態は肌は灰混じりの褐色で青白い髪はタテガミ同様に燃え上がる。
本来ルギナはスレイに乗る筈だったのだが、ルギナが身体を鍛えに鍛えた結果、騎乗の移動を必要としなかった為に出番がほぼ無かった。




