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黒頭巾の神撃〜Black hood's divine attack〜  作者: 南斗家那乱下
第二章 天空編

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最終決戦

神への反逆者一行は、ついに運命を分かつ決戦の朝を迎える。

冷ややかな朝もやの中、バレットの野太い声がアジトの静寂を切り裂いた。


「全員起きたか! 今さっき調査班から新しい情報が入った。中央にそびえ立つあの『神造要塞ゴッドゾーン』の周囲に、一般兵共が集結し、隙間もないほど守りを固めているらしい。そこで、三方向から同時に急襲を仕掛ける」


バレットはホログラムディスプレイを展開すると、荒々しく指を叩きつけた。


「第一班は正面突破、剣一、アリス、真白、シロミ。第二班は側面からの撹乱、俺とミーナ、リリア、そしてロロとララ。第三班は逆の側面からの撹乱をツキノ、ルミナ、クロナ、ケンゾウで頼む。残りの連中は、俺たちが切り開いた後に漏れた雑魚どもを掃討してくれ。一時間後に出発する。それまでに地獄への準備を済ませておけッ!」


『了解!』


短い返信と共に、アジト内は一気に慌ただしさを増した。武器を研ぐ音、魔力を練る音。各々が最終チェックを済ませ、出発までの残りわずかな時間を、惜しむように、あるいは嗜むように過ごす。


「いよいよだね。剣一、この場所にやり残したことはない?」


アリスが魔力の調子を確かめながら、静かに隣の剣一へ問いかける。


「今は無いな……。後は奴らを倒してから、その後にゆっくり考えるさ」


「そうね……。真白とシロミは大丈夫? やり残したことはない?」


アリスが視線を向けると、真白はいつもの無邪気な笑顔を見せた。


「うーん。私は特にないかなっ? お姉ちゃんはどう?」


「……あるわよ。いっぱいあるわよっ! 真白ちゃんといっぱい愛し合いたいけれど、今のこの数分じゃ全然足りないわ……っ!」


シロミは顔を紅潮させ、切実すぎるほど深刻な表情で訴える。


「お姉ちゃん……。こっちにおいで? お姉ちゃん大好きだよ。……ちゅっ」


「はぅあっ!?」


真白がシロミを引き寄せ、優しくハグをしてその頬に唇を寄せる。

その瞬間、シロミの体から爆発的な魔力が噴き上がり、背後の壁に亀裂が走るほどの衝撃が走った。


「私も大好きよっ! ちゅっ! ああああもう思い残すことはないわ! 全力で、完膚なきまでに戦えるわッ!!!」


シロミは真白に愛をお返しするように口付けを交わし、完璧に「愛の充電」を完了させた。文字通り無敵の闘志を全身から放つシロミ。その尋常ではない熱量と魔圧に、周囲の面々は気圧されながらも苦笑いを浮かべる。


「シロミもやる気十分なんだぞ。……ルミナ、絶対に勝って戻ってくるんだぞ」


ツキノが相棒の肩を叩き、力強く告げる。ルミナは静かに、だが氷のような鋭い意志を瞳に宿して頷いた。


「……うん。ツキノも油断したらダメ。私たちで必ず、同胞たちの仇を討つ。リリアも気をつけて」


「もちろんだ! ダークエルフとして、姉として、そして一人の戦士として、神なんぞに負けるわけにはいかないからなっ!」


リリアが拳を合わせ、エルフの三人は互いの絆を確かめ合うように頷き合った。一方、その傍らではクロナがケンゾウの腕にそっと触れる。


「ケンゾウ、私に何かあっても気にせず戦うことをやめないでねッ。お父さんたちの想いを、私たちは必ず未来へ繋げなきゃいけないんだからッ」


「……分かっタ。だが、逆の立場でも同じことをしてくれヨ。もし、俺たちに何かあっても……剣一たちが、必ずこの意志を繋いでくれるはずダ!」


クロナとケンゾウ──作られた存在でありながら、誰よりも人間らしい「心」を持つ姉弟もまた、覚悟を共有していた。そんな熱いやり取りの中、ミーナがおずおずと、しかし頬を林檎のように赤らめながら剣一とアリスに歩み寄る。


「あの、私……。剣一さんとアリスさんのお二人が、こうして深く愛し合っているのを、これからもずっとそばで見ていたいんですっ。この戦いが終わったら……お二人と一緒にいても良いですか?」


「……ええと、それはつまり、俺たちと同行したいってことか? いまいちピンときてないんだが……」


剣一が首を傾げると、アリスがどこか誇らしげに、くすりと笑って補足した。


「ミーナはね、あたしが剣一を愛しているのとはまた違う感情みたいなの。なんというか、……ペットを愛でるような純粋な気持ちで接して欲しいみたい。あたしは、ミーナが一緒にいてくれるなら大歓迎かな!」


