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目覚めたらカードゲーム世界!?~やめろ私に近づくなメインキャラ!~  作者: 蒼井茜


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原因~意味はないが因果はある~

 入学式の後からしばらくは特に大きなトラブルはなかった。

 私にとってはな!

 メインキャラ達は色々あって、確かこの数日で奥ヶ崎が落ちぶれていく過程の一つを踏んだり、立ち入り禁止区域でバトルしたり、それを咎められてバトルで解決したりという流れがあった。

 要するにアニメだけで言うなら8話くらい使っているんだ。

 二カ月かけて追いかけるストーリーがこんなにマッハで終わるとは思わなかったよ……その分本当に何もなかった時期とか普通に飛ばすから気が付いたらこいつら二年生に進級しているんだけどさ。


 で、ようやく私の問題の一端を解決する時が来た。

 ディスクとデッキをカバンにしまい込んで、両親の前で秋葉原に行くことを説明する。


「欲しいカードでもあるのかい? この辺りじゃ手に入らないとか」


「まぁそんなところ」


 やはりこちらでも秋葉原はカードショップが沢山あるらしい。

 この辺りにも3店舗くらいあるけど、そこまでレアなカードは置いていないしパックが売っている程度だ。

 しかもそのパック、試しに買ってみたけど内容が……その、控えめに言って死ぬほど弱い。

 これは単純に運命力っていうやつの仕業だと思っているんだけど、カードは望んだ人の所に行くというのがアニメでは語られていた。

 要するに私の所に来る理由のあるカードが無いという事になる。

 さすがに初期の攻守ともに3桁程度で、打点も1か0と言うモンスターを手に入れてもデッキ強化には使えない。

 魔法とかのカードだってかなり弱い。

 汎用ではなく特定カードメタ、要するに対策カードしか入っていない。


 対策と言えば聞こえはいいんだけど……相手のデッキにそのカードが入っているかわからないし、入っていたとして使うタイミングでこちらがそれを場に出せているかもわからない。

 そもそも手札に来て腐る事の多いカードだ。

 これが汎用的メタカード、例えばモンスターの特殊サモンを封じるとかならまだ考えようはあったんだけどね。


「秋葉原のお店はグレードが高いって言うけれど……」


 父さんに続いて母さんも心配そうな声を出す。

 まぁね、高いんだろうね。

 最低でも100倍の価値だから。

 ちなみに私の引き当てたカードはストレージと呼ばれる価格帯になる。

 前世と同じくまとめて何円、だいたい100枚で1円とかそのレベル。

 デッキそのものは20万円しても今これを手放すのはリスキーだ。

 禁止級のカードが山盛りのグッドスタッフなら急場はしのげる。

 ちなみに前世と違いカードの売買は未成年でもできるが、一定以上の金額になると親のサインと同伴が必要になってくる。


 そしてそんな高額カードは、意外と道端に落ちていたりする。

 カードは拾ったが誇張にならず、どこからかポップしているかのように妙な所に湧いて出てくるのだ。

 この手のカードはユニークと呼ばれる事が多いのだが、国としてもカード会社としてもそこまで手が回らないので「拾った人の物にしていいよ」という変わった法律ができた。

 ただしカードに限るなので財布を拾い逃げしたら普通に処罰されるので注意が必要だ。

 あと明らかに誰かが落としたデッキケース付きのカードとか。

 例外はあるんだけどね。


「まずは下見がしたいの。今のデッキを強くするために必要なカードを捜したい。けどこの辺りのお店だとあまり参考になるカードが無くて……」


「なるほどね……わかった。まぁいい社会見学になるだろうしどうだろう、母さん」


「そうねぇ、今すぐ買いに行くっていうわけじゃないみたいだし、交通費と今月のお小遣いくらいなら……」


 ちなみにお小遣いは5000円である。

 交通費が別なのは素直にありがたい。

 秋葉原の往復って1500円くらいかかるから中学生の私がほいほい行ける距離じゃないし。


「じゃあ明日、朝一で行ってくる!」


「あぁ、気をつけてな」


「そうね、秋葉原はともかく道中で辻バトルとかに巻き込まれるかもしれないし……」


 要するにおい、バトルしろよだ。

 あの先輩がやってたやつ。

 適当な相手に声をかけて、バトルして、その際に互いのレアカードを賭けるとか言い出すようなの。

 普通ならそんなうま味の無いバトルすることは無いんだけど、この世界だと挑まれるのは栄誉、勝利すれば栄光とレアカードが手に入るという事で火急の事態でもなければだいたいは受ける。

