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目覚めたらカードゲーム世界!?~やめろ私に近づくなメインキャラ!~  作者: 蒼井茜


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ヤミ札~こっちくんなお前!~

「メイクアップ! ……おぉ、本当に一瞬で着替えられた。キャストオフ……うん、元通りね」


 しばし衣類の調子を確認してからメイクアップ状態で外に出る。

 なかなか通気性がいいので暑さは感じない。

 むしろ快適まであるな……重さも気にならないし。

 そしてこっちに行けと引っ張り続けるシルバー……いやまぁ行くけどさ。

 ワンキルしていい? 正直ヤミ札相手にするの本当に嫌だし、長期戦でメンタルダメージ受けるのも実体化した痛みを受けるのも嫌だから。


「ここらへんかな?」


 住宅街に入って、更に人気のない道を進んでいくと隠されるように空き地があった。

 これ立地的に家建てられないのか……?

 いや、今歩いてきた道がワンチャン私道とかそういう説があるか。

 ただ日当たりは最悪だろうけど。

 ともあれ子供が入り込んでいたのか、秘密基地の残骸みたいなのが見える。

 それを更に改造した段ボールハウスらしきものもあるけど……シルバーはそっちに誘導している。

 行かなきゃダメ? あ、ダメですか……。

 仕方なしに段ボールハウスを覗いてみるとミイラがあった。

 えーと警察は911だったっけ……。


「ば、ばと……る……」


 一瞬思考が止まっていた隙を突かれた。

 ミイラ化していた死体が起き上がり、強制バトルが始まってしまった。

 呆気に取られていたので先行も奪われた感じ。

 そういやこの世界、ミイラがあって魂だけで行動している人もいたなぁ。

 これは魂がそのまま残ってるパターンか。


「おでのダーン……どろぉ……」


 ぎこちない手つきでカードを引いて、それと同時に肉体が潤いを取り戻していくのが見えた。

 だが半裸だ。

 乙女通り越して女児に何見せてやがる変態め。

 カードゲーム好きな女はショップでモテたからセクハラは慣れていたが、一定以上の強さ見せるとライバルとか敵認定されてそういう視線とんでこなくなってこちとらお独り様だったんだからな?

 流石に危うい所は見えていないけどさ……。


「ふぅ、やはりバトルはいい……人生に潤いを与えてくれる。そこの、悪いが俺の糧になってもらう! 【ダークアリゲーター】を攻撃表示でサモン! 効果で手札デッキから同名カードを特殊サモン! 魔法カード【闇から伸びる手】でフィールドのモンスターの打点合計分のダメージを与える! 【ダークアリゲーター】の打点は2! 合計で6ダメージだ!」


「あ、手札から【機械仕掛けの神 黄金の盾】の効果発動。効果ダメージを倍にして反射する」


「え……?」


「12ダメージ、処理は?」


「そ、そんなばかなぁ!」


 ドーンと言う爆音を響かせて元ミイラは爆散した。

 死体すら残さず、ひらひらと落ちてくるカードをキャッチすると悪意みたいな感情が心の底から湧き上がってくる……気がしたが特に何もなかった。

 うむ、やはりデウスデッキは強すぎるな。

 こんなもんアカデミアじゃ使えないわ。

 ワンキル性能が高すぎるし、先攻後攻どちらで動いても相手を確殺できるポテンシャルを持っている。

 さすがテーマ丸ごと禁止カードとして投獄されただけあるわ……。


 しかしこれがヤミ札ねぇ……【ダークアリゲーター】、効果は同名カードを手札デッキから特殊サモン。

 召喚権使うから何かしらの方法で特殊サモンして効果を使いたいカードだけど……ヤミ札だったのは1枚だけみたいで本人諸共デッキが消し飛んだので使い道のないカードだなぁ。

