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目覚めたらカードゲーム世界!?~やめろ私に近づくなメインキャラ!~  作者: 蒼井茜


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初バトル~ワンターンキル~

 朝ご飯を食べて着替えてから家を出る。

 それだけなのに、なんか少し寂しくなってしまったなぁ……。


「私もお父さんも後で合流するから、先に行っててね?」


 そんな風に言われたのは十数年前の事、会社近くで1人暮らし始めてからは母の顔を見る機会も減っていたから。

 同じ都内だから行こうと思えば行けたんだけど、逆にその気にならないと足を延ばさない微妙な距離だったのもある。

 だから罪悪感が寂しさと言う形を伴って刺さってきたのかもしれない。


「とはいえなぁ……これだと少し怖いなぁ」


 仮にここがカードゲームアニメの世界だとしよう。

 その場合ありとあらゆることがバトルで決まる。

 それこそ個人間のやり取り、仕事の取引や価格設定、学校内だったら授業の成績や席の確保。

 大規模になれば国家情勢や世界の存亡までだ。

 正直に言うならこのグッドスタッフデッキでもある程度はしのげると思うけど、本当にある程度だ。

 汎用性の高いカードの詰め合わせセットで、構築も当時の最高水準と言えるが……それでもワンターンキルが当たり前のように横行する時代のバトルが基本だった私にとっては物足りない。

 出来るなら本命デッキが欲しい所だけど、アリアンロッドことアリアが確保してくれているかは微妙な所。


 それなりにデッキ強化をしようとネットでカードの値段を調べたら眩暈がしたわ。

 私のデッキ、アニメ放送当時ですら1万円くらいで組めたと思う。

 40枚以上のカード束をデッキと呼ぶけど、スタンダードは40枚。

 ちょっと特殊なデッキだと60枚くらいにすることが多い。

 大きい大会になるとゼブラとかタワーって呼ばれる数百枚のデッキとかあったけど……ディスクに収まるのかなと思ったらデッキをセットする部分がだいぶ伸びるのでたぶん使える。

 ただしドロー、デッキからカードをひくのは大変そうだし、サーチ、デッキからカードを手札に加えるのも一苦労。

 シャッフル、デッキを混ぜるのも大変だ。

 あとたぶんデッキはセットできても墓地におけるカード枚数には限度があるんじゃないかなこれ……専用のディスクが必要だと思う。

 少なくとも墓地を拡張して上にも下にも長いディスクになるだろうなぁ。


 話が逸れたが、1万円と言うお年玉で作れるくらいのデッキだが、私が持っているデッキのカードの金額を軽く数えて20万円くらいする。

 カードの相場がやたら高額なのだ。

 仮に前世と呼ぶが、そちらでは1枚10円とかで買えたカードがこっちでは1000円くらいする。

 ざっくり100倍の価値があると言っていい。

 じゃあさ、仮に私のカードコレクションが売り物になったとしたら……いやコレクションじゃなくても観賞用に買った世界で何枚しかないとか、プレミア付き特典カードとか、大会優勝の際に貰ったカードとか。

 もっというならダブりとか余剰、デッキに入れられる同名カードは3枚までなんだけどそれ以上に余ったものも山ほどあった。

 伊達にオリパもパックも引いていない。

 作中じゃ伝説とか幻とか神とか言われた類のカードも持ってるからなぁ……ダース単位で。

 合わせてじゃない、カード単体でダース単位で余らせてたんだ。

 だから一部屋潰してカード保管庫にしてたわけだし、デッキ専用のシアタールームも用意してたし、地下だけど紫外線を通さないように特別加工のガラスケースで保管していた。

 我ながら壮観だったし、自慢のコレクションだがネットなどにアップすることは無かった。

 カード強盗を恐れての事だ。


 前世でもコレクターがカードを全て盗まれて自殺したなんて事件もあったし、閉店後のカードショップを襲い高額レアカードを数百万円単位で盗んでいったなんてこともある。

 ちなみにレジは手つかずだったそうだ。

 前世でそれだけの価値があったのだからこちらではその100倍の価値、伝説とか幻とか神になってくると青天井だろう。

 考えただけでも恐ろしい……。

 それらを守るにはこのデッキでは力不足だ。

 悪いとは言わないが、カードプール、つまり使えるカードの種類が少なすぎる。

 対策も用意だし……当時はまだ使えた、後に禁止カードとして一生解放されることは無いだろうと言われたカードも入っているから戦いこそ楽かもしれないけど、それでもパワーが足りなさすぎる。


