皆殺しの命令を無視して人間の幼女を持ち帰ったサーヴナックルギナは幼女をボコりたい
魔王城へと一瞬で到着したサーヴナックルギナ。偶々ヴァッサーゴを見掛けると声を掛けた。
「よォ、ヴァッサーゴ」
「ンー?ルギナ、もう終わったんだー?早かったネー……って何ソイツ!?」
「……ママ」
幼女はサーヴナックルギナの脚にしがみ付きながら背後へ隠れた。
「ヴァッサーゴ、オレの代わりにこのクソガキを殺――」
「普通にイヤですけどー!?ルギナ、キミ正気!?皆殺しの命令無視してさー!?こんなのお持ち帰りしちゃってさー!?」
「……」
「ママ……ママ……」
ぎゅるるるるる。
幼女のお腹が鳴っていた。異世界転移勇者の一団へと食料は大量に投入されて枯渇し、まともなご飯にもありつけていなかったのだ。
「……ボクは知ーらない、何も見てない聞いてないボクは無関係なのさーーー!!」
ヴァッサーゴは逃げ出した。
「……覚えとけよヴァッサーゴ」
「ママ……」
しがみつきながら涙目で見上げてくる……。
「……クソが」
サーヴナックルギナは自身の金色の城へとやって来る。ベリアデスの乱以降は魔王城へ軟禁のような状態だった為、それ以来久し振りに訪れた。
「……ったく。ほらよ、コレでも食ってろ」
ソーセージを手渡してやる。
魔王城には料理をする者達も居る。魔法で防腐処理がされている為人間達でいう賞味期限や消費期限という概念は存在しない。人間達にそのような能力者は居ない事と衛生面で嫌われる為技術も存在していなかった。
「……ママ。ママ」
手渡されたソーセージが何なのかすら理解していない様子だった。
「……はァ」
爪で端を切り落とすと剥いてやり、唇に押し当てる。
「ほら、食え。飯だぞ」
「……あむ」
一口食べると両眼を輝かせて嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。
「ママ……好き♡」
「……は?」
予想外の言葉にサーヴナックルギナは目を見開く。
「……あ
ークソ。もうイイ、如何にでもなりやがれッ」
ソーセージを食べている幼女を優しく抱き抱えると再び魔王城へと向かった。
「イーラ様〜?如何します〜?」
当然サーヴナックルギナが娘を持ち帰った事はアルを通し、パイモンが視たモノをありのまま視聴きし知っていた。
『……』
イーラは何も言わなかった。いや、何も言えなかった。有象無象の中の幼い子供を殺すのと、対面で一人の幼い子供を手に掛けるのは全くの別物。厳しく、命令違反をしたサーヴナックルギナを罰するべきなのか。連れ帰って来た幼女を如何するのか。そもそも自分がサーヴナックルギナの立場ならば遂行出来たのか如何か。
色々と考えを巡らせていても一向に答えを導き出せて等いなかったのだ。
『……フルブルプルには悪いが、先ずはサーヴナックルギナに会う』
「はーい……。イーラ様も視てると思うけど〜、サーヴナックルギナ様も此方に向かってる〜」
『……』
結局答えは見付からぬまま、城内の通路でサーヴナックルギナと対面した。
サーヴナックルギナは幼女を抱き抱えたまま、頭も下げずに顔を逸らしながら報告を始める。
「……命令通りリュミエール王国はオレが滅ぼした。王とその息子三人も殺した。王国内に残っていた人間共も大量に殺した。だが……このクソガキだけは……殺せなかった。
……かと言って別にこのクソガキに思い入れがある訳じゃねェ。誰か他の奴に……殺させてくれ。
罰は甘んじて受け入れる……勿論オレの命に関わる内容だッてんならソレなりに抵抗はさせて貰うが」
『……サーヴナックルギナ。お前はソイツにとって親の仇になる。それでも……助けたいのなら、リュミエール王国の跡地のお前の城にソイツを置く事を俺が許可する』
「――!?なッ、オレはこのクソガキを助けたいなんか言ってねェぞッ!?寧ろコイツの所為で皆殺しに失敗したんだッ、ブッ殺してやりてェくらいだ!!」
『……如何しても殺したいならお前が直接誰かに頼んで殺して貰え。
俺はお前の判断にもその子供にも干渉はしない。お前のベリアデスの乱での一件は此度の功績を讃え不問とするッ!!よくぞやり遂げたッ!!
リュミエール跡地はお前の領土だ、好きにすると良い。
……あぁ。だが一つだけ。未だ奴には言っていないがヴァッサーゴを副官に据える。リュミエール王国と魔王城の間をより強力な魔物・魔獣の巣窟にし防備を固める。
以上だッ!!』
一方的に話を終えるとアルに抱き抱えながら去って行った。
サーヴナックルギナは黙ってその背中を見詰める事しか出来なかった。
「……頼むって誰に頼めッつーんだよ、クソ。頼む相手居ねェと思って態とヤッてやがんだろ」
「?ママー?」
「んだよ……ってオレはママじゃねェぞ」
「ママ……」
「ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜もう!!」
クソデカ溜息を吐くと幼女を抱き抱えたまま窓から飛び出すと、再び一瞬でリュミエール王国へと吹っ飛んで行く。
「イーラ様って意外と甘いんだね〜?容赦無く皆殺しにするタイプだと思ってた〜」
『……アルなら分かってるだろ。元は俺も只の人間なんだ。何の力も能力も無い、無力な……な。考えないようにしてはいるが未だに父親を殺した事を思い出して――』
――ぎゅ。
アルは震えるイーラを優しく抱き締め、頬を擦り寄せていた。
「イーラ様が独りで背負う事は無いよ……。私が居る……」
『……有難う』
イーラの心は今、魔王軍を束ねる最凶の魔王イーラでは無く、只の無力な日本人になっていた。
「イーラは私が居ないと本当にダメだね〜?♡」
アルが恍惚の表情で居る事等、イーラには知る由も無かった。




