第21話 マルティナと屍竜使い11
「ティナ! ティナ! ワシじゃアッシュじゃ! せっかく久しぶりに会えたんじゃ! 何とか言ってくれいっ!」
「あ、アッシュ……!?」
ティナを覆う光がふっと消えた。そしてこちらを見て、驚きに目を見開く。
「お……おぉぉぉ――小さいアッシュじゃ、これはこれは、可愛いのぉ……神が最後に私に、幻を見せてくれているんじゃろうか……」
その目に見る見る、涙が溢れて行く。
「いやいやいや! 違うぞい! これは現実じゃ!」
「げ、現実じゃと……!? で、では何故小さなアッシュが……!?」
「ワケあってこんな姿になってのう! あの時の約束を果たしに来たぞい!」
「お、おおぉぉぉ……い、生きているうちにそれが聞けるとは……やっぱり夢のような気がするのう――」
「積もる話は後じゃ! 屍竜使いドルミナとやらがお前を乗っ取ったと聞いたんじゃが、もう大丈夫なのかの……!?」
「!? そ、そうじゃ私は……! は、早く逃げろ! このままでは私は……っ! 私はああぁぁ……っ!」
ティナの体が、再び先程の輝きに包まれた!
「!? ティナ!」
「触るな! 下郎!」
振り払う手が物凄い衝撃を発し、ワシの体は後方に大きく吹っ飛ばされた。
「……っ!? うおおぉぉっ!?」
途中で剣を床に突き立て、ブレーキをかけて止まる。
「くっ……! ティナ! どうしたんじゃあっ!?」
「騒ぐな! 騒々しい――っ! 出でよ! 天竜、冥竜!」
ティナがサッと手を振ると、その足元から黒い影が分かれて行き、二つに分かれ、そしてどんどんと巨大化して行った。
それから竜の形を取ると、盛り上がって実体化をして行く。
キシャアアアアァァァァッ!
純白と漆黒の、それぞれ対照的な竜鱗を持つ美しい竜だった。
外にいた火竜や飛竜の、それぞれ倍近い大きさがある。
「ドルミナ殿、お呼びですか……?」
「何なりとお命じを下さい」
「! 喋りおるか……!?」
体の大きさ、威圧感。そしてドラゴニュートでないのに喋る。
普通のドラゴンとは一線を画した強敵――?
「聖剣降臨の儀はもうすぐで為る! あのような者に邪魔をさせるなっ!」
「「ははっ!」」
「やはりお主が屍竜使いドルミナ……!? 聖剣降臨の儀とは何を企んでおるんじゃあ!」
「――さっさと殺してしまえ! 妾は儀式を続ける!」
「……ですがこの場は窮屈です」
「この邪魔な天井、フッ飛ばしてもいいですかねえ?」
黒い竜に続き、白い竜が言う。
黒い方は真面目そうで、白い方はやや砕けた感じだ。
「よかろう。好きにせい!」
「ありがとうございます」
「ヒャッハーーーーッ!」
二体の竜は一斉に天井に首を向け、巨大な口から光線のようなブレスを吐き出した。
ズゴオオオオオオォォォォォッ!
黒い竜は黒い光。白い竜は白い光。
それが天井を焼き尽くし、更にその上の城の天井も幾重にも貫いて、空まで到達する大穴をを開けた。
「……凄まじい破壊力じゃのう――」
外で見た火竜などとは比べ物にならないかも知れない。
「ふふ……これで多少はマシに動ける」
「ひっさしぶりにお天道様を拝めたなァ!」
「そうだな、太陽はいいものだ」
「だが、オメェをブッ殺したらまた戻らなきゃならねぇ」
「だから、出来るだけ長く生きて見せろよ。我々に日光浴をさせてくれ」
「そうだぞ、くそチビが! まあこの俺達の前にゃ、無茶な話だがなァ!」
と、ワシに向かって天竜、冥竜が言ってくる。
ワシを一瞬で仕留められると思っているようだが――?
「おぬしらの方こそ、一瞬で日向ぼっこを楽しむ間もなくなる事を心配するがええ。逃げるなら今のうちじゃぞ? ワシは急いでおるのでの」
「ほう……!? 面白い冗談だ」
「ヒャッハッハハハハ! 俺達二体を前にして、よく言ったぜカスが!」
「二体じゃから――かものう」
「何を訳の分からぬことを! じわじわと嬲り殺して喰らってやろうと思ったが――」
「止めだ止めだ! テメーは俺達を怒らせた! 瞬殺だ! 瞬殺してやんぜぇぇぇっ!」
「そうじゃの。決着が早いのはいい事じゃ。結果はさて置きのう」
「フッ! いい度胸だ! ならば喰らえ!」
「死ねええぇぇぇっ! 蒸発しろ消滅しろ霧散しろおぉぉぉぉっ!」
ズゴオオオオオオォォォォォッ!
二体が同時に、ワシに先程のブレスを吐き出してくる。
――計算通り! これでいい!
ワシはその場を一歩も動かず、あえてブレスに身を晒す。
ワシに触れた黒と白のブレスは、何も起こさずきれいに消滅して行く。
無論ワシが【収納】したのだ。
「「な、何イィィィッ!?」」
驚愕する二体の竜である。
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