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目覚めたらカードゲーム世界!?~やめろ私に近づくなメインキャラ!~  作者: 蒼井茜


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ライバル~御曹司は当然~

 翌日、ふと思い立って近所のカードショップを回ってみる事にした。

 この世界コンビニ程じゃないけどスーパーくらいな感覚でカードショップがある。

 一つの町に2,3件ある計算だ。

 少し大きい街に行けば大手のカードショップもあるし、その規模になれば5件以上のカードショップがしのぎを削り合っている。

 大手と個人じゃ取り扱いカードにも差が出てくるからね。

 アリアの店なんかは個人店扱いだけど、取り扱いだけ見れば大手の高級店を上回る品ぞろえで、ストレージも豊富。

 更には伝手があるらしく個人店さながらのニッチな品も置いてある。


 一方で普通のカードショップの状態を知らないので散歩ついでに見回っていたのだが……。

 グイッと腕を引っ張られた感覚がした。

 正確に言うなら手首だな、ミサンガに引っ張られた。

 とある店舗に立ち寄った時、その感覚がしたのでヤミ札関係だろうと思ってミサンガの導きのままに進んでいけばフリーバトルエリアについた。

 前世のカードショップにもあったパック開封とかバトルとかやってるテーブルと椅子の並んでるゾーン。


 ちなみにテーブルにもホログラム装置が組み込まれているので台パン厳禁となっている。

 広めのスペースでディスクでバトルできるところもあるが、そこはワンコイン性の500円。

 なおこのディスクを使ったバトルエリアに関してはそこら中にあるし、公園なんかじゃ無料で使えるようになっているのでカードショップで使うのはもっぱら大会くらいだろう。

 これまたついでにアリアの店じゃワンフロア丸ごとバトルエリアになってるし、もう一つフロア潰してイスとテーブルを置いてある。

 ついでのようにごはん系の自販機も置いてあるフロアもあって、あとは従業員の私室が並んでるフロアとか、大浴場とか、諸々隠しておきたいもの置いてあるフロアになってたりするらしい。

 詳しくは聞いてないけど、私は店と地下にしか用はないからどうでもいい。


 ともあれ導かれるまま進むと、そこには入学式で晒上げバトルに負けた奥ヶ崎がいた。

 ……こいつがヤミ札握る展開なんてなかったよな?


「ん……? 貴様は……」


「アカデミアレッドの静香よ。よろしく、奥ヶ崎君」


「さんをつけろ」


「入学式で無様な敗北を全校生徒に見せた奥ヶ崎さん」


「はったおすぞ貴様! そのいらん形容はなんだ!」」


「事実ベースの悪意を込めたあれこれです」


「悪意があるんじゃないか!」


 そりゃまあ、彼のキャラを知っているとねぇ……。

 この通り撃てば響く感じで非常に愉快なことになる。

 今も漫画みたいにずっこけるリアクション挟んでから、律儀にツッコみ入れてくれたし」


「もういい、好きなように呼べ」


「全校生徒の前で醜態を曝した挙句お兄さんたちに滅茶苦茶叱られたおっくん」


「ぶち殺すぞ!」


「冗談はさておき、奥ヶ崎君はカードを買いに?」


「ふん、俺ほどの人物になれば専門の業者がレアカードを持参して買い取ってくれと交渉に来る」


「ほうほう、確かに奥ヶ崎グループの御曹司達ならそういう事もあるか」


「知っていたのか貴様」


「だからお兄さんたちに滅茶苦茶叱られたって言ったじゃない。予想に過ぎないけどね」


 彼の立場って結構微妙でね、お兄さんが次期グループのトップに立つ人で、お父さんがそっちに注視しているから普段から奥ヶ崎君本人の事はあまり見ていない。

 ただバトルでなかなかの成績を出すようになってからはそっち方面に進出するのも有りかなと言う傾向になり、その足掛かりに使おうとしているという設定だ。

 また弟や妹、姉がおりど真ん中と言う立場のため上下から板挟みになるのも珍しくなく、上からは冷たい扱いを受け、下からはああなるなと悪い見本のようにされる。

 それが彼のコンプレックスの原点なのだが……。


「まぁ、兄さんには叱られた。父さんは鼻で笑って所詮その程度かと……」


「人様の家庭の事に口出しするほど偉いつもりはないんだけどね、家族仲は良くないみたいだね」


「……どうなんだろうな、俺以外の家族はみんな仲がいい。俺だけがいらないんだ」


「そうかな? 正直私が調べた限り奥ヶ崎グループ全体で見ても君のタクティクスは相当上だよ。問題なのはその根底じゃないかな」


「……続けろ」


「見下され続けてきたのがわだかまりになっていて、誰かを下に見ていないと自分を保てない。確固たる自我がないから外にそれを求める。けどそのせいで油断が生まれて、勝てそうなバトルでも足元をすくわれて逆転される。余裕を持つのはいい事だけど常に警戒を怠らない事が重要だと思うな」