 このゲームは攻撃力と防御力、そして打点の三つが存在する。

 攻撃力は文字通り相手に攻撃する際に参照する値で、互いに攻撃表示で戦えば数値の大きい方が勝利する。

 その上でライフから打点分の数値が引かれて、これが0になったら敗北となる。

 他にも特殊勝利とか、デッキが0枚になりドローできなくなったとかもあるけど基本はライフを消し飛ばすのが勝ち筋だ。


 防御力は守備表示での参照で、攻撃力は0だけど防御力は上級モンスター以上と言う事もめずらしくない。

 デメリット効果持ちとかになると一般的な上級カード、エースと呼ばれるラインの攻撃力が2500に対して防御力3000とかもあるし。

 守備表示の利点はいくつかあって、伏せた状態から表表示になるリバース効果、大体が強力な能力を秘めているがステータスが低いカード。

 その効果でデッキや墓地からモンスターを特殊召喚するリクルート効果や、一度使った魔法罠を手札に戻す効果。

 他にも敵を破壊したり、手札やデッキに戻すバウンス効果なんかもある。

 基本的にそのバトル中に触る手段が無くなる所が行こうかなんてのもあるな。

 その上で守備表示だと防御力を上回る攻撃力でバトルして破壊されてもライフは減らない。


 初期ライフ10点を削り切った方が勝ちというのがシンプルながらに駆け引きに使われる事が多かった。

 中にはデメリットがデメリットになって無いカードもあったなぁ……墓地肥やし、デッキからカードを墓地に送って蘇生系のカードで復活させるとか基礎戦法なんだけど、デッキから墓地にカードを送る事をまるでデメリット化の用に書いていたカードもあった。

 他にもライフを半分払って効果発動とかもあって、これはわかりやすくデメリットに見えるがそもそも本体が強いからバトルで負ける事も無いという……。

 そんなカードが当たり前のように闊歩していたのに比べたらかなり貧弱だ。

 まぁそんな環境でも活躍できたカードが入っているからまだマシだと思うけど……。


「おい」


 考え事をしながらアカデミアへの道を歩んでいた私はそんな声を耳にした。

 そちらに視線を向けるとアカデミアの制服、ネクタイの色からして上級生と思しき人物がニヤニヤとこちらを見ていた。


「なんでしょう」


「バトルしろよ」


 ディスクを腕にセットして自信満々と言った様子で語りかけてきたその人、アニメで見覚えがあった。

 確か初心者相手にバトルを挑んで、デッキをカツアゲする不良生徒。

 実力は……まぁ悪くないかなと言うレベルだけど、対策さえ分かっていれば怖くない相手だ。


「お断りします」


 だが受ける理由が無いので断る。


「はっ、逃げるのか? そんなんでアカデミアでやっていけると思ってるのかよ。デッキを賭けてバトルだ」


「……つまり私が勝ったら先輩のデッキを貰えると?」


「おうよ、賭けは対等じゃねえとな」


 意外と真面目な先輩だが、作中では後輩のデッキを片っ端から奪っていったのを問題視した主人公が自分のデッキと退学をかけてみんなのデッキを取り返す流れだった。


「待ちなよ、君達」


 不意に乱入してきたもう一つの声。

 ……なんか聞き覚えあるな?


「そういう内容なら中立の審判がいた方がいい。僕が間に立つけどいいかな?」


「あんたは……へっ、あんたほどの人が審判してくれるなら願ってもねえ!」


 あぁ……恐れていた事態の一つが実現してしまった。

 彼はメインキャラ、初代主人公だ。

 二代目主人公にカードをプレゼントする役割、卒業後にラストバトルを務める最強のデュエリストだ。

 バトルジャンキー気質があり、可愛らしいカードと荒々しいカードとえげつないコンボを繰り出す。

 そんなバトルキングと呼ばれた人物、あえて名前の言及は避けておこう。


「ただその前にだ、彼女は今日入学みたいだしこのくらいは許されるだろう」


 許されませんやめてくださいそれは二代目主人公にしてあげるプレイングです。


「ラッキーカードだ、このカードが君の所に行きたがっている」


 手渡されたのは……ちらりと見てほっとする。

 二代目主人公に渡したカードとは違う、一枚の魔法カード。

 アニメと実際のカードゲームでは効果が違うことがままあるが、これは原作そのままに作られたはいいが圧倒的なパワーのせいで1カ月で禁止カード指定された代物……。


「いいんですか?」


「あぁ、デッキを賭けるというのは好きじゃないが……君なら大丈夫だろうと思ってね」


「そうですか、なら早々に決着をつけて入学式に間に合うようにします」


「では、バトル開始!」


「「バトル!」」


 お約束と言うか、バトルを始める時にはお互いにバトルと叫ぶのが基本だ。


「俺の先行だ! ドロー!」


 あ、そうかこの時代はまだ先行ドローできたんだ。

 前世じゃ廃止されて先行1ターン目のドローはできないルールになってたからな。

 この辺も調べておこう。

 あとこっちだと先行は言ったもん勝ちなんだよな……じゃんけんしろよ、ダイスでもコイントスでもいいけど。


「まずは小手調べだ! 【獰猛なダブルレックス】を攻撃表示でサモン! カードを伏せてターンエンドだ!」


 獰猛なダブルレックス、下級モンスターでありながらデメリットも無く2000の攻撃力と2の打点を持つモンスター。

 この時代ならではのパワーカードだが、効果を持たないモンスターでもある。

 いわゆるバニラと呼ばれる類だ。

 ちなみに守備力は0。

 そんな事はどうでもいい、モンスターが本当に実体化した事に興奮を隠せない!