 で、こいつにナイフを突き立てると浄化してくれると。

 確かにこういう近い所での作業ならこっちの方が便利だけど……。


「なにやってんだお前!」


 突然叫び声を聞いて肩が跳ねそうになった。

 ちらりと視線を向ければ龍馬が鬼の形相でこちらを見ている。


「カードに何をやってるんだ!」


 え、あ、そう言えばこの風貌でナイフをカードに突き立てようとしているって悪役のやる事だな……。

 説明しても聞いてもらえないだろうし、面倒ごとが増える。

 特にこの仮面声とかはそのまま通すからね、変声機能とかあればまだマシだったけど何かを語った瞬間正体ばれとか洒落にならん。

 なのでさっくりとカードにナイフを突き刺して、引っこ抜いて両方ともマントの内側にしまい込む。


「お前……俺とバトルしろ!」


 ですよねー。

 この世界で気にくわない事があったらとりあえずバトルになるのは当然の帰結。

 そして当然のようにディスクがその声にこたえてバトルフィールドを展開している。


「俺の先行! 【英雄風の戦士】を攻撃表示で召喚! カードを3枚伏せてターンエンドだ!」


 あー、出たな風の戦士。

 龍馬の愛用カードの一枚で、後に出てくる推しカードの片割れになるモンスター。

 性能的にはかなり低いのだが、その攻撃力や防御力に対して3打点という中級モンスターくらいの能力はあるので効果でダメージ与える時は選択肢に入る事もある。

 なお効果を持たないバニラと言う点も実はとても生かしやすいのだ。


「ドロー。特殊サモン、【機械仕掛けの神アリアンロッド】」


 喉を絞って声色を低くして誤魔化して……誤魔化されるかな。

 龍馬って一見すると熱血だけど中身はクレバークールな男だから。


「上級モンスターがいきなり!?」


 あ、大丈夫だ。

 バトルに夢中で気付いていない


「効果発動、相手フィールドのモンスターの打点をアリアンロッドが追加で得る。打点は7。更に魔法カード、【機械仕掛けの炎】を発動。この効果はモンスターの攻撃回数をサイコロの出目と同じだけ増やす」


 フィールドに現れたサイコロ、ホログラムなんだけど効果音を鳴らして転がると5の目が出た。

 これで一回目で【英雄 風の戦士】を撃破して7点のダメージ。

 伏せカードは罠だとして3回防がれる可能性があるが、5回目は素通しかな。

 あるいはなにかしらの妨害札を墓地に落として守り切るか?


 まぁさせないんだけど。


「魔法カード、【機械仕掛けの摩天楼】発動。このターン相手はフィールドのモンスター、魔法罠の効果を発動できない」


「なんだと!」


「さらに魔法カード【機械仕掛けの檻】相手はこの魔法が存在する限り墓地に送られるカードは全て除外される」


「そんな……」


「【機械仕掛けの神 アリアンロッド】で攻撃。このカードはモンスターとの戦闘時攻撃力が戦闘するモンスターの攻撃力の3倍になる」


「くっ、風の戦士が!」


「終わりだ、直接攻撃」


「まだだ! 俺は風の戦士が破壊されたことで手札から直接モンスター効果を発動! 【天使クリエル】! ダメージを受けたターン、俺に対するダメージは0になる」


「アリアンロッドの第二の効果を発動。相手がモンスター効果を使用した時デッキからカードを一枚墓地に送ってそれを無効化する」


「なっ!」


「続行、直接攻撃」


「ぐわああああああああああ!」


 盛大に吹っ飛んだ龍馬、バトルフィールドが閉じるのを見てからその場をダッシュで離れる。

 ……危なかったぁ。

 メインキャラと関わりたくないのに何で出てくるんだよ。

 いや、休日の事は作中では言及されてなかったけどさ……。


「そういやカードどうなったんだろ」


 ちょっと離れたところで路地裏に入ってキャストオフ。

 そのままカードを見れば【ダークアリゲーター】のカードは【セイントアリゲーター】と名前と効果を変えていた。

 えーと、恐竜としても扱う効果とサモンか特殊サモンに成功すると好きな爬虫類か恐竜モンスターを手札デッキ墓地から特殊召喚か……レベル制限も攻撃力制限もないから普通に強いカードだな。

 見たことないからオリジナルカード、ワンオフなんだろうけど……アリアに売りつけるか。


 そう思って路地裏から出た瞬間だった。


「あれ、静香……?」


「龍馬……」


 復活速くない?