「言うじゃないか……そこまで言うなら貴様もそれなりにできるのだろう? なぜレッドなんぞにいる。あそこには落ちこぼれしかいないはずだが」


「はい油断、レッドはブルーやイエローと違ってノルマがないんだよ。だからあえて調整してレッドに入る事もあるの」


 ブルーやイエローのクラスは一定以上の成績と戦績が無ければ降格になるからね。

 一番下のレッドはそれがない。

 最低限の成績さえあれば、あるいは戦績だけでもしっかりしていればそれだけで残留進級が可能だ。

 もちろんブルーにいましたとか、イエロー入学のブルー昇進ですとかになると大学受験や就職で有利になるのは間違いない。

 例外的にレッドからブルーまで昇進し続けましたと言うのは最大評価になるわけだが、そこまでガッツがある奴はそもそもレッドにいないし、いたとしてもそんなせこい事考える奴は入学前の試験で弾かれる程度に厳しい学校なのだ。

 ……実際私がレッドにいる理由、そのくらいしか思い浮かばないんだよな。

 バトルだけならブルーはもちろん教員にも負けるつもりはない。

 グッドスタッフデッキですら勝ち確と言えるパワーのあるデッキだ。

 で、アリアの店こと私の本拠地から持ってきた未来のデッキを使えば確実に勝てる。

 手札事故起こして、完璧な手札だ! ってポーカーフェイス決めない限りはね。


 そもそも私は前世まで偏差値ギリギリの所は狙わずある程度余裕を持って入れる学校で中堅だったから。

 底辺でひーひー言うよりお山の大将の腰ぎんちゃくしているのが一番楽だった。

 雑な言い方すればクラスの2軍程度でのんびりしているのが一番楽。

 そう言う立ち位置だったからこそ、こちらの世界でアカデミア入学なんてことになっていて驚いたくらいだ。


 しかしなぁ……ミサンガは未だに奥ヶ崎の方に向かって反応しているんだよなぁ。


「なるほど……そんな方法があったか……しかしそれは狙ってできるものなのか?」


「ある程度は。入学試験ってそこまで難しいバトルじゃなくて、いかに相手の防御を切り崩してダメージを与えるかに重きを置いているじゃない? その防御に当たってわざとダメージ受けたり、使える罠を使わなかったりして調節はできるよ」


「だがそれでは試験で弾かれる可能性が……」


「そうね、プレイングミスと思われて減点されるかもしれない。だからそもそもカードを伏せずに攻撃力の高いモンスターをそのまま出して、カードを温存しているように見せたりの工夫は必要」


