表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレゴール・キング殺人事件  作者: ナツ & Kan
27/64

27 羽黒祐介の誘い

 海が暗くなり、そして黒くなった。隣の部屋では未だに長倉 理沙の尋問が行われていた。 やがて月が輝き始めると、部屋のドアが鳴った。羽黒だった。

 

 「どうしました? 」と僕は言った。

 

 「取り敢えず、一段落がついたので。皆さんも今日のところは自由に行動してもいいらしいです。そう根来さんに言伝てを頼まれました。もちろん、この事件については秘密にしてもらうことが条件です」

 

 「……長倉 理沙はどうなりました? 」

 

 羽黒は首を振った。

 

 「まだ、根来さんは彼女を拘束するつもりらしいです。と言っても、部屋は他に移すのでしょうが」

 

 「なるほどね。それはいつ頃までですか? 」

 

 「根来さんの気が済むまで」

 

 僕は肩をすくめた。


 「なんで彼ってあんなに怒る人なのかな? 」

 

 「正義感の強い人なんですよ。一つのことを正しいと思ったら、梃子でも動かないんです」

 

 「無鉄砲なだけでは? 」

 

 羽黒はそれに困ったように笑った。別に否定もする気もなければ、肯定することもありません、と彼は言った。それは根来さんの闇であり、希望なんです。そして人差し指を立てて、思い出したように言った。

 

 「そうだ、お腹は空いてませんか? 」

 

 「まあ」と僕は言った。

 

 話をすり替えられたな、と思った。しかし、たしかに腹は減っていた。やれやれ今日は何を食べたかな? 少なくとも大したものは腹に入ってないはずだった。

 

 「三人で食堂に行きませんか? もう用意も済んでいるだろうし」

 

 「私は結構です」とカールさんは言った。「あんなのを見たあとではね」

 

 彼の顔はやつれているようだった。元々、目尻の皺や、白い髭も生えており、お爺さん真っ直中のようなイメージがあったが、それよりも何十年か上乗せしたように見えた。顔に覇気がなく、十秒に一度の具合でため息を吐いた。長くて、大きな声で。

 

 「じゃあ、あなたは? 」と羽黒は気にする風でもなく言った。

 

 どうしようかな、と僕は思った。このまま、カールさんと二人でいる方が落ち着くような気がしていた。しかしこの機会に羽黒がどこまで何を――たとえば、清蔵の遺体等から――把握したのかを知っておきたかった。そして確実に何らかの事実を隠していることはわかっていた。その上でハッタリを掛けるつもりなのかもしれない。この食事の誘いだってその一貫のはずなのだろう。だが、騙すのはこいつであってはならない。それは僕でなくてはならないのだ。

 

 「ええ」と僕は言った。「是非、ご一緒させてください」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