 大事なら親族の危篤とか葬儀とか、小事なら肛門括約筋や膀胱の限界値が近いとか。

 そういう理由なしにバトル拒否は臆病者のそしりを免れない。

 まぁあえてその手の理由で逃げようとする人もいるし、トイレ程度なら待ってる人もいる。

 そしてトイレの窓から逃げるのもお約束だがその辺は割愛しよう。


 とにかくいかにバトルに持ち込むか考える人と、それを回避したい人がいるというだけの話だ。


「いざとなったらトイレの窓から逃げる」


「……それはお店に迷惑だから控えなさい」


「……えぇ?」


「それに勝てそうな相手と勝て無さそうな相手の見極めはできるから。バトルだって運の要素があるから絶対が無いのもわかってる」


「まぁ……それならいいんだが」


 内心ではバトルしたがってる相手探して、勝てそうならレアカード賭けて勝負と言うのも悪くない金策なんだけどね……。

 法律では禁止されていないどころか許されているし、むしろ推奨されてるところがある。

 それだけカードの価値が高く、なおかつ国の財政難を多少なりとも負担できるレベルの事業と言っていいから。


 まぁそんなこんなでお出かけの予定を組み込んで、就寝したのだが……。


「おはようございます」


「……アリアよね、もうちょっと常識的な時間に電話してくれないかしら」


 朝6時にかかってきた電話を寝ぼけ眼で受けて、ついでに文句の一つでもとぶつけてみる。


「いやはや、失礼しました。今日お越しになるという事で居ても立ってもいられず」


「なんで知っているのかとかは聞かないわよ。とりあえず……カードショップ巡りを理由にしているからそっちにつくのは10時くらいと思っておいて」


「かしこまりました。店員一同首を長くしてお待ちしております」


「まって、一同?」


「まぁなんというか……見てもらえればわかるとだけ」


 凄い不穏な言葉が聞こえたが、このまま寝直すのもあれなので余っているカードを確認していく。

 何枚かはそこそこの値段になりそうなカードがあるな。

 デッキに入れるほどじゃないけど、後々パワーカードが禁止化された時に仕えるかどうか微妙なラインの代物。

 積極的に使おうとは思わないカードね。

 コレクションとしては面白いんだけど……効果が少し限定的で、コストが手札と言うのがよろしくない。

 デッキからカードを落とすのはいいんだけど、手札からコストとしてカードを捨てるのは良くないのだ。

 用語としてはアド損、アドバンテージ損の略称で敵モンスター1体破壊に2枚のカード使うとの釣り合いがとれていない状態の事。


 まぁ手札で腐るカードもあるし、逆に手札からコストにして美味しいカードもある。

 サーチしてきて手札に加えてコストにするというのも常套手段なんだけど、このデッキとは相性が悪い。

 本命デッキなら……まぁ使い道はあるけど、どのみちこれをいれるなら別のパワーカード使うというレベルだなぁという微妙なラインで、ネットで調べた限りそこそこの値段になるものだ。

 なんとなーく想い出みたいなのがあるカードは弱くても高くてもデッキケースにツッコんであるんだけど……前世今世合わせてどういう理屈でというのは言語化が難しい所。


 そして朝食を食べて電車に揺られる事1時間半、そこから更に30分ほど歩いて前世の私の家があった場所に辿り着いた。

 やたら大きいビルが一つ、オフィス街にあるような立派なソレを見て愕然とした。


「なぁにこれぇ……」


「お待ちしておりました、静香さん」


「……その声、アリアね? 説明してもらえる?」


「えぇ、中へどうぞ。ここの名義は私になっていますが元々はあなたの家。見た目はオフィスビルで、カードショップを営んでいますが地下は全てあなたの家と同じ作りになっていますし、カードもそのままあります」


「全部説明してもらえると考えても?」


「無論です。ついでにお飲み物の注文でもあれば」


「……じゃあ緑茶で、氷も入れてもらえると嬉しいかな」


「かしこまりました」


 アリアが指パッチンをして、誰かに何かを伝えた様子だが……。

 ともあれCLOSEDと書かれた看板を無視してビルに入ると確かに立派な造りのカードショップだった。

 ……うわ、すごっ。

 前世でも云十万とかしたカードが並んでる。

 レプリカと表記されたうえで数百万円か……本物もあるので欲しい方は一括払いで……むりじゃない?