「なるほど、そういうことか……。アリスが良いなら、俺も構わないぞ。ミーナ、その時はよろしく頼む」


「良かったぁ……えへへ……ありがとうございますっ! 勇気が湧いてきました! この勝負、絶対に勝ちましょうねっ!」


ミーナは花が綻ぶような笑顔を見せ、両手を強く握りしめる。

全員の想いが一つの束となり、今、アジトの重厚な扉がゆっくりと開き始めた。


眩い陽光が差し込む中、出発の刻が訪れる。バレットが喉を震わせ、魂を鼓舞するように叫んだ。


「行くぞ、お前ら! 神撃しんげきの時間だッ!!! 俺たちの、そして世界の未来を取り返しに行くぞッ!!!」


『うおおおおお――ッ!!!』


地鳴りのような咆哮を背に、反逆者たちは一斉に地を蹴った。

神の庭へと続く険しい道筋を、三つの班に分かれて疾走する。戦場の砂塵さじんを巻き上げながら、一行はそれぞれの攻撃地点へと到達した。

やがて、耳元に装着した魔導通信機から各班の報告が響く。


「……第一班、配置完了だ。いつでもいける!」


「第三班、こちらも準備万端だぞっ!」


仲間の声を聞き、バレットが鋭い眼光で眼前の神造要塞ゴッドゾーンを睨み据えた。


「よし、作戦開始だ! まずは正面から穴を穿つ。剣一たち、頼んだぞッ!」


「了解。──アリス、シロミ、まずは二人で派手に挨拶してやってくれ。敵が混乱した隙に、俺と真白で討ち漏らしを一掃する!」


剣一が抜剣し、その刃を神の門へと向けた。アリスは不敵な笑みを浮かべ、シロミは溢れんばかりの殺気と愛を魔力に変えて、その身にまとう。


「任せてっ! 私たちの『絆』、あいつらに見せつけてやるんだからっ!」


ついに、神話の終焉しゅうえんを告げるための第一撃が放たれようとしていた。


限界突破リミットバーストッ!!!』


四人の咆哮が重なり、膨れ上がった魔力が大気を震わせる。


「爆ぜろ……ッ! ──火炎爆破ファイアバーストッ!!!」


アリスが「遠隔形態ディスタントスタイル」へと魔装(マジックドレス)を展開し、上空高くへと跳躍する。眼下に広がる神の軍勢へ向け、紅蓮の劫火を纏った無数の魔力弾が、流星雨のごとく降り注いだ。


「──亡者の大群(デッドアーミー)ッ!!!」


同時にシロミが正面から突撃し、掌を掲げる。敵陣の床から溢れ出した漆黒の魔力が、形を成して亡者の軍勢へと変貌。亡者の叫びと共に敵陣を食い荒らし、要塞の守備隊を一気にパニックへと陥れた。


「真白、二人に続くぞッ! ──人智の剣、人智一閃ッ!!」


爆炎と亡霊に翻弄される敵陣のわずかな隙を、剣一は見逃さない。超高速の踏み込みから放たれた一閃は、神の兵士たちの強固な装甲を紙のように切り裂き、一撃で数十の雑兵を消滅させた。


「うん、行こうっ! ──召喚サモン! シルフィーヌ、ノムラ、ウルダイブ、サルバートッ!!!」


真白が聖杖を掲げると、四つの魔法陣が戦場に展開される。

自然の霊力を纏うシルフィーヌ、巨岩の化身ノムラ、猛る水龍ウルダイブ、そして全てを浄化する炎サルバート。

顕現した四聖霊は、真白の号令と共に次々と神造要塞の守備隊へと襲いかかった。


「怯むなっ! 道は俺たちが切り開くッ!!」


先制の一撃は完璧だった。爆炎と閃光、そして聖霊たちの咆哮が混じり合う中、正面突破チームは神の牙城へと力強く踏み込んでいく。

その轟音を合図に、側面に配置された別働隊もまた牙を剥いた。


「剣一たちが攻撃を開始したんだぞ! 私たちも続くんだぞっ! ルミナ、先制攻撃を頼むんだぞっ!」


ツキノが大きな声で叫ぶ。ルミナは静かに魔力を練り上げ、冷徹な瞳で眼下の軍勢を見下ろした。


「……分かった。とりあえず一気に足止めするから、遅れないでついてきて」


「了解なんだぞっ!」


限界突破リミットバーストッ!!!』


二人の咆哮が重なり、大気が一瞬で氷点下へと叩き落とされる。


「──幻鏡白雪ホワイトブリザード


ルミナが腕を振るった瞬間、正面突破チームの迎撃に向かおうとしていた一般兵たちを、猛烈な吹雪が襲った。視界を奪う白銀の嵐は、瞬く間に兵士たちの足元を凍てつかせ、巨大な氷像へと変えていく。


「今だっ、一気に行くんだぞっ!!」


敵が氷のおりに閉じ込められた隙を突き、ツキノが疾風のごとき速さで戦場を駆け抜ける。そして魔靴(マジックブーツ)による蹴撃が、身動きの取れない敵を次々と粉砕していく。