 これに対する私の手札だと……ふぅむ、初期の5枚に加えて今引いた1枚。


「ドロー、手札から魔法カード【飢饉】を発動。デッキから10枚カードを墓地に送る事でフィールドの互いのフィールドのモンスターを全て破壊する」


「チッ、だがいいのかぁ? そんなにデッキを削っちまってよぉ!」


 いちいち言動がチンピラだなぁ。

 ちなみに【飢饉】は禁止カードに指定される予定のカードだ。

 普通に考えた奴馬鹿じゃねえのと言われてたパワーカードだからね。

 デッキを削るって一見するとデメリットにしか見えないし、10枚ってスタンダードなデッキだと四分の一は捨てる事になるから。

 だが逆に言えば見えている札が10枚も増えるともいえる。


「手札から魔法カード【降臨】を発動、墓地のモンスターを特殊サモンする。選択するのは【エレメント・バニッシャー】」


 特殊サモン、ターン内どころか相手ターンでも罠や魔法、モンスター効果でフィールドにモンスターを呼び出す事ができる。

 回数制限は基本的にないが、種族制限などがつくことがあり「このカードを特殊サモンした場合〇〇族以外サモンはできない」とかあるんだよな。

 やろうと思えば踏み倒せるけど。

 ちなみに通常サモンは1ターン1回である。

 例外があるけど、それを言い出したらきりがないのがカードゲームだ。


「なっ、1ターン目で上級モンスターだと!?」


 上級モンスター、下級モンスターを1体墓地に送らなければ召喚できない強力なモンスターだ。


「【エレメント・バニッシャー】の効果発動、手札を一枚捨ててフィールドのカードを破壊する。選択するのは先輩の伏せカード」


「くそ……!」


 破壊される瞬間にちらりと見えたがこちらの攻撃を跳ね返して打点分のダメージを与えるカードだった。

 まぁ余裕あるからそういうもんだろうと思ってたけどさ。


「まだ通常サモンが残っているのをお忘れなく。手札から【エレメント・キッズ】を攻撃表示でサモン。そして効果発動、手札を一枚捨てる事で墓地の魔法罠カードを手札に加える」


 はい、これで魔法カードの使いまわしができるので凶悪なコンボができるので禁止カード入りします。


「【降臨】発動、墓地の【エレメント・ジャッジ】を特殊サモン。そして効果発動、手札を1枚捨てて相手に打点分のダメージを与える。打点3でバーン」


 バーン、効果音ではなく焼くという意味合いで使われる用語だ。

 攻撃ではなくカード効果でダメージを与えるのだが、モンスターだけでなく魔法罠だけでダメージを与えることもある。


「ぐぁっ!」


 おぉ、衝撃も本当にあるらしい。

 私はまだダメージ受けてないからわからんけど。


「バトル、総攻撃。打点はバニッシャーが3、キッズが2、ジャッジが3の合計8点」


「うわああああああああああああ!」


 ワンターンキル完了……やっぱり伸びがいまいちだなぁ。

 こっちの環境トップならこのくらいなんだろうけど、私の本来のデッキならモンスター1体で打点30は出せたんだがなぁ……。


「新入生の勝利! さて、君は彼のデッキを受け取る事ができる」


「いらないので関わらないでくれればそれでいいです」


「だそうだ、君もこんな初心者狙いみたいなことをしていると全てを失うかもしれない。まぁ彼女は初心者じゃなかったみたいだが」


「……っす」


「だがいいバトルだった。君の戦法にミスはなく、それを上から叩き潰した彼女のスキルが一枚上手だっただけだ。なんとも豪快な戦い方だけどね」


 まぁそりゃ豪快にもなるわ。

 墓地は第二の手札、と言うのが全カードゲーム共通の認識だから。

 デッキや除外ゾーンよりアクセスが容易だからね。

 たまに墓地を封じて除外ゾーンとフィールドと手札を反復横跳びするテーマもあるけどさ。


「じゃ、私はこれで失礼します。カードありがとうございました」


 そう頭を下げて、マップを見ながらアカデミアへの道を進んだ。

 出来るだけ不自然にならない範囲の速足で。

 メインキャラとか一番関わりたくないですしおすし。

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