↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金のメルディーラ 〜魔石で大切な人を楽にしたい〜  作者: タルミア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/82

37 会食

 いつも通りの支度を終えたあと、領主の館の訓練場へとやってきた。


「遅いぞ、いつまで待たせる気だ」


 朝食を食べてすぐ飛行してきたというのに、この有り様である。流石にずっと我慢なんてできるはずがない。


「わたくし、朝食食べたばっかりで、光の足場を使って飛んできたのよ? 寛大な心をお持ちになって?」

「君がもっと早く起きればよかっただけではないか。朝食なんて、食べずとも人は生きていける」


 健康という言葉を知らなそうなその脳みそに、思いっきり野菜で叩きつけてやりたい。レオネットも野菜を食べるのは健康のため、大事な事だと教えてくれたのだ。


「お二人とも、口喧嘩は終わりにしてください」


 レオネットが睨み合う私たちを制し、話を変えた。ふんっ、と二人でそっぽ向き、視界の端ではレオネットが大きくため息を吐いている。


「おお、皆おそろいじゃないか」


 そこへサイベルもやってきた。今回は私と一緒に訓練を行うそうだ。


「二人とも、またやってたのか……」


 私とブリジストがそっぽ向いているのを見つけたサイベルも、レオネットと同様に大きなため息を吐きながら肩を竦める。


「なんの事かしら、喧嘩なんてこれっぽっちもしてないわよ? ねえ、ブリジスト様」

「ああ、そうだ。こんなガキ一人と喧嘩するほど、私は大人気ない人ではない」

「貴方! ガキって言ったわね!」


 まるで猫のようにシャー! と威嚇しながらに睨むが、何百年も生きた魔族には効かなかった。だが、次こそは地にねじ伏せたあと、反省させてやるのだ。


「まぁまぁ、今日の特訓は、まずは走り込みだな、お嬢ちゃん」

「走るのは苦手よ」


 サイベルは少し屈みながら、目線の高さを合わせて言った。

 走るのはどうも苦手だ。逃げる時だったらたくさん走るが。


「俺も一緒に走るから、心配するなよ」

「それならいいわ、わたくしのペースについてこれるのかしら」


 なんというか、自信は全くないのに強気に出てしまった。その後は「その意気だ!」とサイベルに言われ、誰もいない広すぎる訓練場の中をひたすら走り、途中で倒れる。だが、ブリジストは「まだ立て」と遠くから声を荒らげるだけで何もしない。


(くっ……いつか後悔させてやるんだから!)


 ブリジストへの怒りは増すばかりで、彼自身も怒らせようとしてる訳では無いと思う。何百年も生きると、変なおじいちゃんになるのだなと実感した。


「ぜぇ……ぜぇ……もう、むり」


 バタッと倒れ込む私を見たサイベルは「まだ一周もしてないのだが……」と小さく呟いた。五歳児になんて事をさせるのだ。そう言ってやりたい。


「次は筋肉をつける訓練だが、一旦休憩するか」


 サイベルは優しく手を差し伸べて、訓練場の片隅に座らせてくれた。遠くからは「こら! 何座ってるのだ! 早く立って走れ!」と怒鳴り声を響かせる魔族じいちゃんがいるが、そんなのは今は無視無視。

 相手するだけ時間の無駄だし、体力の無駄になってしまうのだから。


 息が整ったところで休憩が終わり、重たそうなものがずらりと並べられた。


「左から軽い順だ。一番右はサイベル用だ」

「では、始めさせていただきます」


 サイベルの言葉にブリジストは小さく頷き、許可した。サイベルは重たそうなものが、棒の両端に付けられてるものを片手で軽々しく持ち上げた。

 鉄でできた装備もあるのに、軽々しく持てるなんて、さすがサイベルた。


「さっそくわたくしも!」


 いつもの好奇心に火がつき、一番軽い左のものを持ち上げてみるが、ビクともしない。これでも聖女なのですよ。きっと。


「お、おもたい……」

「ふっ、小娘」


 ボソッと呟くブリジストに、私は身体強化でダンベルを持ち上げて投げる。ブリジストは反射的に右へと逸れた。


「何をする気だ」

「おっとっと、手が滑って……」


 当然わざとである。先程まで持ち上げられなかったというのに、投げたのだ。ブリジストも気づいたのだろう。ものすごい怖い顔になっている。


「もう勘弁してくれ……」


 流石にサイベルも、この空気にいさせるのはかわいそうだし、大人げないところを見せるわけにもいかない。


「サイベル、あなたは少しお休みなさい。あとはわたくしなりに努力するわ」

「お言葉に甘えさせていただきます」


 一つ礼をしたあと、レオネットの隣へと立ち、見張りとなった。


「君は本当に聖女なのか?」

「そう言われても、あまり実感がないわよ」

「そうか、君のような聖女ならば、人も安泰だろう」


 急に何を言いいたいのか、よく分からなかった。ブリジストはサイベルとレオネットを見つめながら、悲しそうな、寂しそうな顔をしている。


「何かあったの?」

「なんでもない。続けるぞ」

「……はぁい」

「しっかり返事をしなさい」


 またいつものブリジストに戻り、グチグチと口うるさくなったが、さっきの顔を思い出しては、気になってきてしまう。

 聞くにしても、そこまで信頼していないし、されていないだろうし。これは追々考えることにして、重りを何度も持ち上げては放り投げる。その都度怒鳴られる。


 領主での訓練は午前を終わらせ、今度は午後に備えるためのご飯をいただくことになった。レオネットとブリジスト、一番後ろにはサイベルも着いてきている。


「ご飯は一体なんでしょうね! とてもお腹が空いているのよ!」


 思わず踊りたくなるほどにお腹がす空いている。朝の訓練というのは、良いものだ。


「あれしきの訓練で腹が減るとは、どれだけ体力も筋力もないのだ……」

「そうおっしゃらないでください。賢いですが、まだ五歳です」


(そうだ! レオネット、もっとブリジストに言ってやれ!)


 レオネットに応援を送り、褒めてもらうのと、ブリジストをギャフンと言わせる言葉を期待したが、ブリジストが喋りだしてしまった。


「歴代聖女たちは、五歳児から力を使いこなしていたというのに……」


 ブリジストの言葉が言い切る前に、食事の間にやってきた。扉をくぐると、既に五人が座っている。領主一家だ。


「やぁ、メルディーラ。今日は一緒に昼食がとれて嬉しいぞ」

「リーレルト様……お久しぶりでございます」

「ああ、久しぶり」


 リーレルトへの挨拶を終わらせ、辺りを見渡してみる。まずは領主様へ挨拶だ。一人ひとりに挨拶は面倒くさいので、いっぺんに済まそうと思い、裾をつまみ上げる。


「初めての方、お初にお目にかかります。メルディーラともうします。この出会いが幸運そのものでございます」


 言い切ったあと、思い出した。領主様とは一回会った気がする。恐る恐る顔を上げてみると、夜中に脱走した日に連れてこられた時、この人の顔を見たことがあった。

 長い銀髪に青い瞳。リーレルトにどことなく似ている顔立ち。あの時の領主だった。


「久しいな。座れ」

「はい、失礼します」


 扉の近くの椅子に座り、ご飯が運ばれてくる。気まずい空気の中でご飯を食べ続けながら、視線を前に向けてみる。成人祭で見た、真っ白な髪をした女の子がいた。

 お互いが気まずく、小さく一礼をして、またご飯に視線を戻した。


(なんなのこれ! せっかくのご飯が味がしないわよ!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。