 なお将来的にそれやると詰むような環境になる。

 盤面を埋めつつ妨害札を握っておく、とても面倒くさい読みあいが発生するのだ。

 さらにそこから一周回って、手札事故でも何か構えていると思わせる盤面も出てくるからな。

 ジャッジキルは除く。

 あれは番外戦術だ。

 便所ワンキルとか、ぶっこ抜きワンキル返しとかも含めて。


「とにかく、やり方は沢山あるの。奥ヶ崎君は少し型にはまりすぎているかもしれないわ」


「型……そうか……。だがどうすれば……」


「そうね、とりあえずパックでも買う?」


「パックだと? それで何をするというのだ」


「天運に任せる占いみたいなもの。使えるカードが出たならそれを混ぜ込んだ構築をしてみるし、出なかったら今のデッキで良いって言う回答よ」


「なんとも……」


「適当なやり方? でも今までそういう事してこなかったんでしょ」


「そうだな……少し試してみるか」


 そう言って奥ヶ崎君は立ち上がり、レジ前に向かって歩き出した。

 私もその後をついていく。


 品ぞろえは……まぁまぁかな。

 ショーケースで一番高いのが30万円、ある意味ホッとする金額だ。

 ただ最低金額は1000円くらいからだったので、やはり学生には優しくない値段設定だ。

 次にパックを見てみるといくつか種類があるが、1パック300円か……とりあえず5パック程確保。

 更にオリパ、オリジナルパックという店側で作っているパックが500円だったので3つ購入する事に。

 ストレージを覗いてみれば能力を持たないバニラモンスター、しかも攻守0の打点1とかの戦用デッキでなければ活躍できないカードが並んでいる。

 魔法も罠も局所的にしか活躍しないようなパッとしないカード……どころか、なんの意味があるんだって言うカードまで置いてある。

 ここまでニッチな品揃えだと逆にワクワクしてくるな。


「この店にあるパックを全部貰おうか」


「違う、そうじゃない」


 スパンと背中を叩く。

 身長的に頭に届かなくてよかったなおい。


「なにをする」


「在庫の買い占めじゃないの。決めた数だけ買うの。そういうやり方。とりあえず10パックくらいにしておきなさい」


「だがそれでは……」


「いいから!」


「むぅ……仕方あるまい」


 そう言って10パック購入した奥ヶ崎君。

 ちなみにレアカードの封入を確かめるサーチと呼ばれる手段はこの世界には無いので、店員が好きにパックを選ばせてくれる。

 続けて私もパックとオリパを購入。


「3000円になります」


「はい、ちょうどで」


 ちなみにカード系の売買には税金がかからない。

 と言うより半ば国が絡んでいる事業なので、カードそのものに税金が賭けられている。

 煙草と同じ理論だ。

 ちなみに前世の私は煙草を嗜むことはなかった。

 カードが汚れるし、匂いがつくから。

 お酒の方はそこそこ飲んでたんだけどね。

 今世は……まぁ飲まなくても支障はないしそこまでして飲みたいものでもないから二十歳過ぎて機会があれば程度かな。


「どれどれ」


 フリースペースで開封していく。

 1パック5枚入りで、5パック買ったから25枚。

 そのうち半分近い12枚がコモンの使い道のないカード。

 いっそ攻撃力0とかならまだ0デッキと言う枠での採用ができたんだけど、攻守300前後で打点1とかは真面目に使い道が薄い。

 ある浪漫砲ぶっ放すために使えなくはないのだが、浪漫砲は基本的に撃てないから浪漫なのだ。

 で、残りのカードだがこれまた……なんていうんだろう。


 こう、カードゲームアニメって人知を超えた事象っていうのが存在するわけで、それこそ次に引くカードをプレイヤーが決めたり、バトル中に創り出したりと無茶苦茶する。

 それ以外の方法だとなんらかの形で手に入れるのだが、その代表例というか初代主人公がやっていたのがパック剥きだ。

 相性のいいカードを引き当てる、そういう能力はデュエリストならだれでも持っている。

 こちらの世界の法則と縁が薄い私にもある。

 その証拠に今しがた引いたカードの1枚を懐に隠す。

 他の残りカードはなんてことない罠と魔法だったよ。

 ただ一枚だけ、ヤバいカードがあった。

 【機械仕掛けの神 ツクヨミ】と書かれたカード、耽美な男性の背後に歯車が回転しているカード。

 ステータスも見ていないが機械仕掛けの神で私が知らないカードと言う事はこの世界オリジナルの物だ。

 ということは……奥ヶ崎君をいったん置いておいて、アリアにメッセージを飛ばす。


『見知らぬ機械仕掛けの神が出てきた。そっちいる?』


『います。さっき生まれました』


 秒で返事が返ってきた。

 そうか、いるのか……。

 まーた秋葉原行かなきゃな。

 これでもデッキを組んでいる精霊のみんなとは仲良くさせてもらっているからね。

 人外な連中も人の姿になれるから店員としてシフト作れているし。

 あれだよ、世界に誇る日本の変態コンテンツ女体化。

 その波の一端を受けて一部カードが美少女にされたんだよ。

 有志と公式によって。


「おい、俺を放置して何をしている」


「ん、いや、行きつけのショップからの割引情報が来てただけ」


「行きつけか……良ければ今度案内してくれ。少しでも知見を広げたい」


 ……どうしたものかな。

 悪い軽功じゃないんだけどさ……ストーリー的によろしくも無いんだよね。

 少なくとも私の干渉で彼ら彼女らの成長の機会を奪うことになったら最悪世界が滅ぶから。

 その時は影から私が動くことになるんだろうけど、そんな面倒なことはしたくない。

 となればこの場の最適解は……。


「そのうちね。紹介制なんだけど月々に案内できる人の人数決まってるから」


「ほう、その口ぶりだと誰か案内したな。知り合いか?」


「龍馬、秋葉原でばったり出くわして、私がカード売りに行くのについてきた。向こうはそれを紹介と取ったから今月の紹介は無理なんだ。ごめんね」


「チッ……あの男、どこまでも忌々しい……まぁいい、ならば来月でどうだ」


「ちょっと予定確認しておく」


「そうか、ならば連絡先の交換をしなければな」


 ……まぁ、この程度は問題ないだろ。

 最悪の場合ブロックすればいいだけだし。


「ふむ、しかしなんだな。こうしてパックを剥くというのは……なんか新鮮だ。それに引いたカードもどこか……そう、しっくりくる」


 あー、それはあれですね。

 この世界特有のデッキとデュエリストの相性ですね。

 握ってて強いデッキとそうでないデッキがはっきり分かれる事が多い。

 要するにドローした際にしっかりデッキが回っていい手札になるかどうか、ここぞという時にいいドローができるかどうかというような物だ。

 オカルトっぽいけど、この世界そのものがオカルトみたいな機構しているから。


「ならしっくりきたカードでデッキを組んでみたら? 幸いショップだからカードは揃えられると思うけど」


「そうしてみよう。この礼は必ずする」


「あ、なら学食のA定食のデザート付きで。あとできればアカデミアでは他のレッドと同じ扱いでお願い。せいぜい知り合い程度で。女の嫉妬って怖いから奥ヶ崎グループの坊ちゃんに粉かけてると思われると妙な嫌がらせが起こりかねないからさ……」


「そんなものでいいのか? なら明日から好きなランチをデザート付きで頼むといい。今月中は俺が負担してやろう。あと坊ちゃんと呼ぶな、二度とだ」


 さすが坊ちゃん、龍馬とは違って金払いがいい。

 というか、気が付いたらミサンガが反応しなくなっていた。

 ……もしかして奥ヶ崎君がヤミ札でヤミ落ちする可能性潰してた?

 げ、原作に無かったからセーフ!

 そう、セーフなのです!


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