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黄金のメルディーラ 〜魔石で大切な人を楽にしたい〜  作者: タルミア


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4 お屋敷で迷子

「メルディーラお嬢様はリュンレルテ様のことどう思われましたか?」

「素敵な方ですよ、わたくしとお友達になりたいと言ってくれました」


 私は自信満々にそう言った。たしかに、私は社交能力では負けた。だけど、私と仲良くなりたいと言った。とてもいい人だと思う。そう考えていると、マミーユが口を開く。


「ですが、メルディーラ様の頭脳が欲しいと言っておりました」

「それは、どういう意味なのでしょうね」


 レオネットは眉間に皺を寄せ、顎を摘む。少し考えて、私を見つめた。


「メルディーラお嬢様は、何をお話に?」


 包み隠さず、全て話した。そうすると、レオネットは馬車の床を見つめ、また考え始める。


「レオネット? なにかおかしいことありましたか?」

「いいえ、なんでもありません。マミーユとカリーレはしっかりお嬢様を見ておいてください」

「はい」


 二人は鋭い眼差しのレオネットに見つめられ、ビクッと姿勢を伸ばして返事をした。二人も厳しい教育を受けているようで、ちょっと親近感が湧いた。


「さぁ、お屋敷に戻りました。後のことは二人から聞いてください」


 私たちは馬車から降りると、玄関へと歩いて行った。馬車は領主のものなので帰っていったが、馬車初体験としては楽しかった。


「レオネットはどこに行くの?」


 私はレオネットを見上げ、尋ねる。少し歩く速さが上がっていた。


「私は少々お仕事をしてまいります」


 それだけ言うと追いつけない早足で行ってしまった。走ればもしかしたら追いつけるかな? とも思ったけれど、絶対にはしたないと怒られそうなのでやめた。


「わたくし達も部屋に行きましょうか」


 振り返って、二人に言う。二人は頷き、先頭にカリーレ、後ろをマミーユが歩き、自室へ戻った。

 二人からは服を剥ぎ取られ、普段着へと服を着せられた。今回は色は目立たないように白色で飾りや刺繍はあまりされていなかった。だが、裾はフワッとしている。


「では、報告いたします」


 マミーユは私が勉強机の椅子に座ったのを確認し、口を開き、報告を始める。


「四日後の午後にリュンレルテ様とのお茶会があります。それと、リーレルト様からもお茶会の予定が来ています。いかがなさいますか?」


(い、いつの間に……)


 リーレルトからの急なお茶会のお招き、いつどこでと思ったけれど、そういえば、私の後ろに召使いが歩いていた。気配が全く気づけなかった。


「断れないですよね」


 恐る恐るそんなことを聞いてみる。分かっている。そう、分かっている。


「断れません」


(ですよね……)


「なら、七日後でもよろしいでしょうか」

「七日後の予定はあちらも問題ないとのことでした。お手紙を書いてまいります」


 仕事が早くてとても助かります。と頭の中でそう思う。だけど、あの召使いもリーレルトも目での合図や、仕草は何も無かったのに、召使いは瞬時に主人の意向を読み切った。流石としか言えない。


「そういえば、魔力の感覚を覚えなくては、リュンレルテ様にお話しましたし……」

「そうですね、私が教えましょうか?」


 マミーユが部屋を出ていき、カリーレが嬉しそうに魔力に反応した。もしかして、得意なのだろう。


「わたくしはまず何をするべきかしら?」


 カリーレは人差し指と親指をピンッと立たせ、顎にくっつけ、考えながら何やらぶつぶつと呟いている。魔術のことが好きなのだろう。目が真剣になっている。


「まず、魔術を放ってもらった方が早いかもですね、庭へ行きましょうか」


 そういうと、ドアを開き、私の移動を待っている。ものすごい素早さにちょっと引きそうになるが、私は庭へと向かった。自室から出て右側にあるそうだ。


「まず、魔術を発動させるには詠唱が必要です」

「はい」

「そして、勝手に魔術が出ます!」

「勝手に?」


 庭に出た私たちは、適当な説明をしたカリーレに少し困惑した。他にちゃんと説明してくれないだろうか? と思う。


「そうです、勝手に火や水が出ます」

「いや、勝手にとかでは無いと思うのですが」

「そうは言われてましても、出るものは出るのですよ? 魔力がある限りですが」


(それだけじゃ分からないよ!? 先生間違えた……)


