第22話 マルティナと屍竜使い12
使用率:40/100%
――元々は10%だったので、それぞれ15%ずつの攻撃か。
かなり強いが、まだ余裕はある。見立て通りだ。
そして――
「返すぞい!」
ワシは片手ずつをそれぞれの竜に向けて突き出す。
そして掌の先から、【収納】したてのブレスを放出する!
ズゴオオオオオオォォォォォッ!
黒い冥竜には白いブレスを、白い天竜には黒いブレスをそれぞれ返した。
この二体は、恐らく相反する属性を持っている。
つまりそれぞれのブレスは、それぞれの弱点のはず。
それをうまく突けば――
「な……!? ごわあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ウソだろおおぉぉぉぉぉぉぉッ!?」
悲鳴を上げて、それぞれの弱点のブレスに飲まれて消えて行った。
後にはブスブスと煙を立てる燃えカスしか残らない。
「な? 二体の方が逆に早く終わるじゃろ?」
それぞれがそれぞれの必殺の弱点を、ワシに【収納】させてくれるのだから。
ワシにとってはこの組み合わせが、最も手っ取り早く倒せるのだ。
逆に一体ずつ呼び出された方が、時間がかかっただろう。
「ま、もう言っても無駄じゃろうがの」
消えてしまった者に何を言っても伝わるはずもない。
「さあ、ティナを返して貰うぞい!」
ワシが近づくと、ティナの皮を被ったドルミナは、フンと鼻を鳴らし笑みを見せる。
「……どう取り戻すつもりぞよ? 既にこの女は妾の支配下にある。先程一瞬意識を取り戻したのは、妾に油断があったからよ。二度と同じことはあり得ぬ。そして下手な攻撃はこの憑代を傷つけるだけ、妾には痛くも痒くもないぞ?」
「おぬし、なぜ今になってティナを操るのじゃ? 今までも機会はあったじゃろうに。ティナが年老いて、衰えるのを待っておったというのか?」
「……冥途の土産に教えてやろうかえ。その通り、この者は聖剣に認められし人の子の英雄。妾といえどもそう簡単に思いのままに操る事は出来ぬ。秘かにこの者に憑りつき、機会を待ち続けておった」
何故そうまでしてティナを狙うのだろう?
一度倒された恨みか――?
と、ワシが訊ねる前にドルミナが続ける。
「かつてこの者は聖剣の力で妾の憑代を壊し、妾自身も多大なる傷を負わされた。だがその時思ったぞよ――この聖剣の力、妾が手にする事が出来れば、妾はより完璧な存在となれると……! 八魔将などという木っ端に甘んじるつもりは、妾には毛頭無いわ……!」
先程までとは打って変わって、よく喋る。
「憑代を渡り歩き、屍竜を操る妾の魔の力と、この憑代と聖剣の力――合わせた強大な力で、妾が新たなる魔王となってくれようぞ……!」
「フン――! 木っ端で悪かったな……! その木っ端が、今貴様をブチ殺しに来てやったぞ……!」
頭上から、声。
ドスンと地響きを立てて、バーヴェルがワシの近くに降り立った。
「バーヴェル!?」
「うむ。派手に城を破壊したな。おかげで分かり易かったぞ」
「いや、ワシがやったんじゃないんじゃがのう……」
「ほぉうバーヴェルかえ。妾には分かるぞよ、貴様死におったの。にも拘らず、妾の力で蘇るだけ蘇って支配されぬとは、しぶとい奴よのう。人の力をタダ食いしおって、意地汚い輩よ」
「我が頼んだわけではない! だが意味はあったな……我が部下達を死せし後も意のままに操り下僕とする所業――捨て置けはせんぞ……! 我が蘇りつつも貴様の意のままにならんのは、貴様を消し去れとの天啓だろう――」
「バーヴェル、おぬしの部下たちは?」
「縛り上げて置いて来た。討つには忍びなかったのでな――さあ、残るはヤツだけだ!」
「ああ、そうじゃな……ん?」
ドルミナの様子がおかしい。いや、足元の魔法陣も。
それまでの光が消えて行き――ドルミナの右手に収束して行ったのだ。
「ククククク……ハーッハッハッハッハッハッ! 長々と下らぬ話につきおうてくれて、礼を言うぞえ! おかげで聖剣降臨の儀、たった今成し遂げたわ!」
「……!」
「……!? ヤツの目的は、時間稼ぎか――!」
「そういう事ぞ! 聖剣の使い手たる我が憑代にとっても、極度の集中を必要とする儀式ゆえ、戦いながらではとても叶わぬもの! おぬしらがお喋りで助かったわ! さぁ出でよ、聖剣よっ!」
ブオオオオォォォォォォォッ!
渦を巻くような、猛烈な光と暴風の奔流が巻き起こる!
その中で――空間の歪みのようなものが、ドルミナの翳した右手の先に現れる。
ゆっくりと、柄の部分から、煌びやかな装飾の純白に輝く剣が姿を見せ始めた。
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