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黄金のメルディーラ 〜魔石で大切な人を楽にしたい〜  作者: タルミア


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19 居場所

 一人で大通りを真っ直ぐ進む。看板には文字はなく、絵がついてるだけだった。


「ここは、なにかしら」


 見つけたのはハンマーみたいなやつが二つ交差してる看板だった。中からはカンッカンッとなにか叩かれてる音がする。


 正面玄関には鍵かかっているので、盾で裏に回って覗いてみる。


「こんなので本当に上手くいくのか……?」


 窓から中を伺ってみるとそう呟く大柄な男性がいた。その顔は知っている。ハゲ……もとい、髪のないバルスクがいた。


「バルスクよね……こんな時間に何してるのかしら」

「誰だ?」


 私の呟き声に気づかれてしまった。どれだけ耳がいいのだ、と思いながら両手で口を抑えながら、窓から離れようとするが、一歩遅かった。

 既に窓から顔を出しているバルスクが私を見つめている。


「おい、フードを取れ、顔をしっかり覚えてやる」


(ひぃぃぃぃ! やっぱり来るんじゃなかった!)


 少し後悔しながら「は、はい……」と声を出してフードを取ると、情けない声が飛んでくる。


「え、えぇ!?」

「何をしてるのか言いなさい!」


 とりあえず、貴族の威厳を見せつつ、中に案内される。熱くてむさ苦しい。


「あ、あのなぁ……なぜ来たんだ」

「平民街が気になるからだわ」


 困惑したように八の字にした眉と共に深いため息を吐くバルスク。その姿に私はむぅと頬を膨らませ、言葉を続ける。


「だ、だって、気になるんだもん。誰にも言ったらダメよ」

「メルディーラ様は誰にも……言ってないのか?」


 驚きを隠せず、口を大きく開け、閉じようとするが無理のようだ。


「あのな、ここに無断で来たら、俺の首が飛ぶんだからやめてくれ……」


 それはなんか申し訳ない。


「わたくし、無断で来たのよ?」

「平民街で暮らしている平民の俺が、貴族の子供と一緒にいる、それだけで拉致されたと言われるんだ」


 そうだよね、貴族と平民の壁というやつだろう。


「とりあえず、帰った方がいい、ここにいると俺もお前も危ない」

「……はぁい」


 仕方なくその言葉に従うことにして、足場を作って外に出た。すると、外に大きな赤い光の玉が上がっていた。


「やばいぞ! 騎士が来る! いけ!」


 声を大きく出したバルスクに言われ、私は急いで貴族の森へと向かう。


(やめておけば良かったぁぁぁぁ!)


 さすがに良くないかもしれない。足場を次々と出し、走っていると貴族街から三人の人が飛んでくるのが見える。


「こっちはダメよ、反対に逃げるのよ!」


 急な方向転換をして、反対側に逃げる。背中の冷や汗が止まらず伝う感覚に、尚更焦りがやってくる。


「おい、止まれ!」


 騎士の誰かが大声で叫ぶが、私は絶対に止まらない。止まれば絶対に怒られるのだから。


「いやよ! わたくしの好奇心のせいだもの!」


 もう既に横にいる騎士たちは私と並走している。言葉に拒否し続け、屋根に小さな窓がある所に身を隠すことにした。当然すぐバレてしまう。


「其方、ここで何をするんだ」

「か、かくれんぼ?」

「魔力を封じるから暴れるな」


(ひぃぃぃぃ!)


