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黒頭巾の神撃〜Black hood's divine attack〜  作者: 南斗家那乱下
第二章 天空編

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プロローグ

時は遥か遡り、人類が誕生しておよそ一千年。天空の最上階では、世界の行く末を決める不穏な会議が開催されていた。


「よく集まってくれたの、お主ら。さあ、退屈な平和に終止符を打つ会議を始めようぞ。ただ世界を眺めているだけでは、神としても興が削がれるというもの。地上に蠢く矮小な命たちに、一つ目的を与えてやろうと思うのじゃが……どうだ、我らの住まうこの天空を目指させてみるのは」


「正気ですか、ゼウス様!? 我ら神族の聖域に、あのような下等な生物を招き入れるなど……断じて承服しかねます!」


「アテナの言う通りだぜ。んな下らねぇ理由で呼び出したのか、クソジジイ。ついにボケが回ったかぁ? 面倒が増えるだけだろうが」


「口が悪いよぉ、トール。私はどっちでもいいよぉ。老い先短いおじいちゃんの、最後のワガママだと思って付き合ってあげなよぉ」


「……お前も大概だぞ、フレイヤ。まあ、私の海を汚されるよりは、天へ昇らせる方がまだマシか」


「海が汚れたってオイラの熱で蒸発させてやるよ、ポセイドン! フンッ! ハッ! オイラより熱い奴が来るってんなら、大歓迎だぜっ!」


「暑苦しいわね、ラー。私は賛成よぉ? まとめて可愛がって、躾けてあげるから……ふふっ」


「アンタよりアタクシの方が上手く躾けられるわよ、イシス。この世で最も美しいア・タ・ク・シに、無様にひれ伏すがいいわぁん」


「お前……きもいんだゾ、アプロディーテ。……まあ、賛成だゾ。だが、殺す前にこっちに獲物を寄越すんだゾ」


「では魂が抜ける寸前のものを、私がそちらへ送り届けましょう、オシリス殿」


「暇人なのかァ?アヌビス。俺は俺でやりたいことがあるんだよなァ。イヒヒッ!」


「ふっ。ロキのやることなんて、趣味の悪いことだけでしょ。何かあったら僕が時を戻すから心配ないよ、ゼウス」


「アァ?あの顔、あの瞬間がたまらねぇんだろォ、お前にはわからないだろうなァ、クロノス」


「………………」


「オーディンよ。お主、先ほどから黙っておるが……どう思う?」


「…………好きにしろ。我は、どちらでも構わぬ」


「ふむ、決まりじゃの。……では、生けるものには我らと同じ『魔力』の種を与えよう。天空への道は……そうさな、定刻に現れる魔獣モンスターに低確率で『鍵』をドロップさせる、というので良いかの?」


「はぁ……もういいです、好きにしてください! ですが、天空にも秩序は必要です。不浄な連中を野放しにすることだけは、絶対に許しませんからね!」


「ほう、確かにの。管理か……」


「……なら、それは俺に任せるんだゾ。機械兵を作り、徹底的に統制してやるんだゾ。……逆らうバカな奴らは、俺がこの手で改造してやるんだゾ」


「……良きかな。これにて終いじゃ。本日より、神の慈悲と鉄の統治――《機械化統制計画マシナロク》の開幕じゃっ!!」


こうして、神々の残酷な遊戯は始まった。

地上へと送り込まれた機械兵たちは、人々の間に「天空には楽園がある」と言う甘い噂を吹き込み、それは大陸中に瞬く間に拡散されていった。


ーーーそして、一千年後。

天空の玉座で、ゼウスは退屈そうに頬杖をつき、下界を映し出す水鏡を眺めていた。


「……そろそろ骨のある奴が現れてもおかしくない頃合いだと思うが……。期待外れじゃの、一向に暇が潰れんわい」


「だから言ったろ、クソジジイ! ただ面倒な管理が増えただけじゃねぇか! ……おい、俺に考えがある。一度下界へ行かせろ」


トールは愛用の槌を肩に担ぎ、獰猛な笑みを浮かべる。


「下界へ降りるときゃあ、魔力を十分の一まで封印してやるよ。その方が少しは遊びとしてやりがいがあるってもんだ。……今、一番威勢がいいのは『魔族』だったか? ちょっくらどんなもんか、この目で拝んできてやるぜ。……ま、弱すぎてうっかり絶滅させちまったら、そんときゃあ、すまねぇな!」


「うーむ……。まあ、よいじゃろう。最悪、他の種族がまだ残っておるしの。好きにするがよい」


「決まりだなぁ! じゃあ、ひと暴れしてくるぜ!」


翌日。返り血を浴びたトールが、鼻歌交じりに天空へと帰還した。


「おいおい、笑っちまうぜ。雑魚にも程がある! あれだけの数が束になってかかってきながら、力を十分の一に抑えた俺一人に絶滅させられるなんてよぉ!あいつら、生きてる価値すらねぇゴミクズだったぜ。……まあ、もう一匹も生きてねぇけどな! ギャハハ!」


「……あ、そういやクソジジイ。魔族を何匹か、オシリスの所に放り込んどいたぜ。あいつ、新しい『機械のパーツ』が欲しいとか言ってたからな」


「ふむ……魔族が全滅か。期待外れも甚だしいの。……こうなれば、暇潰しのルールを少し変えてみるかの。地上から新しい神候補を募ってみるというのはどうじゃ?」


ゼウスは不気味な光を瞳に宿し、さらに言葉を続ける。


「天空へ来た種族の中に、もし骨のある奴がいれば、そいつを『新しい神』に仕立て上げてやるのよ。敗北と絶望を乗り越えた魂なら、神の器として十分じゃろうし、同士討ちなんて起きれば高揚するわい。ついでに、そいつには強者が現れれば連れてきてもらおうかの……」


「暇つぶしにはいいんじゃねぇか?この感じだとしばらくは出てこねえと思うがな」


「気長に待つしかないかの。また頃合いを見て、他の種族にも目を配っておくとしよう。トールよ、お主も良さそうな器を見つけたら、すぐに教えてくれると助かるわい」


ゼウスの濁った瞳が、歪な悦びに細められる。

こうして、神々の気まぐれによる「選別」そして、地上を盤面とした終わりなき「娯楽」が開始されたのだった。


それから500年の時が流れ、その残酷な遊戯の果てに――今、四人の若者が天空に立っている。

一人は魔剣を握り、一人は聖なる光を纏い、一人は消された種族の誇りを胸に、一人は更なる高みと絆を信じて。

彼らこそが、神々の待ち望んだ「極上の獲物」なのか、それとも盤面を打ち砕く「反逆者」なのか。

運命の歯車は、静かに、けれど確実に回り始めていた。

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