 レプリカで数百万円、本物となったら数千万、下手したら億に届くんじゃないかな。


「で、なんで私の家がカードショップになっていて、アリアが私の事を知っているのか詳しく」


「そうですね、では後者から。まずこちらをご覧ください」


 差し出されたのは一枚のカード。

 【機械仕掛けの神 アリアンロッド】と書かれたそれは私が愛用していたデウスデッキと呼ばれるテーマの主軸となるカードだ。

 ちなみに禁止カードに指定されていて、サーチリクルート妨害破壊バーンに高攻撃力と打点でのワンキル性能が非常に高かったため一生獄中だろうと言われた代物でもある。

 普段なら禁止カードや制限カードなどで使えなくなったデッキは崩して実戦仕様にしてしまうのだが、このデウスデッキはなんとなくそのままにしていた。


「これがあなたの正体とでも? お腹に歯車がないけど」


 アリアンロッドは機械仕掛けと言うだけあってメカ要素もある美少女カードだ。

 人間のお腹のあたりに歯車じみた輪っかがついていて、向こう側が見える仕組みになっている。

 確かに顔は似ている通り越して瓜二つだけどさ……。


「隠しています。いわゆる精霊の力ですね」


「あなたがこのカードの精霊と?」


 この世界ではカードには精霊が宿ると言われている。

 無論数万枚どころじゃない枚数が流通しているカード全部に宿るわけではなく、宿主としていいなと思った相手のカードに宿るのが基本だ。

 あとオンリーワンのカードとかね。

 ちなみにその精霊は異次元とか異世界と呼ばれる場所にいるので、何らかの理由でカードに宿ることがなければこちらで目にすることは少ない。

 たまーに人間がそっちに迷い込むこともあるんだけどね。


「そういう事です。私達デウスエクスマキナが精霊としてこの地に降り立つ原因になった特異点、それがあなたです」


 運ばれてきたお茶を飲みながら話を聞く。

 特異点と言ったか。

 確かにこのデッキ、機械仕掛けの神ことデウスエクスマキナのカードはかなり後世のカードだ。

 アニメシリーズが終了した後に作られたシリーズ、その中でも最高レアリティを誇り、中には前世にも関わらず単品で10万円するカードもあった。

 ただ……私の持っているのはひたすらパックを開けて作り上げた執念のデッキ。

 このパックが10~12パックが入っているものをボックスと呼び、更にそのボックスが12箱収められているものをカートンと呼ぶ。

 1パック300円前後、それが12パックで3600円、それが12箱で43200円。

 それを10カートン、ざっくり40万円以上かけて作り上げた最高レアリティのみの最強カードだからこそ崩す事が出来なかったと言ってもいい。

 ……前世でも売りに出したら200万円くらいの価値があったと思う。

 禁止カード指定や制限指定がついた後でもコレクションとして欲しがる人がいるだろうし、オークション形式ならその倍でもおかしくない。


「でもこの時代にあなたのカードは存在しない」


「だからこそ、あちらであなたの狂気ともいえる執念が特異点になりえたのです」


 まぁ狂気だよなぁ……なんならそれで揃わなかったら追加で20カートン位購入しようと考えてたし。

 問題は品物があるかどうかだけど、行きつけのショップで頼めばそのくらいはどうにか用意できたと思う。

 老舗の知る人ぞ知るカードショップ。

 秋葉原のはずれにある店で……あれ、場所がいまいち思い出せないな。

 路地裏だったのか、住宅街のど真ん中だったのか、遠かったのか近かったのか……。


「あなたがカードを購入していた店舗、欲しいカードやパックが売ってないという事はありましたか?」


「そういえばなかったと思うけど……あったとしても入荷予定があるって言われたわ」


「あまりにも近すぎるため逆に接触できない、それがあなたのいた世界です。そこに唯一作る事の出来た道がそのカードショップ、そこには精霊の宿るカードたちが集まって異なる世界を見ていました。バトルで世界が滅びない、誰もが遊びとしてバトルを楽しめる世界を」