 そう心の中で呟いたけれど、仕方がない。もうやるしかないのだから、腹を括るしかない。


「では、手のひらを向こうに向けて、詠唱します。復唱してください」

「分かったわ」


 返事をすると、カリーレは同じように手のひらを同じ方向へと向け、詠唱を始める。


「火の炎よ 我の声を聞き届け 我に力を与え給え」


 言った瞬間、カリーレの手からはボっと音を立て炎が立ち上がった。手のひらには陣があり、その先に炎がある感じだ。私の手からは何も現れない。


「魔術の才能が、無いのでしょうか?」

「い、いえ! 適性じゃなかっただけかもしれません! 他のも試しましょう……」


 結果的に火、水、土、風。

 何度試しても、私の手からは何も現れなかった。魔術は使えなくても仕方が無いし、ほかのことをやるしかないと思う。魔力はあるみたいだし。


「お、お嬢様。もしかして、闇か光の適性でしょうか?」

「闇と光、ですか。そんなのがあるのですね」


 発動しない魔術に、私はすっかり興味を失っていた。さっさと帰って、マミーユの淹れたお茶を飲みたい。後、太陽が眩しい。


「とりあえず、やってください! 一度見てみたいです!」

「はぁ……」

「そんな面倒くさそうにしないでくださいよぉ」


 お願いされたのだから、やるけれど、面倒くさい。本を読んでる方が有意義だと思う。絶対。

 カリーレがまた詠唱を言う。それを私は復唱する。


「天より降り注ぐ聖なる光よ 闇をも退くそのお力を この世界を照らし給え」


 長ったらしい詠唱を終え、私の手から魔法陣が浮かび上がる。そして、ぷわぷわと光の玉が浮いていた。小指の第一関節並みの大きさだ。


「お、お嬢様、光の適性……」


 そう言いながら、カリーレは目を大きく開き、驚いていた。恐らく、初めて見たのだと思う。多分。


「カリーレは四つも使えたじゃない、私はこれだけよ」

「四つ使えるのはみんなそうですよ……」


 カリーレは悲しそうに微笑んで、光を見つめていた。

 私はカリーレの言葉に、そうなんだ。と思い、私のちっさな光を見つめてみる。たしかに、手のひらからなにか吸われてる気がする。ちっさすぎて全然わかんないので、もっと大きくしようと思い、一気にやってみた。

 指の第一関節から、手と肘の間あたりの大きさにまでしてみた。


 感覚はよく分かった。これが魔力なのだろう。早く消してお茶を飲もう。喉が乾いた。

 そう思い、カリーレを見上げてみた。口をぽかんと開いている。


「そろそろ消したいのだけれど、どうするの?」

「え、まだ魔力があるのですか? ここまで大きくしましたのに?」

「よく分からないわ。早く消させて欲しいの」


 これ眩しい。瞬きする度に、まぶたの裏に光の点々がつく。あまり使わないと思う。これ。


「魔力を止めれば消えます。やってみてください」


(魔力を止める? 流すのはできたけれど……)


 全く意味がわからない。どうやって止めればいいのか。大きく念じれば大きくなって、勝手に魔力を引き出されていた。けれど、小さく念じても消えたりしない。もう面倒くさくなって「飛んでけ!」と叫んだ。

 その声にカリーレは苦笑しながら、じっと光を見つめる。

 

 光の玉はふわふわとどこかへ飛んで行き、もう魔力は引き出されていないので、放置することにした。


「カリーレ、マミーユを呼んでちょうだい。お茶を飲みたいわ」


 そういうと、「では失礼いたします」と言って、屋敷に入っていった。

 私も屋敷の中に入ったけれど、カリーレは先に行ってしまったせいで、どこから来たのかが分からないので、右に進んだり左に進んだりしてみる。自分のお屋敷で迷子になった。


 適当に歩いていたら、ドアが少し開いていた部屋を覗いて見た。そこは厨房のようだ。


「失礼いたしますわ!」


 ドーンとドアを大きく開き、ふふんと仁王立ちしてみた。誰もいなかった。少し頬を赤く染めながら、中に入って、茶葉を探してみることにする。


「わたくしだって、マミーユのお茶を淹れるところを見ていたのですもの、できるはずです」


 それが私の厨房を漁る理由だ。ちょっとだけお菓子のつまみ食いは許されるだろう。少しだけなら。


 椅子を使って上にあるものに手を伸ばしたりして、掴む。そして落として割れる。中身は白い粉だった。舐めてみたらしょっぱい。これは多分塩だろう。

 次は違う棚に置いてあるやつを見つめる。これは少しいい匂いがする。多分ここに茶葉があるのだろう。


 これもまた椅子を使って手を伸ばす。今度はちゃんと掴み、蓋を開けて中身を見る。中には緑色の粉が入っている。いい匂いがするので、多分これが茶葉だろう。私はそれを持って椅子から降りる。


「あ……」


 さーっと音が鳴る。蓋の割れる音ともに。中の茶葉が全て出てきてしまった。降りる時につかめれる所を掴もうとして、器が傾いてしまったのだろう。仕方がない。違うのを探そうと椅子にまたよじ登ろうとしたところに誰かが後ろに立っていた。


「メルディーラお嬢様! 何をしているのですか? お怪我はありませんか!?」


 この声はレオネットだ。ものすごく怒っている。眉尻を上げて、深く皺を刻み、眉間を寄せている。なぜ怒られてるのだろう。


「お茶が飲みたかったので、茶葉を探していたのです」


 ふふんとやり直しの仁王立ちをする。レオネットはひとつため息を吐いた。

 勝手に出歩いていることに怒ってるのだろうと思う。いつも誰かと一緒だったから、そうなのだろう。


「なぜ厨房を散らかす必要があるのですか?」


 まだ怒っているらしい。が、いつものレオネットの無表情に戻っている。


「わたくしは荒らしてなどいないですよ、ただ茶葉を……」


 言い切る前にレオネットが手を上げ制した。そして歩き出す。真ん中のでかいテーブルみたいなところまで行き。ちっちゃな白い壺を持ってきた。


「これが茶葉です、お嬢様。お茶を準備しましょう。こちらに来てください」


 私は大人しくレオネットに連行され、お茶を出された。食事の間でのお茶だ。二口飲み、ふぅと息を整えた。


「レオネット? まだ怒っているのですか?」

「怒っていませんよ。もうひとりで出歩かないでください」


(やっぱりちょっと怒っていそうです)

「ねえレオネット、厨房を散らかしてごめんなさい」

「あれぐらいなら、猫よりかはマシですよ。お気になさらず」


 無表情のレオネットだが、少し安心しているようにも見える。さっきの大声にはビクってしたけれど、結局わがままを聞いてくれるレオネットは優しいと思う。きっと。


「あとでカリーレとお話しなくてはなりませんね」


 お茶を半分ぐらい飲んだ後、そう呟いたレオネット。血の気が引いていく感覚が、湧き上がってくる。


(カリーレ! 頑張ってくださいませ!)


 私は心の中でカリーレに小さな応援をした。

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