 魔力を封じられたら、さすがに何も出来ないただの子供になってしまう。それだけは避けなければ、と思っていると、既に手枷がはめられていた。


「何をするのよ!」

「フードを取って顔を見せなさい」


 フードを捲られると、その騎士の顔があらわになると同時に、私の顔もバッチリ見られてしまった。これで手配書が回ってしまうのだろうか。


「髭が濃いわね……」


 ついうっかり口が滑ってしまった。騎士の顔は困惑した顔になり、何も言わずに私を担ぎあげて貴族街へ飛んだ。

 この走らないのは羨ましい。私なんて直ぐに息が上がって、立ち止まらなくてはならないので、この技術を習得したいところだ。


「わたくし、怒られるのかしら」

「当たり前だ。そもそも、光の足場なんて夜に出せばすぐにバレるだろ」


 盲点だった。確かに夜に光らせればバレる。そこをしっかりすればバレないのかも。


「今からどこへ?」

「領主の館だ」


 この茶髪の短髪オヤジに担がれて、手と足が風に揺られる。そして着いた所がお披露目お茶会をした館だった。


「まさかここが領主のお屋敷だったとは……」

「他のものは戻れ、ここからは私だけで十分だ」

「はっ」


 騎士の短髪オヤジは他二人に指示を出して、私を担いだままお屋敷の中に連れてかれた。

 怒られると戦々恐々としていると、扉の前まで立ち止まって三回扉を叩く音が響いた。


「入れ」


 中からは威厳がたっぷりある低い声が帰ってくる。リュンレルテのお父さんに挨拶したように緊張で、今にも膀胱が緩くなりそうだ。


「その子は? さっきの信号弾のやつか」


 担がれてるせいで短髪オヤジの背中しか見えない。挨拶をしないと無礼になりそうなので早く、下ろして欲しい。


「はい、子供が勝手に平民街へ飛んだみたいで」

「子供にはまだ飛行魔術は教えないはずなのだが……まぁいい、顔を見せろ」

「はっ」


 短い返事をした短髪オヤジは私を下ろして、フードを取って顔を見せる。領主は銀髪の長い髪をした男性だ。どことなくリーレルトに似ている、しっかり親子なのだ理解出来る。


「お初にお目にかかります。わたくし……」

「いやいい、噂通りの子だな、さっさと家に帰れ」

「え、わたくしの名前……」


 なぜ私のことを知っているのか気になったが「さっさと連れて行け」と騎士に言って、私はまた担がれて自分のお屋敷の前までやってきた。


「なぜ、わたくしのことを知っているのかしら」

「其方はある意味有名だからな」

「また悪目立ちしたのね……」


 その言葉に返す言葉が見つからなかった短髪オヤジは手枷を外してくれる。自分の手首を触り、重みがあった手は軽くなった。


「もう脱走するなよ、仕事を増やすな。わかったな?」

「もう怒られたくないわ」

「うむ」


 短髪オヤジはさっさとその場から飛んで立ち去ってしまった。私は玄関を開け中に入ると、ロウソクが全て灯されている。全員が私の目の前までやってきた。


「メルディーラお嬢様。なぜ、この夜中に外出を?」


 怒られる、と思いきやカリーレに横から抱き寄せられる。


「良かった……攫われたのかと」

「そんな大袈裟よ?」

「メルディーラお嬢様。本当に危ないのです。もうやめてください」

「ごめんなさい」


 皆に怒られるのと同時に安堵の色が見える。心配もかけてしまったんだと実感する。


「お嬢様。ご無事で何よりです。これから、私が不寝番をします」

「え、マミーユ。それは……」

「ふぉふぉ、みんなが心配しておられたのですよ、もちろんこの私もです」


 マミーユもレリアナートも、すごく安心したような笑顔で私を見つめる。こんな時間に起こして申し訳ない。本当に。


「カリーレ、離して」

「え、はい……」


 しっかり謝らないと。これは私だけの問題では無い。貴重な睡眠時間、それから、私を思って家中を探したのがよくわかる、家の現状。

 私は裾をつまみ頭を下げて、謝罪する。


「みんな、この度は多大な心配と迷惑をお掛けしました。もう二度とこのようなことは致しませんわ」


 しばらく沈黙が続いたあと、私は許してもらえるのか気にしながら顔を上げてみる。マミーユは目を潤ませ涙を流して、また抱き寄せられる。


「本当に心配しました……もう、勝手に居なくならないでください」


 その言葉が心に刺さるような感覚を味わう。家族を心配させるのは、こんな感じなのだろう。その瞬間、私は視界が滲んで見えた。私は困惑した。


「ごめ……なさい」


 涙の正体もわからず、安心感に駆られながら言葉を出した。


「いいの、もういいの。今無事で帰ってきたのですから」


 そう言いながら、涙を拭ってくれて、皆の顔がよく見えるようになった。カリーレも涙目になっており、レリアナートも目を拭っている。レオネットは背を向けて顔はよく見えない。だが、安心している背中はよく分かる。


「もう眠たくなってきたわ……」

「仕方ありませんね……」


 苦笑するマミーユに抱っこされて、私の自室へと向かった。皆は玄関前で解散し、レオネットだけが着いてくる。


 私はマミーユの手の中で揺れて、目を閉じて眠った。

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