「その口ぶりだとこの世界より居心地がいいと思われそうだけど、あっちはあっちで大規模な戦争とかあったわよ」


「それは精霊には関係ないことです。問題は自分たちがどのような立場に置かれるのか、戦いに疲れた者も多くいたというだけの話です」


「なるほどねぇ。じゃあ重要な質問なんだけど、なんで私はこうなったの?」


 世界が近いとか遠いとか、特異点がどうのとか、道がどうのこうのはどうでもいい。

 問題は私が中学生としてこちらの世界に来てしまった事だ。


「端的に申し上げます。申し訳ないのですが偶然が重なって、こちらの世界に招かれたという形でして……」


「あ、うん。じゃあこっちの世界の私はどうなったん?」


「どうというよりもとより存在しなかったと。本来は存在しない一族が特異点と運命力と因果律によって構成されてこちらに来る直前に肉体が構成されました」


 何それ超怖い。

 え、つまり存在しなかった私達家族が急に生えてきて、それらの記憶や記録も全部突然生まれたって事でしょ。

 あれ、でも私こっちの記憶は無いな……妙な思い入れとかあるけどさ。


「マスターの記憶は不要と判断されました。代わりにこのショップが出来上がったのです」


「余計な知識はない方がいいという事?」


 こちらの世界の常識を最初から知っているとその枠組みに収められてしまうと。

 だから私の記憶はまっさらってことか。


「そうなります。そしてマスターにも役割があります。言うなれば人類皆主人公というやつですね」


「私はモブがいいんだけどなぁ……」


「まぁまぁ、そう言わずに。ちなみに断られた場合世界が滅びます」


「最悪だぁ……」


「というのもヤミ札の流通が想定されていないレベルで発生しているのです。このままだと因果律が狂ってしまって本来起こり得た事象が発生しなくなり、マスターが主人公と呼ぶ方々の命が危ういのです」


「あー、そりゃ滅ぶか」


 言うなれば原作改変だ。

 ちなみにヤミ札と言うのは闇のカードとか病んでしまったカードの総称。

 対策期間もあるんだけど本編に関わってくることは無い。

 なにせこのヤミ札はオンリーワンのカードで、このカード相手に普通にバトルで勝利した場合カードが消滅してしまう。

 させない方法もあるけど。

 ちなみにヤミ札の親玉はカードの精霊なので、精霊殺しとしてよく思わない人たちもいるのだが放置しておくと本当に世界が滅ぶので表立った抗議活動などは行われていない。

 そもそも精霊が見える人が稀だし、ヤミ札の精霊見たらそれどころじゃないからね。

 SANチェック入るレベルだから。


 で、主人公の命が危ういってのは起こり得た事象、雑な言い回しをするならパワーアップイベントが起こらず負けるってことだから。

 たしか初代で5回くらい世界が滅びかけて、アニオリで追加されたのが3回だったかな。

 で、二代目になると年一ペースになったけどパワーアップイベントは10回くらいあった。

 サブキャラ含めたら30回くらいある。

 それが狂うと歴史も狂うわけで……うん、将来的に世回滅びるな。


「ちなみに今後予測されるヤミ札によるデザイナー会社の会長が死亡する確率は10倍になってます」


「あの男またヒロインやってるのかよ!」


「ちなみにディスク開発会社の社長は全部自力で退けると思われます」


「だろうねぇ」


「龍戯さんはその大半に立ち会いますが、因果律の改変と言う意味では少し足りていません。その少しを補ってほしいのです」


「つまり?」


「ヤミ札の露払いです」


「……やるしかないかぁ」


 やらないと世界が滅びるなら仕方ない。

 というか私もこんな事で死にたくないし、カードのモンスターが実体化したり精霊が出てくる世界っていうのはそれなりにワクワクしている。

 メインキャラとお近づきになりたいとは思わないけど、彼等が体験したアレコレを直に見てみたいという感情もある。

 実際入学式バトルはかなりテンション上がったからね。


「じゃあ取り急ぎ対処しなきゃいけない事象教えてちょうだい。あとそっちが出せるメリットってないの? 流石にデウスデッキだけっていうのは寂しいし、今持ってるグッドスタッフじゃ限度があるわ」


「まずこのショップが全面協力します。具体的にはカードの提供から買い取りまで、またこのショップは元はマスターの持ち家なので拠点にしていただいて構いません。それと地下のデッキは全てそのまま保管してありますのでご自由にお使いください」


 なるほど……まぁ悪い話ではないか。

 実際に好きで作ったデッキたちを実体化させられるのはテンション上がるし、カードの提供と買取は資金源になりうる。

 一部の高額カードはまぁ、普通のルートじゃ売れないだろうしなぁ。


「ちなみにこの店の運営ってどうなってるの? 下手に従業員がその辺の情報ポロリしたら大変なことになるけど」


「全員マスターが持っているデッキに入っているカードの精霊たちが行ってます」


「あ、そうなんだ……」


 それは……うん、安く済ませられて秘密保持も完璧だわ。

 カードを守るという意味でも彼女たち以上の相手は早々出てこないだろうし。

 なにせカード性能が違う。

 世代差と言うのはカードゲームに置いてそれほど重要なのだ。


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