「お父さんたちの無念……ここで晴らすよッ!」


続くようにクロナが、剣一の剣技を彷彿とさせる鮮やかな剣戟で敵を両断。ケンゾウもまた、脚力を活かした超高速の踏み込みから、二振りの短剣による精密な連撃を叩き込み、神の軍勢を圧倒していった。

側面の撹乱かくらんは成功だ。冷気と死角からの猛攻に、要塞の守備隊は完全に戦路を分断されていた。


その頃、要塞の反対側に位置するバレットたちもまた、作戦通りに特攻を開始していた。


「剣一たちが正面から派手に荒らしてくれている。……おい野郎ども、俺たちも続くぞっ! リリア、まずはその雷撃で先陣を切ってくれっ!」


「承知した! ──では、いざ参らせてもらう!」


バレットの怒号に応じ、リリアの槍が超高密度の電光が収束していく。


限界突破リミットバーストッ!!!』


空間が白く染まるほどの魔力解放と共に、リリアの姿が雷光を纏う戦神へと変貌し、バレットやミーナも少し姿を変え、リリアに続く。


「──雷神化らいじんモード雷昇電竜ドラゴンサンダーボルトッ!!!」


彼女が地面を突き刺すと同時に、床に張り巡らされた鉄板を内側からぶち破るように、雷を纏った竜のごとき雷撃が天へと大量に昇っていく。足元から突き上げる神速の雷竜に、神の軍勢はなす術もなく宙へと吹き飛ばされ、戦列は一瞬で崩壊した。

慌てふためく兵たちへ、容赦のない追撃の嵐が訪れる。


「ロロ、ララ! 俺たちの討ち漏らしを発見次第、一匹残らず叩き潰していけッ! ミーナは俺と一緒に、奥まで暴れ回るぞッ!!!」


「「了解っ!」」


幼いながらも確かな殺意を込めた二人の返声が響く。それと同時に、ミーナが体勢を低くし、その身に宿る「妖狐」の力を全開にした。


「はいっ! わかりましたっ! ──十尾妖狐テンモンフォックス妖狐影分身シャドウフォックスッ!!!」


ミーナの背後から十本の尾を模した魔力が膨れ上がり、瞬く間に数多の分身が戦場を埋め尽くした。可憐な少女の姿をした分身たちが、変幻自在の動きで敵の核を次々と刈り取っていく。


「ハハッ! 景気がいいじゃねえかッ!!!」


その混乱のど真ん中へ、バレットが巨大な鉤爪をぎらつかせて突っ込む。鋭利な刃が空を裂くたびに、数人の兵がまとめて切り裂かれ、破片となって転がっていった。

三方向からの同時急襲は、もはや止めることのできない濁流となって神造要塞を飲み込もうとしていた。

次から次へと湧き出ていた一般兵の影が次第に減り、硝煙と魔力の残滓ざんしが漂う戦場に、別働隊の面々の姿が見え始める。

外の制圧を終えた三つの班が、要塞の正面入り口へと集結した。そこには、天を突くほどに巨大で、禍々しい装飾が施された一枚の門扉が鎮座していた。


「……お前ら、準備はいいか。ここからが本当の地獄だ。一瞬たりとも油断するなよ」


バレットが低く唸るような声で警告を発する。剣一たちは無言で頷き、それぞれの武器を固く握り直した。全員の力が合わさり、重厚な扉が軋んだ音を立てて押し開かれる。

一行が踏み込んだ先は、一切の光を拒絶するような、静謐せいひつで底知れぬ暗闇の空間だった。

全員が中に入った刹那、背後の扉がバタンッ!と激しい音を立てて閉ざされ、重苦しい沈黙が周囲を支配する。


「……待ちくたびれたぜ。今から俺が貴様らまとめて、このハンマーの錆にしてやるよッ!!!」


突如、空間を震わせるドスの効いた声が響き渡る。

闇の奥から現れたのは、巨大な戦鎚ハンマーを片手で軽々と担ぐ神、トールだった。その不敵な笑みが闇に浮かび上がる。


「……と言いたいところだが、あのクソジジイが『念には念を入れろ』と煩くてなあ。他の連中も、虫ケラにいいようにされて、鬱憤が溜まっているらしい。……悪いが、散ってもらうぜ」


トールが戦鎚の柄で床を叩くと、剣一たちの足元に巨大で緻密な魔術回路が幾層にも展開される。


「なっ!? なんだこれはっ!? お前ら、離れろッ!!!」


バレットが叫んだ時には、すでに全員が眩い極光のおりの中にいた。視界が白く塗り潰され、仲間の気配が遠のいていく中、剣一は喉が張り裂けんばかりの声で叫んだ。


「転移魔法か……っ! みんな、必ず勝つんだッ!!! 絶対に生きて、また会うぞッ!!!」


その絶叫も虚しく、一人、また一人と姿が掻き消えていく。

仲間と引き離され、死地へとバラバラに飛ばされた一行。各々が孤独な戦いの中で、神との最終決戦という過酷な運命を余儀なくされるのだった。

二章これにて完結です。次回、最終章です。修正とストックを作るため、一週間は空くかもしれませんがよろしくお願い致します。

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