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黄金のメルディーラ 〜魔石で大切な人を楽にしたい〜  作者: タルミア


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44 冷たい霧

 目が覚め、普通の日常を過ごして研究室にこもった。今回もマミーユとカリーレも一緒に、楽しい魔石研究会が始まろうとしていた。


「マミーユは細長い糸を作っておいてくれるかしら」

「かしこまりました」


 快く返事をして、水の魔石が置かれている席に座り、早速コネコネと魔石を揉み出す。カリーレはと言うと、マレリルズから水道の部品が届いたものを組み立てるお仕事を始めた。


「私は水道を組み立てておきます。組み立てる人員が不足してるそうなので」

「組み立てたらたくさんお金を貰ってきなさい」

「心得ています」


 胸の前に手を添えて、ニコッと笑顔を私に向ける。なんて頼もしいのでしょう。

 そんな私だが、紙とペンを持ちながら、どうすればお湯を作る水道と涼しくなる服を作れるのかを書き記している。


 まず、水の魔石を糸にするのが間違いなのかもしれない。柔らかいままにする方法としても、平民の魔力を使って柔らかくするぐらいしか思いつかない。

 では、どうやって魔力を供給し続けるのか。それすらも未解決のままである。


「わからない。わからないわ……」

「お嬢様、そんなに難しく考えなくても良いのでは?」


 マミーユは魔石を糸にする作業を止めずに、私にそう言った。彼女の言った通り、何も服にこだわる必要は無いと思う。


「そうね、風の魔石を何かに使えないかな」


 独り言のように呟き、私は天井を見つめる。その時ビビッと脳が震えた。そう、天井に魔石を埋めればいいのだ、と閃いたのだ。


「カリーレ! 木の板を持ってきなさい!」

「あ、はい!」


 水道を作る作業を止め、ピンッと立ち上がり猛ダッシュで木の板を持ってきた。こんなに用意がいいなんてどこにあったのだろう、と思いもするが、今はそんな場合じゃない。


「カリーレ、木の板を高めに持っておいて」

「こうですか?」

「それでいいわ」


 木の板を横にして、机の上で少し高く持ち上げる。カリーレが木の板を持ってきてもらっている間に、風の魔石に水の魔石糸をぐるぐるに巻き付かせておいて、木の板の上に置いてみた。


「マミーユ、魔力核を置いてちょうだい」

「はい」


 コトン、と音が板に響き、魔力の動きを観察した。しっかり魔石が魔力を吸い込み、霧のようなものが魔石から出てきて木の板を這うように広がって行った。

 木の端の方へ迫ると、霧は下に垂れ始める。


「お嬢様、冷たいですけど、下にしか行きませんね」

「冷たいものは下に行く性質なのでは?」


 カリーレの手には直に霧が当たっている。川の水ほどの冷たさをしていると彼女は言った。ならば、上にこういうものを吊り下げれば、下にいる私たちは涼めるのかもしれない。


「風の魔石は残って、括り付けた水の魔石だけが無くなっていきましたね」


 マミーユの言っていた通り、水の魔石だけが無くなり、中心にあった風の魔石だけが残る。やがて霧も消えて、弱い風だけが魔石からやってくる。


「マミーユの言った通り、括り付けるだけではダメみたいね」

「なら、水と風を両方糸にしたあと、クルクルにしたら同時に無くなるのでしょうか」


 普通の糸を作る時も、二本の細い糸をクルクルにして服に使われる糸を作っているらしい。マミーユがいなかったら、そんな事分からなかった。


「棒状になった水風の魔石になるわね、魔力の供給はどうしようかしら」

「魔力核を棒状にすることはできませんでしたが、粉にして糊でくっつけて棒状にするのはどうでしょう」


 今日のマミーユは何だか冴えている。早速魔力核を棒状にして、カリーレの魔力を入れる。そこで新たな問題が発生した。

 魔力核を収めておく鉄の入れ物がないのだ。せっかく魔力を入れたとしても、反対側から魔力が漏れ出てしまう。


「とりあえず、近くに置いて動きを観察しましょうか」

「そうね、魔力増幅魔石も同じやり方で間に挟みましょうか」


 まあまだ実験段階なのだから、そこまで気にすることでもない。なので、保険として増幅魔石も魔力核と同じように棒状にしたあと間に置き、三人で観察する事にした。


 ジーッと三人で見つめる中、霧が出てきた。今度は同時に溶けるように消えていき、上にも霧を噴射して下に落ちるようになった。風魔石が水魔石の下にある状態だと、そこから放物線を描くように落ちていくようだ。


「これなら、できるかもしれないわ!」

「お嬢様、手がちょっと……」


 流石にカリーレの手は木の板を持ち続けたせいで、ダルくなってきたそうだ。それにより、木の板が少し傾き始め、魔力増幅魔石がコロコロと魔力核に近づいた。

 ピタッとくっついた瞬間、魔力が大幅に増幅させられ、魔石からすごい勢いで霧を噴射しだした。


「うわあわわ!」


 カリーレの顔に霧が思い切りぶつかり、情けない声を出しながら木の板を離してしまった。

 机の上にバタッと木の板が大きな音を立てて落ちた。


「カリーレ様!? 大丈夫ですか!」

「だ、大丈夫……ただの水なので」


 マミーユはホッと胸を撫で下ろし、私も同じように安心する。カリーレの顔には水滴が付いて、ちょっとベタベタになっている。


「マミーユ、カリーレ、見た? 増幅魔石は魔力核に近づければ近づくほど、魔力をたくさん増幅させるみたいよ!」


 一瞬で頭を切り替え、さっきの実験結果を紙に書き記す。


「お嬢様……もうちょっと心配してくださいよぉ」

「カリーレ様、こうなったお嬢様は何も聞こえないかもしれないです」

「まったく……」


 カリーレはため息を吐き、私の書き物を終わるのを待つ。マミーユは、魔力核に増幅魔石を近付けたり離したりして、さらに詳しく調べようとしている。


「距離によって強さが変わるのですね、鉄で閉じ込めるなんてすると、どのようになるのでしょうか?」


 マミーユにそう問われる。確かに、今は鉄の入れ物がない状態で、カリーレの顔をベタベタにしたぐらいだ。どれくらいの風量が出るのかが気になる。


「カリーレ、着替えたあと、バルスクに依頼してきてちょうだい」

「かしこまりました」


 カリーレはササッと部屋を出て行き、私とマミーユだけがこの場に残った。


「あとは何しようかしら」

「お嬢様は昼食ですよ」

「……はぁい」


 食べるのも惜しんで研究したいところだけれど、マミーユが絶対に許してくれないだろうなので、適当な返事を返す。マミーユは短いため息を吐きながら、食事の間へ一緒に向かった。

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