「こっちにマントと仮面のちっさい奴が来なかったか?」


 ちっさいは余計だこの野郎!


「見てないけど?」


 うん、見てはいない。

 嘘は言ってないからね。


「そうか……俺……そいつに負けちまったんだ。手も足も出なかった……」


「そうなんだ。なのに追いかけてたの?」


「……なんとなく、その人を見ていると強くなれる予感がしたんだ。だから……」


「そもそもバトル仕掛けた理由ってなに? それ次第では向こうも態度を変えるかもしれないじゃない。最悪警察呼ばれるわよ」


 まぁ警察呼ばれたら私がやばい事になるからやめてほしいんですけどね!


「それが……カードにナイフを向けててな。声を掛けたらそのままカードを刺したんだが……えと、信じてくれるかわからないんだけど俺……」


「聞くだけ聞いてみる」


「カードの精霊が見えるんだ! そしたら真っ黒だった精霊が消えて……バトルが終わるころに真っ白に浄化された精霊が出てきた。で、俺の勘違いを詫びたかったのと、どうしたらそんなに強くなれるか聞きたかったんだ!」


 あー、そんな設定あったなこいつ。

 むしろ本編では一番重要な設定だったけど……正直バトルに関係ないから忘れてた。

 けどなぁ……強い理由って言われても前世から引き継いだカードパワーと、前世で過労で入院勧められる所まで頑張って稼いだ結果でしかない。

 極論カードが強いだけで私はそこまで強くないからなぁ……。


「強い人の事はよくわからないけど、強くなれそうな所なら心当たりあるけど、行く?」


「そんなところがあるのか!?」


「カードショップ、知り合いが経営している隠れ家的なやつ。店長も店員さんもみんな強いよ。店頭に数百万円のカードとか並べてるくらいだし」


「マジか……そりゃ余程自信なきゃやっていけねえな……頼む! 案内してくれ!」


「わかった、ただしひとつ条件がある」


「おう! なんでも言ってくれ!」


 ん? 今なんでもって……なら心置きなく本音をぶちまけたいところだけど、私に関わるなとか言えるわけも無いしな。

 無難なところで手を打っておくか。


「食堂のB定食奢って。それでいいから」


 ちなみに食堂のご飯は一律500円である。

 適当にカードを拾い集めて、運が悪くても2時間くらいで賄える金額だ。


「ぐっ……背に腹は代えられねえ! わかった! だから連れて行ってくれ!」


 おい金策しろよ。

 というかお前両親健在で小遣いも貰ってただろ。

 息抜き回でカードショップで全財産つぎ込んでたのは見たけどさ……。


「じゃあついてきて、私もちょっと店長と話したい事あったし丁度いいから」


「ありがとな! なぁ、もしかして店員や店長とバトルできるかな!」


「頼んでみたら? そこそこ交渉が必要だと思うけど邪険にはされないと思うよ。人当たりはいい方だし」


「そっか! なら拝み倒してバトルしてもらうぜ!」


 なおこの後龍馬は土下座までしてバトルの権利をもぎ取り、店員をしている精霊達は自分の素性を隠す事に必死になりモチベーションがあげられずデッキの回転率が悪くて危うく負けそうになっていたが、全員なんとか勝っていた。

 アリアによる「減給」という言葉が響いたらしい。


 ばれたら減給、負けても減給、実に酷い話だ。

 彼ら彼女らは秋葉原で美味しいご飯を食べる事が趣味だというのに……ちなみに一番人気は天上天下一品というラーメンであるとか。


 こうして一日中バトルして、その尽くに負けた龍馬は逆にすがすがしい顔をしていた。


「俺より強い相手が沢山いるっていいな! どうやって勝つか考えるのが楽しくて仕方ない! マジでワクワクだ!」


 よし、モチベーション復活させた。

 行き当たりのパッションバトルだったけど……気を持ち直すには十分だったんだろう。


 あとは私がアリアとの舌戦で勝つだけだな。


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